音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

バックチェリー『Frontside』

今日はBuckcherry『Frontside』について。


アルバム「Time Bomb」収録。

この曲は、アメリカのロックバンドBuckcherryが2001年に発表したハードロックです。


超がつくほどノリ重視の曲。

基盤はロックンロールだと思いますが、鋭い疾走感、そしてパンクのノリが多く含まれたリズムが、聴き手を即トランス状態に至らしめます。

ロックでパンキッシュでメタリック、というユニークなパワフルさを楽しめる構造です。

さりげにイントロのドラムがかっこいいところがポイント。

デヴォン・グレン(Ds)のドラミングがいかにBuckcherryにおいて重要な位置を占めていたか、という事を再認識させてくれるプレイだと思います。


そして極めつけはジョシュ・トッド(Vo)の歌声。

歌メロ自体は全体的に大きな変化があるパートはなくシンプルなのですが、声にみずみずしさがあり、シャウトがかった発声と反比例するような色気があります。

メロディラインがストレートなぶん、聴き手の意識が自然にジョシュの声質に向きやすくなり、その声の深みが味わえるような構造。

意図的にそう作ったのかナチュラルにそうなったのかは解りませんが、演奏陣の勢いだけじゃなく、ボーカルのポテンシャルも楽しめる楽曲ではないでしょうか。


荒っぽさの中にある、独特な大人っぽさ。
一見「少年的」な要素がある曲ですが、その少年らしさもあくまでこの大人らしさを引き立てる為にある、という趣旨の作品なのかもしれませんね。


ラフなところとシメるところの対比が魅力的な曲を聴いてみてください。



それでは。







T-BOLAN『Bye For Now』

今日はT-BOLAN『Bye For Now』について。

この曲は日本のロックバンドT-BOLANが1992年にリリースしたポップバラードです。


裕木奈江内藤剛志芳本美代子が出演している事でも知られるドラマ「ウーマンドリーム」の主題歌だった事でも有名。

記念すべきT-BOLAN初の、シングルでは唯一のミリオン達成曲。

作詞・作曲者ともに森友嵐士(Vo)。


前向きな寂しさが描かれた曲。

「素敵な別れさ 出会いの未来があるから」
「夢かなう日まで 今はここでそう Bye For Now」

元々は、森友嵐士が自身の仕事を支えてくれていたあるスタッフに、個人的に送る為に作られた作品との事です。

そのスタッフはライブの打ち上げの席で森友嵐士

「叶えたい夢の為に、この仕事を辞めて海外に行きたいんです。」

と相談したそう。

その告白に感じるものがあった森友嵐士は、そのスタッフへの応援の気持ちをこめた作品を作りたい、と書き上げられたのが、この力強い歌詞。

一般的に「別れ」というフレーズが入る歌は悲しい作品である事が多い印象。

その「別れ」を、あえて前を向く為のスタート、新たな人生の始まりの動機として扱っている所が良い。

通常マイナスに使われる事が多い言葉を、熱く優しい激励のメッセージに使う所が、男の中の男ボーカル「森友嵐士」的ですよね。

バラードを歌っていてもこの人の根底は「ロック」なんだな、という事を体現している曲だと思います。


楽曲的にも、入りはアグレッシブに動き回るシンセサイザーの音から急速に一転、静寂の演奏に様変わりする、というウィットに富んだモノ。

その流れ自体が新たな挑戦に必要な、激しい情熱と静かな決意の両方を表現したようで美しい。


歌詞、楽曲展開、そして森友嵐士自身のハスキーながら色気のある歌声。

その全てが、ジャストフィットした内容の作品です。


切ない明るさが詰め込まれた曲を聴いてみてください。



それでは。






ドリーム・シアター『Surrounded』

今日はDream Theater『Surrounded』について。


アルバム「Images & Words」収録。

この曲は、アメリカのプログレッシブメタルバンドDream Theaterが1992年に発表したロックバラードです。


素朴なのに神秘性に溢れた曲。

ポップなのですが平凡では無く、変化的なのですがクドくはない、類稀な調和を保つ作品です。

まず夜が開けるような、ふんわりとしたイントロが始めります。

聴いているとまるで海の向こう、水平線から朝陽が顔を覗かせるイメージが頭に浮かびます。

ジェイムズ・ラブリエ(Vo)の歌声も、超艶やかなウィスパーボイス。

そしてそこから、一気にキャッチーなポップ展開に。

若干ラップ調なところが、彼らの作品としては珍しい。

軽快であっても、どことなく高級感があるのが不思議です。


そしてそこからが本作のメインパート。

ラブリエの突き抜けるようなハイトーンボーカルによる、麗らか過ぎる歌メロ。

Aメロまではどちらかと言うとリズムを重視した流れだったのに対し、ここはメロディ重視に様変わりした印象です。

元々本作が収録されているアルバム「Images & Words」自体、Dream Theaterのアルバムの中でもメロディに重きを置いた作品。

その中でもこの曲は、彼らの代表作「Another Day 」に匹敵するメロディアスさだと個人的に思います。


ちなみに終わり方も粋で、再びイントロと同じしっとりした展開に戻っていきます。

普通こういう、いわゆる「後半に進むにつれてキーが高くなるバラード」は、盛り上がったらその余韻を残したまま終わりを迎えるのが通例ですが、本作はあえてまた静寂に戻る。

Dream Theaterの作品の中では比較的、一般のポップス寄りの曲ですが、それにさえ「ひねり」を加えるところが彼ららしい。

Dream Theaterっぽくないようで、やはりDream Theaterっぽい」という感覚を楽しめる楽曲ではないでしょうか。

日の昇降のような起伏と壮大さを感じられる曲を聴いてみてください。



それでは。





ヨーロッパ『Carrie』

今日はEurope『Carrie』について。


アルバム「The Final Countdown」収録。

この曲は、スウェーデンのハードロックバンドEuropeが1986年に発表したロックバラードです。


明光のように希望に溢れたメロディのバラード。

まるで霧が晴れるように、明るくも胸に染み込んでいく旋律が、リスナーの心を穏やかに包んでいきます。


特に好きなのはミック・ミカエリ (Key)のキーボード。

雪のように透明感のある音色は、北欧の雪原の風景そのものを映し出しているかのよう。

それていて若干L.A.ロックを連想させる明るい温かさもあり、それがアメリカ人にもウケたのか、全米チャートで3位を獲得した事もあります。

当時アメリカで、本作のタイトルの名前を子供につける親も多かったとか。

しっとり感もあり、じんわりとした優しさもある、幅広いリスナーにフィットする音色です。


また際立つのは、ジョーイ・テンペスト (Vo)の声。

ハスキーなのですが独特の甘さもあり、この手のロックバラードと相性抜群の歌声です。

叫ぶパートでもうるささが無く、むしろ一種の脆さというか儚さを感じさせます。

時折覗く、嘆くように歌い上げるパートは感涙もの。

というか前作までと比べて、そもそも歌唱力自体も向上しているように聴こえます。

ボイストレーニングメニューを変えたのか、積み重ねた人生経験が歌に活きたのかは解りませんが、それまでとは一味違うジョーイの声が堪能出来る作品でもあると思います。


ちなみに、これほど美しい作品なのにジョン・ノーラム(Gt)はこの曲があまり好きでは無いとの事。笑

「この曲は眠くなる」とまで語り、先のEurope再結成ライブですら「絶対やらない!」と演奏に参加しないほどの徹底した嫌いぶり。笑

まぁ、この後EuropeがHR/HMからポップス路線に舵をきっていった事を疑問に思い、一度はバンドを脱退してしまったほど「HR/HMミュージシャンである事」にプライドを持っている彼ですから、ある意味致し方ないのかもしれません。

しかし噂によれば「ギターソロ部分は誇りに思っている」と語った事もあるなと、この曲を全てを拒絶しているわけではない模様。

ライブでは現在は、ジョーイが1人でアコースティックで演奏していますが、いつかは彼が生でプレイする『Carrie』も聴いてみたいですね。笑


ポップなメロディと透き通るサウンド、歌メロに重きを置いた構成。

HR/HMバンドのバラードに取っ付きにくいイメージを持っている人にこそ聴いてほしい曲です。



それでは。





WANDS『世界が終るまでは…』

今日はWANDS世界が終るまでは…』について。

この曲は、日本のロックバンドWANDSが1994年にリリースしたポップバラードです。

ミリオン達成曲。

また、草尾毅平松晶子梁田清之緑川光が声優として出演している事でも知られるアニメ「SLAM DUNK」のEDテーマだった事でも有名。


キャッチーさと重さの落差に味がある曲。

歌メロは日本の伝統的メロディ、といったイメージ。

ですが、それをのせるビートがヘヴィロック並に重量感のあるサウンドで、まるで親しみやすさとシリアスさが共存した「SLAM DUNK」を体現したような構成になっています。

世間的には明るいサビのフレーズが有名ですが、さりげにAメロのしっとりしたメロディも個人的に好き。

若干儚げなメロディなのですが、それが上杉昇(Vo)の「男の中の男」、な太い声で歌われる事で哀愁を増しています。

以前どこかの歌手が「高い声でばかり歌っていたら、歌が上手く聴こえるのは当たり前」と言っていましたが、これだけ低い声で歌っていても歌唱力が伝わってくるところが、彼が一流のロックボーカリストである事を体現しているかのようです。


メロディには親近感があるんですけど、それと相反するように、歌詞には鋭利さがあるんですよね。

「誰もが望みながら 永遠を信じない」
「なのに きっと 明日を夢見てる」

愛する人といつまでも両想いでいられるなんて、大抵の人は信じない。それなのに同時に「けれど、まぁ今日や明日は大丈夫に決まっている」とも思っている。

たった2行で、世間の大多数の人が抱える悲観的な部分と楽天的な部分、その2つを的確に表したようなフレーズです。

これまでのWANDSの楽曲は

「季節はまた 巡りゆくけれど 変わらない 二人だけは」で有名な『もっと強く抱きしめたなら』。

「愛を語るより笑顔を見せあおう 何もかもいらない 君がいるだけで」の『愛を語るより口づけをかわそう』など、ややポジティブで熱い愛を歌う事が多かったの印象ですが、本作は少しだけダーク。

その暗めの歌詞を、あえて前述のキャッチーなメロディにのせる事で、やわらかさと冷たさが混ざる不思議な狂気感が演出されます。

元々WANDS自体が、事務所から「B'zの弟分のバンドを作ろう」というコンセプトで生み出されたバンドなだけって、ハードなロックと、ソフトポップスの融合的な要素があるグループ。

「逆に近い2つの要素」をあえて組み合わるのが彼らの個性なのかもしれませんね。


ポップさの中にピリッとスパイスの効いたバラードを聴いてみてください。



それでは。





ロスト・ホライズン『Sworn In The Metal Wind』

今日はLost Horizon『Sworn In The Metal Wind』について。


アルバム「Awakening the World」収録。

この曲は、スウェーデンのパワーメタルバンドLost Horizonが2001年に発表したメロディックスピードメタルです。


まるで映画を早送りで視ているような気分になる曲。

濃密に組み立てられた音が、その密度を保ったまま強烈なスピード感でリスナーの耳に迫ってきます。


特に目立つのは、やはりダニエル・ハイメン(Vo)の多様過ぎる歌声。

hihiAのヘッドボイスをあっさり出してしまう事も驚きなのですが、中音域も非常に滑らかなの発声も研ぎ澄まされています。

音域の広さもさることながら、ハイトーン部分では鋭利なシャウト声、中音域部分ではオペラチックなベルカント声で歌うなど、場面によって声色が
違うのが面白い。

個人的には基本は、ロニー・ジェイムス・ディオのような、王道の技術を極限まで追及したような高音から低音まで太くてナチュラルな声で歌うボーカリストが好み。

しかしこういう、高音ではシャウト、低~中音ではベルカントという2面性を持つボーカルも、このレベルまでスキルを極めているなら音楽ファンとして尊敬します。

間違いなくパワーメタル界の最高峰の歌唱技術の持ち主だと思います。


楽曲の、緻密さと勢いを兼ね備えた構造も素晴らしい。

ギターリフがまるでスラッシュメタル並の疾走感を持っています。

元々メロディックスピードメタルというジャンル自体「スラッシュメタルのリズム、スピードにメロディックな旋律を乗せた音楽」を指すことが多いですが、本作はその典型。

激しさと品格が共存した構造はまさに「メロスピ/パワメタ界のマノウォー」。


そしてその激速リフにすら綺麗に合わせるリズム隊のプレイも渋い。

速さもあるのですがそれだけでは無く、音で跳ねるようなユニークなパーカッシブさでリズムに彩りを添えてくれています。

この手のメロディ重視のメタルは、得てしてメロディには気を使うのにリズムは大雑把、みたいな曲もありません。

しかしLost Horizonのこの曲は、旋律からビートまで細部まで神経を張り巡らせて構成されている、彼らの作品に対する真摯さのようなものが感じられます。

およそセンスだけでは不可能な、メンバーの音楽へのストイックさから生み出された曲なのだ、という事が実感できます。

メロディ、演奏、楽曲構成どの角度から聴いても聴き手にエキサイトを与えてくれる作品です。


「隙の無さ」で楽しませてくれる楽曲を聴いてみてください。



それでは。






チルドレン・オブ・ボドム『Hatebreeder』

今日はChildren of Bodom『Hatebreeder』について。


アルバム「Hatebreeder」収録。

この曲は、フィンランドデスメタルバンドChildren of Bodomが1999年に発表したメロディックデスメタルです。


北欧感が非常に強いデスメタル

メロデスなので、メロディアスな事自体は普通なのですが、中でもここまで北ヨーロッパ感が前面に出た、豪華絢爛なメタルは珍しいと思います。


本作の心臓部は、なんと言ってもラストのソロパート。

アレキシ・ライホ(Vo.Gt)とヤンネ・ウィルマン(Key) の、間違いなくメロデス界の歴史に名を残す大ソロバトルです。

速いし美麗だし、何より気高い。

どちらも弾きまくりでぐいぐいと主張しまくりなのですが、それでいてお互いに決して邪魔はしない、あくまでグルーヴを優先しているのが最高。

ただでさえ隅々まで手の込んだ完成度が高い曲なのに、ラストにこんなパートを用意しているところが粋です。


もちろん、それ以外の部分もかっこいい。

一般にデスメタルというとボーカルはリズムに徹し、メロディが無いのが大多数。
ですが、本作だはサビで少しだけ「歌メロ」が導入されています。

「A~Bメロまでデス声で、サビではキャッチーなメロディ」という構造自体は日本のDir en greyなどが有名ですが、アレキシのそれはディルほどダークでなくて、もう少し「熱さ」重視な印象。

その際、さりげなくキーが下がるところが品があって個人的に好みです。

他にもドライブ感のあるGリフ、ヤスカ・ラーチカイネン(Ds) が一瞬だけ披露するブラストビートなど、デスメタルのデパートとまで思える程、聴き所が満載。

数回リピートしただけでは決して聴き手を飽きさせない、高密度さが売りの曲ではないでしょうか。

隅々まで計算し尽くされた楽曲構造は、世界最高の教育水準の呼び声も高い「フィンランド」出身のバンドであるところを感じさせますよね。


品のある暴力性を放つデスメタルを聴いてみてください。



それでは。