オジー・オズボーン『Bark at the Moon』
今日はOzzy Osbourne『Bark at the Moon』について。
アルバム「Bark at the Moon」収録。
この曲は、イングランドのシンガー・ソングライターOzzy Osbourneが1983年に発表した王道ヘヴィーメタルです。
邦題は「月に吠える」。
ジェイク・E・リー(Gt) のギターの個性が味わえる曲。
「ジェイク・フェイク」とも呼ばれる彼のギターテクニックの一端を垣間見ることができます。
まずリフが面白い。
疾走感のあるルート刻み部分もさる事ながら、超がつく程ストレッチしたフィンガリングで、トリッキーなコード・ワークを披露してくれています。
人差し指が4弦5フレットで小指が2弦11フレットなど、もはや見てるこっちの指が痛くなりそうな妙技。笑
このフィンガリングについてはネット上でも「もっと簡単な押さえ方もあるのに、なんでわざわざこんな疲れる運指で弾いてるんだ?」などの声があります。
が、理由はどうやらこの運指の方が、より曲にマッチしたサウンドが出せるからのよう。
「神は細部に宿る」という言葉もあるように、常人には気付くのも難しい次元のこだわりが、ジェイクの神がかったプレイを生み出しているのでしょう。
実際プロ、アマ問わず世界中にギタリストがこのリフをコピーしていますが、この奏法を再現しているギタリストはかなり少ないんですよね。
ジェイクがロックギタリスト界でも、いかに独特なギタープレイスタイルの持ち主かが解る作品です。
もちろんHR/HM曲らしくソロも見事。
6連符速弾きパートもかっこいいですが、アクセントのピッキング・ハーモニクスも光っています。
スピードの中にも、繊細な小技をさりげなく詰める事が出来るのところが粋。
ところが、とても存在感のあるソロなのに、当初ジェイクはあまり気に入っていなかった模様。笑
実は元々ジェイクが自ら作ったオリジナルのソロがあったようなのですが、オジーからボツを出されてしまい、最終的にこのソロになったとの事。
ジェイク本人は「まるで中身の無いジャム・セッションみたいだよ」とまでこき下ろしていますが、ファンからは人気のソロで、本作が長年語りつがれている要因のひとつにもなっています。
オジーのセンスも、間違ってはいなかったのではないでしょうか。
これらの高次元のプレイが、収録アルバムをプロデュースしたマックス・ノーマンの生み出す高品質なサウンドで表現された時、孤高の美しさを放つ極上のメタル曲が体現されます。
マックス・ノーマンと言えば、日本のメタル界の代表格ラウドネスをプロデュースした事でも知られているプロデューサーですが、こういうヘヴィーなのにクッキリした音色を作るのが、彼は本当に上手い。
ジェイク本人のサウンドチューニングの巧みさと相まって、約40年前の曲とは思えない立体感のある音を楽しむ事ができます。
サビの歌詞の「Bark At The Moon」が、オジー・オズボーン(Vo)の滑舌の問題で「ばっかだもーん」に聞こえてしまう事がリスナーからネタにされる事もある曲。笑
ですが、そんな些事もアッサリとかき消す程の質量と高級感がこの曲には詰まっています。
本格派でシャープで、ちょっとだけコミカルなところが売りの作品です。
今聴いても古くない、デリケートな工夫が沢山詰まった曲を聴いてみてください。
それでは。