Sex Machineguns『American Z』
今日はSex Machineguns『American Z』を聴いた感想を。
アルバム「Made in Japan」収録。
この曲は、日本のHR/HMバンドSex Machinegunsが1999年に発表したスピードメタルです。
温かい友情の曲。
曲調的にはとても純粋なジャパニーズメタルです。
リフの時点でぶっ飛んでます。
ただでさえ速弾きなのに、そのままハモるという妙技を披露。
重なりあい、分厚くなったギターの音が高速で迫り、聴き手を圧倒します。
ソロ部分はテクニカルなだけじゃなくドラマティック。
ソロの入りはドリル音のような速弾きですが、後半に入ると急にスローになり、メロディ重視の美しいプレイに。
ギターのリズムの落差の使い分けは、彼らの得意技ですよね。
ドラムも凄い。
大部分でツーバス踏みっぱなしです。
スネアの高速の連打も轟音でかっこいい。
ただ叩きまくってるだけじゃなく、スロー部分ではプログレ的な変化のあるプレイを聴かせてくれるのが好印象。
歌メロも叙情的で、Anchang(Vo)の悲しげに歌い上げる歌唱が切ない。
いつものコメディ的なシャウトは封印して、ひたすらストイックな歌い方です。
ラストのhiGの高音シャウトは、まるで慟哭のよう。
「Anchangは真面目な歌い方しても絵になる」という事を証明した曲かもしれません。笑
実はメンバーが、脱退したドラマーSPEED STAR SYPAN JOE(スピードスター・サイパン・ジョー)に捧げる為に生み出された曲。
タイトルの「American Z」も意味は「アメリカザリガニ」で、赤い髪がトレードマークのサイパンが両手にスティックを構えた姿がアメリカザリガニに似ている、という理由からつけられたようです。
(ちなみに予定のタイトルは「ザリガニのうた」。)
「突き刺してくれ、後ろから激しく強く。」
の歌詞は、彼の熱いドラムプレイを指して綴られたものでしょうか。
ライブにおいてのAnchangのMC
「オレにとって彼は赤い稲妻のようでした・・・っ」(歌詞にも「赤い稲妻」というフレーズがあります。)
旅立つ戦友に向けられた、激しいのに寂しげなメタルを聴いてみてください。
それでは。
アクセプト『Fast as a Shark』
今日はAccept『Fast as a Shark』について。
アルバム「Restless and Wild」収録。
この曲は、ドイツのHR/HMバンドAcceptが1982年に発表したパワーメタルです。
イタリアのゾンビ映画「デモンズ」の挿入歌としても知られています。
ジャーマンメタルの古典とも呼べる曲。
Dan Dragoは「About.com」において本作を「最初に録音されたスピードメタルの曲」と呼称。
さらには「絶対的なメタル・クラシック」とまで称賛しています。
イントロでは何故か牧歌的なドイツ民謡が。笑
短時間だけ非常に「ほのぼの」とした空気になります。
しかしそれは彼らの仕掛けたフェイク。
それが終わるとウド・ダークシュナイダー(Vo)のスクリームが発射。
大音量で聴くと、聴き手の頭蓋骨にキーンと響きそうな程の金切声です。
そこからは北欧HR/HM好きなら誰もがハマりそうな展開。
Acceptの曲としてはかなりハイスパートに疾走。
ステファン・カウフマン(Ds)の刻むリズムの速さは、Accept全作品の中でもトップレベルにスピーディです。
音自体もヘヴィな為、迫力は倍々式に増えます。
タイトルの「鮫」に相応しい切迫感ではないでしょうか。
サビメロは勇壮。
この部分はバラード曲のメロディのように優雅です。
いわゆる「聴いてると合唱したくなる」タイプの歌メロだと思います。
この激しい演奏の中にこういうメロディを入れるというアイディアを3~40年も前に思いついていた、というのは凄まじい。
クライマックスはウルフ・ホフマン(Gt)ハーマン・フランク(Gt)によるソロ。
鮮やかツインギターによるソロで、リスナーを一瞬で恍惚の世界に連れていってくれます。
サビでのコーラスワークの時もそうですが、このバンドは同時に流れる複数のメロディを組み合わせるのが本当に上手いですよね。
つい先程まで豪快で荒々しい演奏をしていたのに、急激にこの美メロに突入する演出も良いです。
よく聴くと、ジャーマンメタル界のカリスマHelloweenに影響を与えたと思われるプレイも。
実際この曲は前述のHelloween、Rageを含む幾多のバンドにカヴァーされていてAcceptが後人のジャーマン、及びスピードメタル界に与えた影響がどれだけ大きいか、ということが実感できる曲だと思います。
デリケートな構成なのに男らしいHR/HMを聴いてみてください。
それでは。
いきものがかり『ありがとう』
今日はいきものがかり『ありがとう』について。
この曲は、日本の音楽グループいきものがかりが2010年にリリースしたポップバラードです。
松下奈緒、向井理、野際陽子が出演したことでも知られるドラマ小説『ゲゲゲの女房』の主題歌としても有名。
2013年度の高校の音楽の教科書に合唱曲として掲載されています。
売り上げ枚数は彼ら自身の自己最高記録を更新。
また、サウンドスキャンジャパンやプラネット、ビルボードジャパンでも1位。
さらには、第52回日本レコード大賞 優秀作品賞まで受賞しています。
作詞・曲共に水野良樹 (Gt,Cho)。
柔らかでノスタルジックな曲。
全体的に雰囲気に透明感があり、余分な音が無く良い意味の聴きやすさがあります。
アレンジャーに「真昼の月」、「なくもんか」を手掛けた本間昭光を迎えたことでも話題になりましたが、彼の生み出す素朴なようで大人っぽいメロディは、いきものがかりの世界観に綺麗にハマッたようですね。
吉岡聖恵(Vo)の歌唱技術もそれまでからかなり上達していて、その伸びやかな歌声は濃密なバラードによく似合う声になっていると思います。
ドラマの内容に合わせたのか、メロディにほのかに昭和歌謡感が漂うところがポイント。
歌詞はタイトルの通り純粋な「お礼」のメッセージ。
「ありがとうって言葉を今 あなたに伝えるから」
「繋がれた右手は 誰よりも優しく ほら、この声を受け止めてる」
ドラマのタイアッブ曲なので、歌詞もおそらくされに合わせたものだと思いますが、それになぞらえるなら「夫婦愛」「家族愛」の詞ですよね。
日頃お世話にはなってるけれど、何となくタイミングを逃して、「いつも自分を支えてくれてありがとう」という言葉を言いたくても言えずにいる、という人は沢山いると思います。
形の上では夫婦(家族)へのメッセージですが、聴き手はそれにこだわらず、職場の仕事仲間でも学校の先輩後輩でも、自分なりの「ありがとう」を言いたい相手を想定して聴くのも良いのではないでしょうか。
それぞれの「ありがとう」の気持ちを思い出しながら聴いてみてください。
それでは。
GLAY『Winter,again』
今日はGLAY『Winter,again』について。
この曲は、日本のロックバンドGLAYが1999年にリリースしたロックバラードです。
ミリオン達成曲。
また、第41回日本レコード大賞・大賞
第32回日本有線大賞・大賞
など彼らの曲の中でも、世間から非常に高い評価を受けています。
GLAYのシングル史上最大のセールスを記録した曲。(165万枚)
曲調的には、柔らかなボップバラードと激しいハードロックの中間ぐらいにあるのではないでしょうか。
イントロではあの伝説的映画「タイタニック」主題歌「MY HEART WILL GO ON」(セリーヌ・ディオン)をモデルにしたフレーズが導入されています。
ちなみにこれはTAKUROが意図して作ったもよう。
メロディ、特に歌メロは「さすがGLAY」というくらいに美メロ。
激しいバックの演奏にTERU(Vo)の雪のように透き通るハイトーンボイスが絡み、鮮やかなコントラストを演出しています。
サビが美しいのはいつものことですが、この曲に関してはサビに行くまでのA~Bメロの流れるような進行も良いですね。
ロックテイストの中にも哀愁を感じるメロディですが、歌詞も少し悲しげ。
「いつか二人で行きたいね 雪が積もる頃に」
「生まれた街のあの白さを あなたにも見せたい」
作詞者はTAKURO(Gt)ですが、実はTAKUROの実体験から生み出された詞。
TAKUROの著書「胸懐」によれば、
当時、交際していた彼女に自身の故郷である北海道の景色を見せてあげたい。
けれど、実はその恋人は重度の喘息を患っている為、空気の冷たい北海道になどとても連れていけない。
けれど、いつかはあの白い雪の景色を見せてあげたいな。
…という願いがあり、その気持ちをそのまま込めたのがこの歌詞とのこと。
ややアップテンボな曲の割に陽気な曲には聴こえないのはそういう理由だったのかもしれませんね。
個人的に、こういう力強いサウンドにあえて切ない詞をのせる、という表現はとても好きです。
冬を舞台にした曲にも関わらず、温かみを感じることができる曲を聴いてみてください。
それでは。
モトリー・クルー『Kickstart My Heart』
今日はMotley Crue『Kickstart My Heart』について。
アルバム「Dr.Feelgood」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドMotley Crueが1989年に発表したハードロックです。
LAメタルのかっこ良いところだけを詰め込んだような曲。
出だしのアームアップから続くミック・マーズ(Gt)のゴリゴリのギターリフは、聴き手を一瞬で熱中の渦にさらってくれます。
音圧も凄いですがリズムが魅力的。
こういうノリノリなリフは、一般のバンドがやるとどうしても能天気な雰囲気になりがち。
ですがミックの場合は、音色の太さと随所に散りばめられた工夫のおかげでむしろ威厳さえ漂うような佇まいになっています。
ギターソロ部分でトーキングモジュレーターを使用しているところもニクいですよね。
ニッキー・シックス(Ba)はのベースは一見するとシンプルなプレイ。
ですが実はこれはダウンピッキングによるもの。
それでこの安定感、粒立ちは驚嘆。
アマチュアのベーシストが同じ演奏をしたら、指と手首がつってしまうのではないでしょうか。笑
トミー・リー(Ds)のドラムもサウンド、とくにスネアの音が熱いです。
一般的にドラムは他パートを支えたり、引き立たせる為に演奏するものですが、トミーの場合は聴き手に「自分が1番目立ちたいんじゃないか?」と思わせる程、攻めこんだ音です。笑
そしてヴィンス・ニール (Vo)。
元々パワフルなボーカルパフォーマンスで有名ですがこの曲での超大声、高音域での歌唱は見事。
普段HR/HMを聴かない人がこの歌声を聴くと「こんな高い声、今まで聴いた事がない」と驚く人もいるもよう。
アクセル・ローズとケンカしたかと思えば、募金など慈善活動を行ったりと、真面目なのかわがままなのかよく解らないところがある彼。
ですが歌声を聴けば、ヴィンスの歌にかける情熱は本物だということが伝わってくると思います。
ファンの間では「アメリカのHighway Star」との呼び声もある曲ですが、それに相応しいロックです。
カラッとした爽快感のあるロックを聴いてみてください。
それでは。
ポルノグラフィティ『メリッサ』
今日はポルノグラフィティ『メリッサ』を聴いた感想を。
この曲は日本のロックバンド、ポルノグラフィティが2003年にリリースしたポップロックです。
朴ろみ、釘宮理恵が声優として出演したことでも知られるアニメ「鋼の錬金術師」のOPテーマとしても有名。
作品自体は実写化され、Hey!Say!JUMPの山田涼介が出演したことでも話題になりました。
オリコンチャートでの登場回数は自己最高となる38週を記録。
それまでの最長記録であった「アゲハ蝶」を抜き、2015年現在シングルでは最長のロングセラーを記録しています。
物悲しくもアグレッシブな曲。
全体的にベースがかなり動いていて、ある意味歌メロ並みに目立っています。
やはりリズム隊の動きがかっこいいと、自然と他パートのかっこ良さも自然と増していきますよね。
それと絡む進藤晴一(gt)のギターも骨太。
どことなく初期のポルノの時のプレイを思わせます。
ソロはポルノの楽曲の中でも切れ味が鋭く、かなりロック色が強いものになっていると思います。
ポルノグラフィティの硬派な部分が楽しめる曲ではないでしょうか。
曲調は攻撃的ですが、歌詞は少し違う世界観。
「羽が欲しいとは言わないさ」
「 せめて宙に舞うメリッサの葉になりたい」
「メリッサ」という言葉には「傷ついてる人を癒す」という意味があるもよう。
実際、作詞担当の晴一は「『鋼の錬金術師』のストーリーを意識し、「自己犠牲」をテーマに詞を書いた」と語っています。
歌詞の内容としては「羽が欲しいなんて大袈裟な願いは言わないけど、せめて誰かを助けられる人になりたい」、という意味になるのでしょうか。
「他人の助けになりたい」という歌詞自体はこの世に山ほどありますが、それを「メリッサ」という言葉を使って表現することは、晴一ならではの感性。
以前ラウドネス二井原実がブログで彼の書く詞を評価していましたが、ポルノグラフィティは岡野昭仁(Vo)の歌唱力と晴一の作詞センスこそが彼らの持ち味、と言えるのではないでしょうか。
スピードナンバーながら優しさが漂う曲を聴いてみてください。
それでは。
レインボー『Stargazer』
今日はRainbow『Stargazer』について。
アルバム「Rising(邦題.虹を翔る覇者)」収録。
この曲は、イングランドのロックバンドRainbowが1976年に発表したハードロックです。
高貴な雰囲気のHR/HM。
ロックに中世ヨーロッパの貴族音楽の要素を加えたような曲です。
イントロからコージー・パウエル(Dr) が大活躍。
凄まじいドラムソロが披露されています。
地鳴りのような音色のショットが矢継ぎ早に繰り出される様は圧巻です。
そしてそのドラムの音圧に張り合うような迫力の声を発しているのが、伝説のメタルボーカリスト、ロニー・ジェイムス・ディオ (Vo)。
非常に厚い歌声。
声量もさることながら、声に込められた熱量、まるで慟哭のような声色が、曲に込められた感情の量を強調してくれています。
ただ小手先の技術があるだけじゃないのが、彼が「伝説」と呼ばれる所以ですよね。
個人にこの曲のメインはリッチー・ブラックモア (Gt)の奏でるリフ。
かなりシンプルなのに、何故かかっこいい。
大部分は同じフレーズの繰り返しなのですが、だからこそ一度聴くと頭から離れないようになっています。
それがトニー・カレイ(Key)の哀愁漂うキーボードと絡むと、オーケストラのような荘厳なグルーヴが完成。
ミドルテンポですが、違う意味の疾走感、雄大さがあり「威風堂々」という言葉が似合うロックになっています。
古き良き「様式美メタル」です。
心地よい重量感がある曲を聴いてみてください。
それでは。