中島美嘉『Find the Way』
今日は中島美嘉『Find the Way』について。
この曲は、日本の女性歌手中島美嘉が2003年にリリースしたポップバラードです。
アニメ「機動戦士ガンダムSEED」のEDテーマとしても有名な曲。
歌詞の内容があまりにもアニメの内容と合っているので、てっきりガンダムの製作側が用意したものだと思ったら、なんと中島美嘉本人が、主人公のキラ・ヤマトに向けて綴ったものとのこと。
「君は言った 永い夢をみた とても哀しい夢だったと」
「それでもその姿は 少しも曇らない」
「僕は言った 泣いていいんだと ずっと傍にいてあげるよ」
他人の為に戦い続けるキラ・ヤマトを労る気持ちで書いた詞のようですが、この言葉は、日々様々な葛藤の中で生き続けている現代人、全ての人に響く詞だと思います。
余談ですがインタビューによれば、彼女はガンダムSEEDで1番好きなキャラクターにキラ・ヤマトを挙げています。笑
イントロのストリングスが非常に美しいです。
普通のポップでのストリングスで、ここまで濃淡を使い分けた演奏はなかなか聴けないと思います。
このイントロの時点で、曲に込められた慈愛を感じる事ができるのではないでしょうか。
その直後に入る、ピアノのしとやかな音色も聴き手を惹き付けてくれます。
そして主役はやはり、中島美嘉の歌声。
穏やかで透き通るような歌唱と、地声と裏声の境い目がほぼわからない程滑らかな発声は、彼女の持つ個性だと思います。
ヴィブラートも深すぎず浅すぎず、聴いていると心地よい浮遊感が漂います。
「バラードシンガー」と呼ばれることもある中島美嘉の真骨頂。
他の、どれだけ歌唱力がある人がこの曲を歌っても、彼女以上にこの曲に融け込む歌い方ができるヴォーカリストはいないのではないでしょうか。
心の芯まで届く歌声を感じてみてください。
それでは。
猿岩石『白い雲のように』
今日は猿岩石『白い雲のように』を聴いた感想を。
この曲は、日本のお笑いコンビ猿岩石が1996年にリリースしたポップバラードです。
猿岩石主演映画「一生、遊んで暮らしたい」主題歌。
プロデューサーに秋元康、作詞に藤井フミヤ、作曲に藤井尚之(フミヤの弟)というビッグネームとの共演作としても話題になりました。
ユニークな展開の曲。
ワンコーラスが終わると次に間奏、ラストサビになり、ラストにAメロに戻って終了、という少し珍しい構成になっています。
またメンバーの有吉弘行、森脇和成の歌唱力がお笑い出身の歌手としては思いの外高く、純粋に歌声そのものを楽しむこともできます。
一般的にお笑い芸人が出す曲は、どうしてもコミックソングのようなイメージをもたれがちですが、この曲に関しては、とてもクオリティの高いアート作品と言えるのではないでしょうか。
ただ、有吉にもソロパートはありますが、サビではなぜか聴こえる声のほとんどは森脇の声。
メインメロディを森脇が歌い、そっとコーラスを入れているのが有吉、という感じです。
有吉の声が聴きたくてCDを買った、という人にとっては少々残念だったかもしれません。笑
この曲で好きなのは歌詞。
「風に吹かれて消えてゆくのさ」
「僕らの足跡」
「風に吹かれて歩いてゆくのさ」
「白い雲のように」
ファンの間では、「歌詞がピッタリ、その後芸人としての売り上げが低迷していった猿岩石の将来を言い当てている」と話題になることがあります。笑
けれど実際は、着のみ着のままな「自由」テーマにしたものではないでしょうか。
「僕達が今まで色んな障害を乗り越えてきた、という記憶は、いつか他の人達からは忘れ去られる日が来る。」
「けれど僕達には自由がある。また旅に出て何度でも新しい思い出を作って行こう」
いつかほとんどの他人から忘れられる、というのは人類共通の宿命なのかもしれませんが、だからこそ自分を覚えていてくれる人達の大切さを思い出させてくれる詞だと思います。
おそらく例のユーラシア大陸横断ヒッチハイクを意識した詞だと思いますが、“僕達”と言えば、そういえば有吉は猿岩石解散後、森脇と連絡はとってるんですかね?笑
元気にしてればいいですが。
少しだけ寂しげで、とても温かい曲を是非聴いてみてください。
それでは。
ディオ『Stand up and shout』
今日はDIO『Stand up and shout』について。
アルバム「Hory Diver」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドDIOが1983年に発表したヘヴィメタルです。
直球勝負な正統派HM。
特にリフが、古き良きメタルを思わせます。
ヴィヴィアン・キャンベル(Gt)の速弾きのソロ、ジミー・ベイン(Ba)の硬質な音色のプレイ、充分過ぎる程かっこいいところはあるのですが、個人的に好きなのは.ヴィニー・アピス(Dr)の高速のフィル。
ロールに近い、突風のようなスピードのオカズです。
ただ速いだけじゃなく、その前後の場面ごとに調整された量の手数を入れているのがかっこいいですね。
極めつけは、いまやHR/HMヴォーカリストの伝説となったロニー・ジェイムス・ディオ。
マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラクターであるディオ・ブランドーは、作者の荒木飛呂彦が彼のファンであることから名前を使った、というエピソードでも有名。
持ち前の超ハイパワーの声量、よく伸びる声が存分に発揮されています。
ラストの「Stand up and shout(立ち上がって叫べ)」でのシャウトは見事。
ロングトーンのシャウトで、これだけ深くヴィブラートがかけられるのが凄いです。
2010年に惜しまれながらも、胃癌により67歳で亡くなってしまったのは本当に残念でした。
ちなみに、ロニーのマネージャーであり、妻でもあるウェンディはファンに、「献花を頂く代わりにRonnie James Dio “Stand Up And Shout Cancer Fund"
とネーミングされた癌基金への寄付」を募ったこともあります。
ロニーやその周囲の人達にとっても、特別な位置にある曲なのかもしれませんね。
ストレートな熱さを持つメタルが聴きたい人に勧めたい曲です。
それでは。
嵐『Sakura』
今日は嵐『Sakura』について。
この曲は、日本の男性アイドルグループ嵐が2015年にリリースしたポップロックです。
生田斗真、小栗旬、上野樹里が主演をつとめたことでも知られるドラマ「ウロボロス~この愛こそ、正義」主題歌。
曲調としては、アップテンポの中にも起伏のあるメロディが特徴的。
メンバーのソロパートが無い為「どうして松潤のソロが無いの!」、「櫻井くんのパートだけが聴きたい!」というファンの人もいるかもしれません。笑
しかしその分歌声に全体的に厚みがあり、楽曲が持っている少し陰のある、ヘヴィな世界観に合っていると思います。
歌詞は純粋ですが、それでいてとても悲痛。
「希望を繋いで、君に会いに行く。」
「いつか、僕らが世界を変えてゆくなら、また二人はどこかで生まれてゆくんだ。」
「与えられた今を生きよう。託された未来へ進もう。」
この曲のPVでは、枯れたようにみえる桜の木に、再び花が咲き、また枯れる、を繰り返す「生まれ変わり」ようなストーリーが描かれています。
タイアップのドラマである「ウロボロス」も、そもそもは古代ギリシャで「循環し永遠に続いてゆくもの」、「死と再生」などを表す象徴。
つまりこの詞は、
「今の人生でずっと一緒にはいられないのかもしれないけれど、生まれ変われたなら、もう一度共に生きよう」
というメッセージなのではないでしょうか。
そういうシリアスな詞の為かメンバーの歌い方も、いつもより凛とした声。
この時、嵐がデビューして15年が経過していましたが、始めの頃は爽やかながら幼さの残る声だったのに、この曲ではもっと重みのある、大人な声で歌っていると思います。
きっとメンバーも、仕事でもプライブートでも様々なことを体験し積み重ねてきたのでしょうが、歌声にそれがあらわれている気がします。
そういう意味でも「生まれ変わり」のテーマに相応しいのかもしれませんね。
儚いようで、壮大なスケールの愛の歌を是非聴いてみてください。
それでは。
Dir en Grey『GLASS SKIN』
今日はDir en Grey『GLASS SKIN』を聴いた感想を。
この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2008年にリリースしたロックバラードです。
落ち着いたピアノの前奏から始まる曲。
Aメロからバンド演奏が始まりますが、その際のShinya(dr)のプレイが見事です。
ミドルテンポなぶん、手の動かし方が細やかで、ドラムで歌っているような感じがします。
一音一音も、音が綺麗に抜けていて気持ちいい音色。
ファンの間では、普段から陰で黙々と練習するタイプのドラマーとして知られている彼ですが、その努力の成果が如実にあらわれているプレイではないでしょうか。
歌詞のテーマは、作詞者の京いわく「環境破壊」。
「ブレ始めた視界 ガラスの空、風の色」
「独り流れているメリーゴーランド 手を振る」
「君を見下ろせる一つの観覧車 ただ崩れ行く旋律さえ 甘く綺麗で怖い」
相変わらす比喩の濃い、難しい詞。
「環境破壊」がテーマですので、仮に、流れるメリーゴーランドが自転する「地球」。それを見下ろしている円形の観覧車は「太陽」、だとすれば、ガラスの空とは地球を囲む「オゾン層」でしょうか。(個人的解釈)。
はじめは「自然のことをテーマにするって、京にしては珍しいな」と思いました。
しかし考えてみるとディルの詞は、初期の頃から一貫して「人間のエゴ、またはそれによって生まれる痛み」をテーマにしてきたわけで、そうなるとむしろ今までの彼ららしい詞と言えるかもしれません。
楽曲の特徴としては、珍しく京のシャウト、デスVoがありません。
終始、叙情的なメロディを主体にしている印象です。
たまに「前からDir en Greyに興味あったんだけど、シャウトが好みじゃないんだよなぁ」と言う人もいますが、そういう人はこの曲からディルに入るのがオススメです。
おそらくこの曲で、一般の人達からのディルへの偏見が幾分か薄くなっているのではないでしょうか。
それほど美しいメロディです。
それにしてもラストの京の、hiF#の歌声は驚異的。
日本のメジャーの男性Voの歌声で、このキーは滅多にお目にかかれません。
ただ高いのでは無く、曲に合った声色、発声を使い分けているのが素晴らしいと思います。
王道ようで重さ、Dir en Greyらしさの詰まったバラードを是非聴いてみてください。
それでは。
ハロウィン『Power』
今日はHelloween『Power』について。
この曲は、ドイツのHR/HMバンドHelloweenが1995年にリリースしたヘヴィメタルです。
メタル曲でありながら、非常にしっとりとしたメロディの曲。
アンディ・デリス(Vo)ファンからは、「Voがアンディ時代の屈指の名曲」と称されることもあります。
演奏時間はあまり長く無く、3分程度で終わるので気軽にHelloweenの入門曲として聴いてみても良いかもしれません。
詞は、挑戦者の詞。
「誠実な人間がいるなんて信じられるか」
「振り向いてそいつを正視してみるといい」
「今までずっとここから出る機会を待っていた」
「せっかく手に入れた機会だから逃すものか」
一見、厭世的な詞にも見えますが、それをバネにして先に進もう、という気概のようなものも感じます。
こういう「ひねくれながらも、上を目指す」みたいな歌詞は、ヘヴィメタルミュージシャンの十八番ですよね。
この曲はやはり、哀愁のあるメロディが良いです。
一般的にメタル曲は季節で例えるなら、熱い夏、もしくはひんやりした冬を感じさせるような曲が多いと思うのですが、これは丁度「秋」のような雰囲気があります。
リズムが熱く、メロディが冷えているからかもしれません。
特にアンディ・デリスの歌うヴォーカルライン。
サビ前になるとじわじわキーが上がっていく表現は、聴き手に心地よい緊迫感を与えてくれます。
歌モノ、なメタルではないでしょうか。
アンディといえば、あのリッチー・ブラックモアから「アンディをうちのRainbowに加入させてほしい」と、ヘッドハンティングされたことでも知られるスーパーヴォーカリスト。
その歌声の魅力が遺憾なく発揮されている歌メロだと思います。
タイトルに相応しい、パワー溢れる曲を是非聴いてみてください。
それでは。
SMAP『夜空ノムコウ』
この曲は、日本の男性アイドルグループSMAPが1998年にした曲ポップバラードです。
「SMAP×SMAP」のテーマソングとしても有名で、また彼ら自身の初のミリオンセラーシングル曲でもあります。
それまで「SHAKE」や「ダイナマイト」がヒットした為か、ハイテンションで明るい曲を歌うアイドルグループ、という印象が強かったSMAPのイメージを良い意味でひっくり返した曲。
メロディ、リズム共に切なさが前面に押し出されています。
作詞は当時、本格的に売れ出していた、スガシカオ。
内容は彼自身が、浪人時代に付き合っていた女性と、御茶ノ水の公園で過去や未来など様々な話をしていたことがモデルにしたものだそうですが、
「歩き出すことも いちいちためらうくせに」
「つまらない常識など つぶせると思ってた」
「このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ…」
「夜空の向こうには もう明日が待っている」
初めてこの曲をテレビで聴いた時には「“明日が待っている”だから、明るい歌詞なのかな?」と思っていましたが、フルで読むとどうやら違うようです。
「昔は理想もあったけど、今の自分は何も叶えられていない。この先の人生もただ、こういう日々が続くだけなのだろうか」という、無力感を噛みしめている主人公をテーマにした詞に見えます。
特別に複雑な比喩を使ったわけではなく、むしろストレートな詞ですが、多くの人の心のどこかに空いている穴を、鋭く突いた言葉ですよね。
ですが、だからと言ってこの詞がネガティブなものとも思いません。
どちらかと言うと、「僕もあなたも、満たされない何かを抱えて生きてる。お互い頑張ろうね。」という、「一緒に前を向こう」というポジティブな言葉にも読めるのではないでしょうか。
強い口調で激を飛ばすような応援ではなく、静かに共に側で共に歩いてくれる感覚というか。
こういう詞は、疲れきっている人ほど深く胸に刺さる詞かもしれません。
ちなみにPVにおいては、ファンの一部からは木村拓哉の真剣に歌う表情がかっこいい、と評判が良いそうですが、なんとこの時は、食あたりの真っ最中での撮影だった為、表情が苦しそうなだけだったとのこと。笑
けれど結果的には曲の悲しげな雰囲気にジャストフィットしたわけですから、結果オーライですよね。笑
折れてしまいそうな熱い感情を、忘れない為に聴いてみるのも良い曲ではないでしょうか。
それでは。