リンキン・パーク『In the End』
今日はLinkin Park『In the End』について。
アルバム「Hybrid Theory」収録。
この曲は、アメリカのオルタナティヴ・ロックバンドLinkin Parkが2000年に発表したラップロックです。
ド迫力にアンニュイな曲。
サビでは、バックでへヴィメタル並みに重いギターが鳴るのに、歌メロは哀しく叫ぶような雰囲気で、独特な退廃感を演出しています。
マイク・シノダ(Vo.MC)のラップも、低く呟くような音程で、一般的なアメリカのダンサブルなラップとは違うもの。
バックのひんやりとしたピアノ+ラップの組み合わせはエミネムの生み出した名曲「Lose Yourself」を連想させます。
個人的にこの曲のメインは、リードボーカルのチェスター・ベニントン(Vo)の書いた歌詞。
「君は僕を羽交い絞めにしていらだたせた」
「僕を所有物だと思わせて」
「だがこれだけは忘れるな」
「信頼しきってたから 僕はできる限り必死で頑張ったんだ」
心を開いていた相手から、裏切られ失意のどん底に沈んだ想いが綴られています。
相手は恋人なのが家族なのか、あるいは下積み時代のファンを暗喩表現したものなのかは解りませんが、骨太なサウンドとはあまりに落差のある悲痛なメッセージ。
ゴリゴリのミクスチャーロックにナイーブな歌詞をのせる、というコンセプトはどことなく日本のDir en greyを連想します。
この2バンドは約10年前に、さいたまスーバーアリーナで競演した事でも知られますが、競演相手にディルが選ばれたのは、主催者がこの2バンドに少し似た世界観を感じたからかもしれませんね。
ただ、ネガティブでは終わらないのもこの曲。
「俺は全てを胸へしまいこんだ」
「すごく頑張ったけど全てがバラバラになってしまった」
「でもそれらの重要だったことが
いずれただの「あの時」の記憶になるんだ」
辛い思い出すら、それも含めていずれは「そんなこともあったっけ」というどうでも良い記憶になってしまう。
一見すれば虚無主義的な詞にも見えますが、見方を変えれば、日本で有名な言葉「10年経てば笑い話」という至言に通じる前向きさを感じる事ができます。
チェスターがそういうポジティブなニュアンスで書いたつもりなのかは解りませんが、この曲を聴いて
「自分も未来で達観できる事を信じて、ほんの少しだけまた頑張ってみよう」
と思えるリスナーも多いのではないでしょうか。
「逆もまた真なり」というように、暗さを歌う事で、少しだけ次の明るさの後押しをしてくれる、良い意味でひねくれた曲です。
そこもまたDir en greyっぽいですよね。
恨みつらみ、それとささやかな希望が込められたロックを聴いてみてください。
それでは。