スキマスイッチ『奏』
今日はスキマスイッチ『奏』について。
この曲は日本の音楽ユニット、スキマスイッチが2004年にリリースしたポップバラードです。
志田未来、国仲涼子、北乃きい、長澤まさみが出演した事でも知られるドラマ「卒うた」の主題歌としても有名。
一見ロマンチックなようで、むしろリアリティの濃い詞が魅力的な曲。
「突然ふいに鳴り響 ベルの音 焦る僕 解ける手 離れてく君」
「夢中で呼び止めて 抱き締めたんだ」
実は当初この歌詞は
「男の人は寂しさをがまんして、夢を追いかけて旅立つ彼女を、笑って見送る」
という情景描写にする予定だったもよう。
ただそれだと、歌詞の内容的にオチがつけにくい、という事で、スキマスイッチが周囲の女性の知人達に
「あなたがこの歌詞の女性の立場なら、彼氏にどうしてほしい?」
とインタビューしたところ
「とりあえず、一度ひきとめて欲しい!・・・で愛情確認をしたい」
と、なんと満場一致で言われたそう。
女性はあまり謙虚過ぎる男より、少し位強引な部分がある男の方が好みという事なのでしょうか。笑
そうして実際の女性達への意見聴取が終わった後に、改めて歌詞を書き直したところ、自分達でも驚くほど良い出来の歌詞になったようで、常田真太郎(Key,Cho)は読みながら涙したそうです。
一般にアーティストは「いかに自分の世界に入って生み出すか」に力を入れるイメージですが、例えば、マンガの「バクマン。」の1シーンで、主人公達が
「自分の感性でマンガを描くか、ファンの意見を取り入れながら描くか」
で悩んだ際に、担当から
「自分のセンスと100%合っている意見なら取り入れていい。そういう姿勢はむしろ持つべきだ。」
と諭されるシーンがあるように、自分の想像力だけでは限界があると判断した時は、素直に他人に意見を求めた方が良い結果になる場合もある、という事でしょうか。
そうして生み出されたこの『奏』は、リリースから10年経った今でも、「カラオケで世代間ギャップなく歌われている曲調ランキング」で堂々の1位に。(株式会社ビースリー・ユナイテッド調べ)
主観(自分の感性)と客観(他人の感性)の、高次元での融合から生まれた名曲です。
そもそも歌詞だけじゃなく、音色が彼らの作品の中でも綺麗なんですよね。
大橋卓弥(Vo,Gt)の歌声はしっとりしているだけじゃなく温もりのようなものがありますし、常田真太郎のピアノのサウンドは朗らかで廉直。
聴き手の心の影を洗いながしてくれるような清らかさがあります。
この音色と濃密な歌詞を組み合わせての本作なんだと思わせてくれる音作りです。
「抑えきれない思いをこの声に乗せて 遠く君の街へ届けよう」
「たとえばそれがこんな歌だったら ぼくらは何処にいたとしてもつながっていける」
たおやかな音にのる、距離を越える愛の歌を聴いてみてください。
それでは。