音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

シド『モノクロのキス』

今日はシド『モノクロのキス』を聴いた感想を。


この曲は日本のロックバンド、シドが2008年にリリースしたポップロックです。


第31回アニメグランプリアニメソング部門受賞曲。

小野大輔坂本真綾梶裕貴加藤英美里が声優として出演している事でも知られるアニメ「黒執事」のOPテーマだった事でも有名です。



作詞はマオ(Vo)、作曲はShinji(Gt)。


明るくも、「黒執事」の世界観を思わせるような艶もある曲。

一聴すると王道のJ-POPのようで、ゆうや(Ds)のドラムにトリッキーなフレーズがあったり、Shinjiのギターソロが躍動的だったりと、聴き手を飽きさせないような構造になっています。

ミドルテンポの分、音を細かく動かしているイメージです。


個人的に聴きどころは、マオの歌声。

マイルド系ながら、張りのあるボーカルプレイです。

発声がナチュラルな為目立ちにくいですが、かなりのハイトーンを出していて、しかもそれでいてブレる事も無い。

最高音部でも声に力があり、迫力があります。

声域的にとても優秀な部類に入るボーカリストではないでしょうか。


もちろん楽曲自体も良く、前述の通り自己主張の強いギターや、ラストの大サビでの歌メロなどしっかりと旋律で聴かせてくれる部分など、メロディ重視の日本ロックとしての魅力も兼ね備えています。

隙の無い作品です。


軽快なビートと完成度の高い旋律を併せ持つ曲を聴いてみてください。



それでは。





スレイヤー『Raining Blood』

今日はSlayer『Raining Blood 』について。


アルバム「Reign in Blood」収録。

この曲は、アメリカのHR/HMバンドSlayerが1986年に発表したスラッシュメタルです。


非常にクオリティの高い曲。

ヘヴィで、スピーディで、テクニカルで、どこかメロディアスで…一般的にスラッシュメタルに欲しいと言われる要素が全て詰め込まれています。

ファンの間でも極めて人気の高い曲で、人気、音楽的方向性が似ている事から「ANGEL OF DEATHとの双子曲」と呼ばれる事も。

どの面をとっても聴き応えのあるメタルですが、特に素晴らしいと思うのが、その構成。

リズムチェンジの嵐です。

特にデイヴ・ロンバード (Ds)のプレイは凄まじく、速くなったり遅くなったり、途中で何度も変わるリズムパターンでリスナーを魅了します。

またテンポチェンジする度に曲調も変わり、その度に聴き手を異空間に連れ去ってくれます。

ツーバスは聴き手を置き去りにするほどのスピード。

リフのメロディも「殺人リフ」と呼ばれる事もあるほど凶悪で、タイトルの「雨のように降る血」を体現したようなもの。

旋律、サウンド共に「どうすればこんな禍禍しいものが作れるんだろう」というほどおどろおどろしい雰囲気を醸し出しています。

後半の加速パートでのソロの速さも、もはや何がなんだか、です。笑


確かに全体的に凶暴な曲風ですか、どこかに高級感のような佇まいも感じます。

それは「スラッシュ・クラシック」と称されるほど、この曲が緻密で、スケールが大きく、それでいて情緒的だから。

スラッシュメタルという世間では激しいだけの音楽と誤解されがちですが、この曲はそういう偏見をひと息に吹き飛ばすような、独特な気品があると思います。

凶暴であっても乱暴では無い、というのがこの曲の魅力なのかもしれませんね。


本来畑違いの、デス、ブラックメタル界にも多大な影響を与えたメタルを聴いてみてください。



それでは。






福山雅治『HEY!』

今日は福山雅治『HEY!』について。


この曲は、日本のシンガー・ソングライター福山雅治が2000年にリリースしたポップロックです。

シドニーオリンピックテーマソングだった事でも有名。


単純な知名度や売り上げ枚数では「桜坂」や「家族になろうよ」ほどではありませんが、前述の通りオリンピックのテーマソングであったり、日本人好みな「しっとりしたバラード曲」では無いアップテンポな曲なのにオリコン首位を獲得したり、と数字では計れない記録を残している曲。


コード進行は、福山雅治全楽曲のなかでもかなりシンプルな部類に入り、良い意味で細やかさより勢いを重視したポップスです。

ギター初心者の人の練習曲としても良い曲かもしれません。

ラストの合唱パートが感動的。


オリンピックのタイアップなだけあって、歌詞はいわゆる応援歌。

「くやしさ ポケットで握りしめ」
「誓いのレールを走り出そう」

「君はまちがってない」

実は歌詞自体は福山いわく、オリンピック選手というよりも、彼が自分自身に向けて綴ったもの。

オリンピックへのタイアップ曲製作が決定した段階で、彼は曲にリアリティを込める為に、実際の選手達にインタビューを行ったそう。

選手達にとってより親近感のある曲にしたかったわけですね。

ところが実際にインタビューを行っていると、他人の気持ちをイメージして曲を作る事の難しさを実感してしまい、最後には一度は完成した曲に違和感を感じてしまうようになってしまったとの事。

そこで彼は、それなら「自分だったら、どう応援されたら嬉しいか」という感覚で作ることにして、思い浮かんだ言葉は「君はまちがってない」だったようです。

どういう言葉をかけられれば元気が出るかは人それぞれ。

けれど「自分が元気になれる言葉で人に元気を与えたい」という福山の想いに、背中を押された選手はきっといると思います。

世間的には応援ソングの代表曲と言えばZARD「負けないで」かもしれませんが、個人的にはこの曲も、「負けないで」と同じくらい力強いメッセージが込められた曲です。


飾らない直球の詞。
だからこそ、多くの人の心に届いた曲を聴いてみてください。



それでは。







B'z『ハピネス』

今日はB'z『ハピネス』を聴いた感想を。


アルバム「SURVIVE」収録。

この曲は、日本のロックユニットB'zが1997年に発表したポップバラードです。


タイトルの通り、ふんわりとした曲。

B'zの大半のバラードはいわゆるロックバラードである事が多いですが、この曲はかなりポップ成分が多めです。

松本孝弘(Gt)によるアコースティックギターでのソロはテクニカルで鋭いですが、それ以外は低反発まくらのように柔らかい印象。

ファルセットによるコーラスには温かな包容力を感じます。


ですが、お優しいだけでは終わらないのがB'z。

「だれもが 時間に追われて こわれて だれかを 愛するひまもない」

常に仕事の事、お金の事など様々な事情に追われて人々が奔走せざるをえない今の時代(といっても約20年前の曲ですが)を風刺するようなフレーズも見られます。


個人的に好きなのはラストのこの歌詞。

「今日も日は暮れ 絶えぬ人の群れ ふらつきながら がんばっているよ」
「楽しい歌だけ 歌いながらね 歩いてゆこう」

「ふらつきながらがんばっている」の部分で、まるで自分の事を歌っているようだ、と思った人も多いのではないでしょうか。

実は作詞者の稲葉浩志(Vo)本人もかなりデリケート。

ライブ前は必ず失敗する悪夢を見てしまったり、ツアー初日の開演前は「早く帰りたい。中止にならないか。」と思ってしまったり。

果ては若手の頃に事務所から、書いた歌詞に何度もダメ出しされ、耐えきれず失踪してしまったりと、相当ネガティブな一面もあるんですよね。

本人が「ふらつきながらがんばってきた」人だからこそ、この人が書く詞は、長時間労働や複雑な経済事情に悩む今の人々に届くものがあるではないでしょうか。

辛さがあるからこそその中でハピネス(幸福)を感じる事もできる、という事を伝えてくれるような曲なのなかもしれません。


ほんわかしたようで、ほのかに塩味も含むバラードを聴いてみてください。



それでは。





レッド・ツェッペリン『Black Dog』

Led Zeppelin『Black Dog』について。


アルバム「Led Zeppelin IV」収録。

この曲は、イギリスのロックバンドLed Zeppelinが1971年に発表したハードロックです。

タイトルは直訳すれぱ「黒い犬」ですが、英語圏では「憂鬱」の意味で使われる事が多いもよう。


ノリノリの曲ですが、タイトルの通りどこかダークというか、異様な居ずまいを漂わせる曲。

豪快であっても爽快では無い、というイメージです。

「発見するのに長い時間はかからなかった」
「人間が落ちぶれていくことの意味をね」
「俺は金をつかって、クルマに乗って、彼女がスターになろうとしていることを彼女の友だちに伝えようとした」

歌詞は70年代の典型的なロック詞というか、ちょいワルで退廃的なもの。

ですがロバート・プラント(Vo)の、男らしいながらもどこか品のあるハイトーンボイスで歌われる事により、不思議とおゲレツにはなりすぎないというか、むしろ綺麗なバランス感覚を演出してくれています。

やや下ネタ的な要素がある詞も、歌声次第でここまで印象が変わるのですから、音楽におけるボーカリストの役割の重みを改めて実感できます。

個人的にはギターソロの途中で入る歌声が好きです。


この曲のメインは、やはりその独創的なグルーヴ。

ジミー・ペイジ(Gt)のギター、ジョン・ポール・ジョーンズ(Ba)のベース、ジョン・ボーナム(Ds)のドラムのビートが、微妙にズレています。

それがわざとオシャレにズラしているのか、単にズレているのかはわかりませんが(ライブでは合っている事も多いです)、それに妙な味があります。

変な例えですが、日本のお笑いコンビのダウンタウンの漫才も、本当は一定のテンポで漫才ができる2人が、あえて狙い澄ましてテンポをズラす事により、かえってセリフを印象に残りやすくする、という技法を使う事で玄人達から評価されましたが、それに近いイメージかもしれません。

特にペイジのギターリフのズレかたは絶妙で、聴き込むほどユニークな中毒性を発揮してくれます。

実際ファンの間では
「初めは何が良いのかわからなかったど、いつの間にか頭の中で繰り返すようになっていて、気が付くと好きになっていた。」
というパターンが多いもよう。

「こんな表現法があるんだ」と思わせてくれるロックです。

発表してから約50年経った現在でも、インタビューの場で「この曲は、Black Dogをモチーフに作曲したんです。」と多くのアーティストに言わせるほどのインパクトを持つ曲を聴いてみてください。



それでは。







長渕剛『とんぼ』

今日は長渕剛『とんぼ』について。


アルバム「昭和」収録。

この曲は、日本のシンガー・ソングライター長渕剛が1988年に発表したフォークソングです。

長渕剛本人、哀川翔仙道敦子が出演している事でも知られるドラマ「とんぼ」の主題歌としても有名。


素朴で重みがある曲。

「乾杯」の並ぶ長渕剛自身の二大代表曲の1つです。

フォークギターを主体としたしっとりとした曲調ですが、とても男らしい雰囲気。

長渕剛の渋い歌声は、ロックボーカリストのシャウトとは違った意味での迫力がありますよね。


『とんぼ』と言えば、やはり有名すぎるこのフレーズ。

「あぁ幸せのとんぼよ何処へ お前は何処へ飛んでゆく」
「あぁ幸せのとんぼがほら 舌を出して笑ってらぁ

元々、田舎から都会に憧れて上京してきた者達の挫折を歌い上げた曲。

「とんぼ」を幸福の象徴と捉え、それでいてなかなか手の届かない存在、として比喩したようです。

けれどそれを踏まえても、初めて聴いた人の中には「なんで“とんぼ”なんだろう」と思った人も多いかもしれません。

長渕剛は自身の著書の中で

「田舎のとんぼは群れをなして楽しそうに飛んでいるのに、東京にいるとんぼはいつも一人ぼっちだ。だけど、都会のトンボは1人でも、愚痴も言わず精一杯水辺を探して飛んでいる。まあ立派な奴だよ。」

と語っています。

その「立派な奴」が、地方から出てきたばかりで孤独な人に、「都会で孤独に努力する者」の先輩として「この冷たい東京で、君はどこまで幸せになれるかな」と舌を出して笑ってる姿を表現した歌詞、のようです。

ドラマの内容になぞらえて書かれた詞だそうですが、きっと長渕剛本人も、初めて上京した時は右も左も解らず、それでいて助けてくれる人もほとんどいない東京で苦悩していた時期があったんだと思います。

きっと、その自分の立場を都会で懸命に飛び続けるとんぼの姿と重ねて生み出されたのが、この作品なんですよね。

実際、若者が上京する時に地元の家族友人から応援ソングとして歌われる事が多い曲ですが、リリースして約30年経過した現在でもこの曲が時代を越えて愛されるのは、長渕剛が体験し心から涌き出た本音の魂の叫びが、この曲に込められているからではないでしょうか。

長年多くの「努力するひとりぼっちな人」の心を支え続けた偉大な作品だと思います。


寂しくも温かい曲を聴いてみてください。



それでは。





Sadie『陽炎』

今日はSadie『陽炎』を聴いた感想を。


アルバム「MASTER OF ROMANCE」収録。

この曲は、日本のロックバンドSadieが2009年に発表したメタル・コアです。


攻撃的ながらメロディアスな曲。

世代的にはいわゆる「ネオ・ヴィジュアル系」に属するバンドだと思いますが、本作にはLuna SeaDir en Greyなどの創成期のヴィジュアル系の要素が色濃く表れています。
(実際メンバーも前述の2バンドへのリスペクトを公言しています。)

「今これ以上 このまま離れたなら」
「壊れそうな予感に怯えるだろう」

愛する人との離別への怖さをテーマにした切ない歌詞ですが、曲風はそれと相反するようにアグレッシブ。

剣(Gt)と美月(Gt)によるツインギターでのリフがゴリゴリのヘヴィサウンド。

真緒(Vo)のボーカルも、サビでは突き上げるような歌声で、疾走感のある曲調に似合っています。

激しい曲ながらどことなく「懐かしさ」が漂うのは、スピーディながら覚えやすいメロディが、90年代の正統派ヴィジュアル系バンドの風を連想させるからでしょうか。


特にこの曲で好きなのは、景(Ds)の怒濤のドラミング。

速いフィルもさることながら、イントロのツーバス連打がかっこいいです。

ネオ・ヴィジュアル系バンドのドラマーは、様式美的にバスドラムを2つセッティングしながらも特に連打はしない、というパターンも多いのですが、彼はバリバリ使用します。

実際、練習のし過ぎで何本もスティックを折ったり、インタビューで「世界最後の日、何をして過ごしますか?」という質問に「延々とドラムを叩く」と答えたりと、かなり練習好きなプレイヤー。

他メンバーからも「メンバーの中でも、演奏技術が飛び抜けて高い」と評されるなど、Sadieきっての実力派なんですよね。

もちろんその切れ味鋭い演奏に合わせる亜季(Ba)のプレイも一聴の価値あり。

冷静な性格が表れたような渋い演奏です。


ちなみにSadie自体はそのダークなファッションからクールな印象を抱かれがちですが、メンバー全員が関西出身という事もあるのか、実際は亜季以外ゴールデンボンバー並のハイテンションキャラ。

メンバーでコアなバラエティ番組に出演していた時期もあり、番組の企画でメンバー4人で「真緒にヤ○ザを絡ませる」ドッキリを仕掛け、パニックになる真緒を画面越しにみて、他メンバーが爆笑する、という微笑ましい場面も。
(亜季もこらえきれず、画面から顔を逸らして笑っています。笑)

後の真緒いわく、偽ヤ○ザに絡まれていた時の心境は「皆ごめん、俺もうSadieでけへんわ…」だったとの事。笑

激しいプレイと、ユニークなキャラクターのギャップも彼らの魅力の1つですよね。


ヴィジュアル系の王道ながらも彼らの色が表れた曲を聴いてみてください。



それでは。