アヴェンジド・セヴンフォールド『Bat Country』
今日はAvenged Sevenfold『Bat Country』について。
アルバム「City of Evil」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドAvenged Sevenfoldが2005年に発表したメタルコアです。
メロディックなロックンロール・メタル。
…なのですが、歌詞の内容的には
「何で俺たちは死ぬより生きたいと思うのか、時にわからなくなる」
「あんたの赦しなんていらないよ、だって正しくなんて生きれないんだから」
「誰も俺を救えないし、俺が注目を引きたくないってのはお前も知ってるだろう」
と、繊細で陰鬱なもの。
「アメリカのメタルバンド」といえば陽気でパワフルな作風のバンドが多いイメージですが、こういう人間の弱さ、人生の報われなさをダイレクトに表現するバンドもいるから面白いですよね。
詞に反して曲は豪快で骨太。
基本的にはコアとロックン・ロールの成分が強い曲だと思いますが、ギターソロパートになると一転。
ハロウィンを連想させるような、ツインギターのメタル調に変化します。
ガンズ・アンド・ローゼスにメロディックスピードメタルの要素を取り入れたようなイメージと言えば伝わりやすいかもしれません。
ザ・レヴ(Ds)のドラムもヘヴィメタル、というかブラックメタル並の激速ツーバス 。
ここまで展開が変わると「豹変」という言葉が似合うのではないでしょうか。
この曲で好きなのは、M.シャドウズ(Vo)の声色の使い分け。
ロックのパートではパンキッシュな声で歌っていますが、メロディアスなパートではクリアトーンの声色で歌い上げられています。
歌メロ自体もとても魅力的な曲ですが、M.シャドウズが歌う事によってこの曲の潜在的な良さが、あます事なく押し出されているのではないでしょうか。
曲展開の多彩さと、プレイヤーの表現の多彩さのバランスが見事にとれた曲だと思います。
表情豊かなHR/HMを聴いてみてください。
それでは。
K『Only Human』
今日はK『Only Human』について。
この曲は、韓国出身のシンガー・ソングライターKが2005年にリリースしたポップバラードです。
先日紹介した「3月9日」同様、ドラマ「1リットルの涙」の主題歌としても知られています。
K自身の最大のヒット曲。
初登場から「7週連続チャートイン」というロングセールスを記録しました。
「Over…」と対をなす彼の代表曲ですが、イントロが美しいピアノから始まる、という共通点があります。
そしてそのピアノ以上に綺麗なのがKの歌声。
天性の美しい声質を持った歌手がたゆまぬ訓練を積むとこういう声が出せるんだろうな、と聴き手に思わせてくれる完成度のボーカルプレイ。
ただ儚げなのではなく強くしっかりとした「しなやかさ」を感じされてくれる声の出し方ですよね。
曲調は悲しげなのに太い芯が通ってるように思えるのは、彼自身の歌声にあるのではないでしょうか。
歌詞も、その「芯」を感じるもの。
「明日さえ見えたなら ため息もないけど」
「流れに逆らう舟のように 今は 前へ 進め」
タイアップのドラマが「不治の病にかかった少女が、最後まで懸命に生きる姿」を描いた作品だからだと思いますが、不安と希望が等しく入り交じるような内容になっています。
この曲のリリース前のKの曲はほとんどが恋愛ソングでしたが、こういう人間の「挫折」や、またそれを乗り越える「強さ」のような部分を表現しているのが新鮮な詞です。
人生の歩みかたを、「ただ流れの中にに浮かんでいるように見えても、実際にオールを握っているのは自分自身」と形容した歌詞は、儚げなように見えて強いKの歌声に大いにマッチしています。
ヒットしたのは楽曲自体の良さもあるでしょうが、「ここまでヒットしたのは歌ったのがKだから」と思わせてくれる絶妙なフィット感を感じさせてくれる曲ではないでしょうか。
将来を悲観したくなる時に、優しく腕を引いてくれる歌を聴いてみてください。
それでは。
レミオロメン『3月9日』
今日はレミオロメン『3月9日』を聴いた感想を。
この曲は日本のロックバンド、レミオロメンが2004年にリリースしたポップバラードです。
ドラマ「1リットルの涙」の挿入歌としても知られています。
作詞・曲ともに藤巻亮太(Vo.Gt)。
オリコンチャートでのチャートイン数は62週、というロングヒット作品。
PVには堀北真希や池田鉄洋が出演した事でも話題になりました。
曲調的には大きな抑揚は無く、さっぱりとした構成です。
ただしさっぱりとしている、とは言ってもプロデューサーはMr.Childrenをプロデュースしていた事もある小林 武史。
聴き手を穏やかに包み込むような癒しのサウンド、メロディが全編に散りばめられています。
「粉雪」のように高いキーで叫ぶような感情表をする曲とは、タイプが違う魅力を持ったバラードだと思います。
ちなみに世間では「卒業ソング」というイメージが強いようですが、元々はレミオロメンのメンバー3人の共通の友人の、結婚式(2001年3月9日)を祝うために作られた楽曲。
個人的に好きなのはこの部分。
「青い空は凛と澄んで 羊雲は静かに揺れる」
「花咲くを待つ喜びを 分かち合えるのであればそれは幸せ」
羊雲とは、基本的に春や秋に浮かぶ雲。
時間が経ち「恋人」から「結婚相手」に変わっていく様子を、季節の変わり目を表す「羊雲」という言葉を使って表現する藤巻亮太の感性が美しい。
結婚式で流す事を前提にしている為か、文体が手紙風なところも情緒的ですよね。
歌詞、曲ともに純粋な歌ではないでしょうか。
ちなみに音羽ゆりかご会がアルバム『手紙・まあるいいのち〜卒業&合唱ソングコレクション〜』で、
柴咲コウがカバーアルバム『続こううたう』で本作をカバーしていますが、そちらもオススメです。
それでは。
ドラゴン・フォース『Heros of Our Time』
今日はDragon Force『Heros of Our Time』について。
アルバム「Ultra Beatdown」収録。
この曲は、イングランドのスピードメタルバンドDragon Forceが2008年に発表したパワーメタルです。
とても起伏に富んだ曲。
サム・トットマン(Gt)、ハーマン・リ(Gt)のうねるような激速プレイは相変わらずですが、今回は特に
デイヴ・マッキントッシュ(Ds)のドラムプレイが冴えたっています。
もちろんスピードもそうですが、1音1音の音の太さ。
ドラムというのはどれだけ速く叩いても、音圧が小さいと疾走感というのは出しにくい楽器ですが、デイヴのこの曲でのプレイは、ドコドコと超攻撃的なサウンドを響かせてくれています。
旋律重視のパワーメタル界では時に忘れられがちですが、やはり重い音色はメタルの原点。
Dragon Forceの楽曲が、テンポは同じでも他のメタルバンドの曲より速く聴こえるのは、彼の功績が大きいのではないでしょうか。
ZPサート(Vo)のサビでの歌声も、いつも以上に目立ちまくり。
始めてDragon Forceを聴く人の意見に「どの歌メロがサビなのかわからない」という声がたまにありますが、この曲は一聴しただけでもサビが解るほど歌メロがキャッチー。
良い意味でポップ成分も豊富なボーカルメロディです。
従来のDragon Forceの楽曲と比べて特徴的なのは、その緩急。
途中で入る静寂パートや、ギターソロ部分での減速など、聴き手が様々な体感速度で曲を楽しめるように工夫されています。
ややプログレッシブメタル感もある曲ではないでしょうか。
これまで「美しいメロディにブラストビートをのせる」という手法で多くのファンを唸らせてきた彼らですが、ここにきてさらに+aの要素を足してくれました。
美メロ+疾走感+ドラマ性を兼ね備えた、Dragon
Forceの進化を感じさせてくれる曲です。
この複数の要素を巧みに一曲に詰め込むバランス感覚は、幼い頃から緻密なクラシックギターの素養のある、メインコンポーザーのサム・トットマンのセンスが大きいのかもしれませんね。
他のDragon Forceの楽曲とは、似ているようで違う曲を聴いてみてください。
それでは。
Every Little Thing『Time goes by』
今日はEvery Little Thing『Time goes by』について。
この曲は、日本の音楽グループEvery Little Thingが1998年にリリースしたポップバラードです。
木梨憲武、財前直見が出演した事でも知られるドラマ「甘い結婚」の主題歌としても有名。
Every Little Thingのシングルで最大の売り上げを記録した曲です。
第40回日本レコード大賞 優秀作品賞授賞
第13回日本ゴールドディスク大賞授賞
など、多くの華々しい賞を授賞しています。
ちなみにこの曲で「NHK紅白歌合戦」に出場した際は、第1部での出場でしたが、この際に視聴率56.5%という数字を記録。
NHK紅白歌合戦の第1部では、史上最高との事。
紛れもない彼女達の代表作と言える作品です。
作詞・作曲は本作以外にも「Feel My Heart」や
「Future World」など数々の名曲をEvery Little Thingに提供してきた五十嵐 充。
曲は、打ち込みのサウンドを基盤に生のピアノやストリングスを加えた、きらびやかなバラード。
意外にも彼女達の楽曲は、この曲以前には打ち込み主体のややノリの良い、ポップロック的な音楽が多かったんですよね。
それが初のバラードでしかも生の楽器も加えた、路線変更にも近い作品をリリースきしたわけですから、そういう意味でもインパクトがありました。
メロディーラインは覚えやすくキャッチーなものですが、大サビで転調、その後の間奏でも転調し、ラストのサビでまた転調、という大胆な手法も。
「いっくん」こと伊藤一朗(ギター)もポップバラード曲としてはかなり複雑で味があります。
曲調としては全体的にかなり緻密なものだと思います。
歌詞はとてもポジティブ。
「残された傷あとが 消えた瞬間」
「本当の優しさの 意味がわかるよ きっと」
おそらく恋人同士の気持ちのすれ違いを描いた詞。
ケンカだったり誤解しあったりで互いを許せなくなったカップルに、「今は難しくても、いつか相手に感謝したくなる時がくる」というエールを送っているかのようです。
「可愛さあまって憎さ百倍」とは言いますが、好きで期待している相手だからこそ、その信頼を裏切られた時は、思わず相手の全てを許せなくなってしまいがちなもの。
けどそれは多くの場合、あくまで一過性。
時がたち怒りが冷めれば、いつかまた再び愛せるようになるかもしれない、という聴き手に愛の前向きな部分を気づかせてくれる歌詞ではないでしょうか。
恋人や大切な人とケンカ中に聴くと響きそうな曲ですよね。
しとやかながら明るい歌を聴いてみてください。
それでは。
アンダーグラフ『ツバサ』
今日はアンダーグラフ『ツバサ』を聴いた感想を。
この曲は日本のロックバンド、アンダーグラフが2004年にリリースしたポップロックです。
作詞・曲ともに真戸原直人(Vo.Gt)。
キャッチコピーは「人はツバサを持つと自由になれるのですか?」。
彼ら自身の記念すべきメジャーデビュー作。
楽曲が良い事はもちろん、新人バンドでありながらPVに当時「世界の中心で愛を叫ぶ」に出演した事でセンセーショナルを巻き起こしていた長澤まさみを起用した事でも話題になりました。
今でこそ世間では「ヒット作」として認知されている曲ですが、発売直後の売り上げ枚数は、意外にもアンダーグラフ全楽曲の中でも最低。
そこからラジオや有線放送で流された事で人気に火がつき、有線の問い合わせチャート14週連続1位に。
最終的には20週目でオリコンTop10以内に食い込み
、彼らの「最高」売り上げにまで達しました。
最低の位置から最高の高さまで飛んでいく、というところがまた『ツバサ』という感じがしますよね。
曲の流れは、まず独特なリズムのギターリフから入り、そこからJ-POPの王道のコード進行で展開していきます。
後半では大サビの前に、めちゃくちゃ間をとるという演出も。
ここで「あぁ曲が終わったんだ」とプレイヤーのスイッチを切ってしまったリスナーも多いかもしれません。笑
コード進行がオーソドックスでも、不思議と独特な雰囲気を奏でているのは、ボーカルの真戸原直人の歌い方ではないでしょうか。
ハスキーで、どことなくアンニュイな歌声。
声質はやや違いますが、個人的にはレミオロメンの藤巻亮太の歌い方に似ている気がします。
あまり力んでいない感じの発声ですが、それでも歌詞をはっきりと聴きとる事ができるのは、歌う時の口のフォームが綺麗だからなんでしょうね。
ちなみに彼のファンの間では「Mr.Childrenの桜井さんの歌声に似ている」という声も多いようです。
印象的なのは歌詞。
「旅立つ空に出会いと別れ 青春の日々全てを描き」
「いつか互いに大きな花を 綺麗な花を咲かすと決めた」
「いつか互いに大きな花を」と言っているので、その恋人も何か目標を持ってるんですよね。
日本のポップスの曲には「地元に恋人(もしくは友達)をおいて、夢の為にひとり上京する」みたいな歌詞は多いと思いますが、こうして「恋人と共に夢を追う」歌詞は、ありそうで少ない気がします。
曲の方もそうですが、「王道をいくようでどこかに個性がある」のが本作の魅力。
売れるまで時間がかかったのも、一見普通の曲調の中にも、隠し味的な要素があることにリスナーが少しずつ気づいていったからかもしれません。
いわゆる「スルメソング」の1つだと思います。
中性的なメロディと力強い決意表明の詞のコントラストを感じてみてください。
それでは。
ロスト・ホライズン『Again Will The Fire Burn』
今日はLost Horizon『Again Will The Fire Burn』について。
アルバム「A FLAME TO THE GROUND BENEATH」収録。
この曲は、スウェーデンのプログレッシブメタルバンドLost Horizonが2003年に発表したパワーメタルです。
「もう一度おまえの心の奥を覗いてみるんだ 神秘的な本質があるはず」
「俺は影たちから自分の情熱を取り戻した この世界の冷たい暗闇で道に迷っていたん」
「意思だけが俺が認める力なんだ」
「意思の再燃」をテーマにした本作は、シリアスな演奏に張り裂けぶような歌声がのった熱い曲です。
パワーメタルとしては演奏時間はコンパクトですが、スケールはむしろ大きいです。
ラプソディ・オブ・ファイアをダークにしたようなイメージでしょうか。
テンポはメタル曲としては速くはありませんが、あえてのミドルテンポで奏でられるギターリフは、かえってそのずっしりとしたサウンドを強調する効果を生み出しています。
「道を外れて孤独に絶望の嵐の中をさまよっている」と歌詞にもあるように、主人公がひとりで逆境の中で戦う姿を連想されてくれる音色だと思います。
曲や詞の良さもさることながら、秀逸なのはダニエル・ハイメンのボーカルプレイ。
倍音の効いた中音域、鋭く激しい高音域が巧みに使い分けられています。
しかもただ「声色を使い分けられて凄い」では無く、それぞれが非常に高次元です。
切り替わりの瞬間も一切ぶれること無く正確無比。
2004年にはメンバーとの意見のくい違いにより、惜しまれつつも脱退してしまいましたが、その前にメタルファンに素晴しい歌声がのった音源を残してくれたと思います。
脱退以降はあまり大々的に目立った活動はしていませんが、これからもその稀有なテクニックを生かしたボーカルプレイを聴かせてほしいですね。
繊細で情熱的な歌唱、演奏を聴いてみてください。
それでは。