音の日

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荒井由実『卒業写真』

今日は荒井由実『卒業写真』について。


アルバム「COBALT HOUR」収録。


この曲は、日本のシンガー・ソングライター荒井由実が1975年に発表したポップバラードです。

日本のノスタルジー系バラードの代表曲。

特に大袈裟な展開や高いキーで歌う事も無く、冷静でフラットな曲調なのに、不思議とメロディから豊富な感情量を感じさせてくれる内容になっています。

ユーミンの、遠くに向かって語りかけるような歌い方が感慨深い。

「人ごみに流されて 変わってゆく私を」
「あなたはときどき 遠くでしかって」
「あなたは私の青春そのもの」

世間では「過去の別れた恋人に向けられた詞」と受け取られがちですが、実際はユーミンが高校時代に通っていた美術教室の女性教師の事を綴ったものであるとのこと。

とても厳しい先生で、当初はユーミン側からすればあまり好きになれなかった先生だったそうです。

しかし当時ユーミンが抱いていた「東京芸大に入学」の夢を真剣に応援してくれた先生で、ユーミンが受験に落ちてしまった時も一切責めずに「また受ければ良いじゃない。一緒に頑張りましょう。」と優しく励ましてくれ、いつしかユーミンが彼女に抱く感情は敬愛に変わっていったそう。

ただ、その後ユーミンは親から猛反対にあってしまい、結局芸大を受ける事は出来なかったようです。

その後、道を歩いていたら偶然遠巻きにその先生を見かけ、一瞬声をかけようとは思ったようですが、すでに違う大学に通い、しかも美術とは関係の無い音楽にハマりはじめていたユーミンは、後ろめたさを感じ、先生に話しかける事はできなかったとのこと。

その時の心情を表現した詞がこの作品のようですね。

一見すると切ない詞ですが、高校時代にその先生からかけてもらった厳しくも優しい言葉は、本人いわく今でも作曲の際の創作意欲に結び付いているそう。

「遠くでしかって」というのはおそらく、心の中でその先生が未だに自分を励まし続けてくれる姿をイメージし、自分自身を鼓舞するということ。

芸大は諦めても、ユーミンの中でその先生と過ごした時間はいつまでも生き続けている。
そんな想いが伝わってくる歌でもあるのかもしれませんね。

若い時に自分の目標を応援してくれた恩師、先輩がいる人には響くものがある曲ではないでしょうか。


追慕と感謝の気持ちが込められた曲を聴いてみてください。



それでは。