ガンズ・アンド・ローゼズ『Paradise City』
今日はGuns N' Roses『Paradise City』について。
アルバム「Appetite for Destruction」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドGuns N' Rosesが1987年に発表したハードロックです。
いわずと知れたガンズの代表曲のひとつ。
YouTubeに投稿されているPVの再生回数が6.5億回再生(2021年8月19日現在)と、超がつく有名曲です。
この曲がクールなのは、キャッチーなのにロックしているところ。
特にスラッシュ(Gt)のギターがとても表情豊かです。
直球なコード進行なのですが、微に細に色付けが施されています。
入りのギター・アルペジオなどまるでバラード曲のように穏やか。
ですがよく聴くと意外に速弾きで、ギター中級者以上じゃなければ手こずるようなプレイ。
さりげなく6連符などかなりスピーディーなフレーズもあり、しっとりしているようで激しい演奏です。
そのまま穏やかに進むのかと思えば、唐突に「ピーーーッ!!」と鳴り響くアクセルが吹くホイッスル。笑
そこからしっとりした雰囲気から一転、テンポが倍近くなり、演奏の圧力が増してハードロックしていきます。
リフの中にも16分音符が混ざり、まさに縦横無尽。
アクセル・ローズ(Vo.key) の歌声もかなり早口の部分があり、「これ、よく噛まないな」と感嘆する滑舌です。笑
若干ラップロックっぽいところが粋。
けれどやはり極めつけはラストのギターソロ。
まるで雪崩のように、曲の後半部分を轟音が埋め尽くしていきます。
アメリカの有名ギター誌Guitar Worldにおいて「スラッシュのギターソロ BEST10」で1位に選出された事もあるソロですが、速くエモーショナルでワイルドです。
音楽評論家のスティーヴ・ヒューイが
「長い曲でありながら、とりとめのなさや過剰さを感じさせない」
と評したように、演奏時間6分を越える長尺の作品でありながら長さを感じさせないのは、このトドメのソロの要素が大きい。
またこの時、さりげなくダフ・マッケイガン(Ba) のベースも良い仕事をしていて、一見似たようなフレーズを繰り返しているように見せて細かく変化させていたりと、まさに音の隠し味。
意外にもダフはガンズに加入する前まではほとんどベースを弾いた事がなく、パンクシーンでギターとドラムしか経験していませんでした。
それが短いベーシストキャリアでここまでのプレイを聴かせてくれるのですから、彼の演奏に対する集中力と使命感の強さが伝わってくるプレイです。
ガンズのコンポージング力だけじゃなく、プレイヤーとしての力を知る事ができる曲です。
演奏力、今聴いてもかっこいいメロディ、豪快過ぎるPV笑、フックのききまくった作品を聴いてみてください。
それでは。
パワー・ステーション『Some Like It Hot』
今日はThe Power Station『Some Like It Hot』について。
アルバム「The Power Station」収録。
この曲は、イギリスのロックバンドThe Power Stationが1985年に発表したハードロックです。
ドラムが鮮烈な曲。
トニー・トンプソン(Ds) のドラムがまるでメロディを奏でるような緻密なビートで、ロバート・パーマー(Vo) の歌とツインボーカルのようなコンビネーションで聴き手に迫っていきます。
元々ファンクバンドのシックでプレイしていたドラマーですが、実はアンディ・テイラー(Gt) ジョン・テイラー(Ba) がシックの大ファン。
そこで2人が「トニーのドラムのかっこ良さが伝わる曲を作ろう」というコンセプトで生み出した曲の為、ドラムが目立つ仕様になったようですね。
トニー自身、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムを非常に尊敬しているプレイヤーの為か、音圧が超ハイパワー。
目立つ音量と目立つフレージングで、リズム隊の枠を飛び越えるように自己主張しまくっています。笑
一方でドラムの音が目立つのは、名エンジニアのジェイソン・カーサロのかけた「ゲートリバーブエフェクト」の要素も大きい。
ゲートリバーブエフェクトとは、たとえば普通にドラムを叩くと「タンッ」と音が鳴り、それにリバーブをかけると「タアァァァァ…ン」と響く。
その伸ばした残響音の後半の音をノイズゲートでバッサリ切って「タアァッ」と、幻想的ながら歯切れの良い音を鳴らす手法なのですが、これがとにかくかっこよく鳴っています。
トニー自身もレコーディングの際に、わざと広い部屋でレコーディングして残響音を響かせまくり、その音に更にこのエフェクトをかけた事でその効果を倍増させた模様。
トニーのパワーとジェイソンの音作り、優秀なプレイヤーとエンジニアの共同作業で最高に上質なサウンドのドラミングが楽しめる楽曲です。
現在の音楽シーンでは、世間がヒップホップやEDMの軽快なビートに耳が慣れている為か、こうしたへヴィなサウンドのドラミングはあまり取り沙汰されなくなりました。
だからこそ、リズムの音色が強い音楽というのは新鮮に聴こえるはずなので、こうしたパワフルなビートが今一度日の目を浴びても良い気がします。
若くして亡くなったトニーの残した偉大なプレイのひとつが存分に楽しめる作品です。
メロディックなドラミングのバイブルのような曲を聴いてみてください。
それでは。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Can't Stop』
今日はRed Hot Chili Peppers『Can't Stop』について。
アルバム「By the Way」収録。
この曲は、アメリカのロックバンドが2002年に発表したラップロックです。
とても多彩なメロディが込められたラップ曲。
入りではジョン・フルシアンテ(Gt.key)の巧みなカッティングがキマり、そこからアンソニー・キーディス(Vo)のラップに流れ、そこから一気にキャッチーなサビメロが始まる。
聴衆を一息に惹き付けるような魔力を秘めた歌メロです。
デビュー当時ファンク成分が強かったレッチリが、メロディック路線に舵を切ったのは途中加入したジョンの要素が大きい。
その中でも本作は、レッチリのメロディメイカー、ジョンの趣向が特に色濃く現れた作品ではないでしょうか。
しかし本作でそれにも劣らない存在感を放つのは、やはりフリー(Ba)のプレイ。
Aメロからとても歯切れの良いスラップ。
世界中のベースキッズ達がコピーしたとされる名演ですが、スラップだとスローテンポでも正確につかむのは難しいリズムで、演奏の基盤をユニークに支えています。
この曲のベースパートでも、特にファンキー&エキサイティングなパート。
かと思えばサビに入るとツーフィンガーでの、メロディ重視の美しいプレイに様変わり。
割と急な変化なのですが、その「つなぎ」の部分がとても滑らかな為、聴き手に違和感を感じさせないように作られています。
そしてサビ後はベースでのアルペジオ。
まるでギターでコードを押さえるような指の使い方で、上手い事ベースを歌わせています。
個人的には、ここがフリーのパートのクライマックス。
曲自体がドラマティックな曲ですが、ベース1本でここまでオシャレで、美旋律で深みのあるストーリーを描ける様はまさに「史上、最も才能豊かなベーシストの1人」。(AllMusic)
フリー本人は、「ジミ・ヘンドリックスの音楽が俺を育ててくれたようなもの」と語っています。
しかしその一方で、ベスト・アーティストを訪ねられるとレゲエミュージシャンのボブ・マーリィとジャズ奏者のチャールズ・ミンガスの名を上げたり、「若い頃に出会ったパンク・ロックが自分のベーシストとしてのスタイルを作り上げた」と語ったり、とにかく幅広い界隈のミュージシャンからの影響を受けたプレイヤー。
特定のジャンルにこだわらず、良いものは良いと幅広い音楽を聴き続けて磨かれた彼のセンスが、この小さな宇宙のように高密度のプレイを生み出しているのでしょう。
一曲の中で、メロディが広く枝分かれしたような曲です。
ラップでの、少年のようにピュアな歌メロと、バックの凄絶なプレイの対比の効いた曲を聴いてみてください。
それでは。
オジー・オズボーン『Bark at the Moon』
今日はOzzy Osbourne『Bark at the Moon』について。
アルバム「Bark at the Moon」収録。
この曲は、イングランドのシンガー・ソングライターOzzy Osbourneが1983年に発表した王道ヘヴィーメタルです。
邦題は「月に吠える」。
ジェイク・E・リー(Gt) のギターの個性が味わえる曲。
「ジェイク・フェイク」とも呼ばれる彼のギターテクニックの一端を垣間見ることができます。
まずリフが面白い。
疾走感のあるルート刻み部分もさる事ながら、超がつく程ストレッチしたフィンガリングで、トリッキーなコード・ワークを披露してくれています。
人差し指が4弦5フレットで小指が2弦11フレットなど、もはや見てるこっちの指が痛くなりそうな妙技。笑
このフィンガリングについてはネット上でも「もっと簡単な押さえ方もあるのに、なんでわざわざこんな疲れる運指で弾いてるんだ?」などの声があります。
が、理由はどうやらこの運指の方が、より曲にマッチしたサウンドが出せるからのよう。
「神は細部に宿る」という言葉もあるように、常人には気付くのも難しい次元のこだわりが、ジェイクの神がかったプレイを生み出しているのでしょう。
実際プロ、アマ問わず世界中にギタリストがこのリフをコピーしていますが、この奏法を再現しているギタリストはかなり少ないんですよね。
ジェイクがロックギタリスト界でも、いかに独特なギタープレイスタイルの持ち主かが解る作品です。
もちろんHR/HM曲らしくソロも見事。
6連符速弾きパートもかっこいいですが、アクセントのピッキング・ハーモニクスも光っています。
スピードの中にも、繊細な小技をさりげなく詰める事が出来るのところが粋。
ところが、とても存在感のあるソロなのに、当初ジェイクはあまり気に入っていなかった模様。笑
実は元々ジェイクが自ら作ったオリジナルのソロがあったようなのですが、オジーからボツを出されてしまい、最終的にこのソロになったとの事。
ジェイク本人は「まるで中身の無いジャム・セッションみたいだよ」とまでこき下ろしていますが、ファンからは人気のソロで、本作が長年語りつがれている要因のひとつにもなっています。
オジーのセンスも、間違ってはいなかったのではないでしょうか。
これらの高次元のプレイが、収録アルバムをプロデュースしたマックス・ノーマンの生み出す高品質なサウンドで表現された時、孤高の美しさを放つ極上のメタル曲が体現されます。
マックス・ノーマンと言えば、日本のメタル界の代表格ラウドネスをプロデュースした事でも知られているプロデューサーですが、こういうヘヴィーなのにクッキリした音色を作るのが、彼は本当に上手い。
ジェイク本人のサウンドチューニングの巧みさと相まって、約40年前の曲とは思えない立体感のある音を楽しむ事ができます。
サビの歌詞の「Bark At The Moon」が、オジー・オズボーン(Vo)の滑舌の問題で「ばっかだもーん」に聞こえてしまう事がリスナーからネタにされる事もある曲。笑
ですが、そんな些事もアッサリとかき消す程の質量と高級感がこの曲には詰まっています。
本格派でシャープで、ちょっとだけコミカルなところが売りの作品です。
今聴いても古くない、デリケートな工夫が沢山詰まった曲を聴いてみてください。
それでは。
ドリーム・シアター『Scene Eight: The Spirit Carries On』
今日はDream Theater『Scene Eight: The Spirit Carries On』について。
アルバム「Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドDream Theaterが1999年に発表したロックバラードです。
ジョン・ペトルーシ(Gt) の濃厚な表現が楽しめる曲。
ギターソロから、テクニカルなのに灯籠の光のような温かなフィーリングが伝わってきます。
ペトルーシというと世間的には「まるで機械のよう」と言われるほど、良い意味でもそうじゃない意味でも、正確無比なプレイばかりを取り沙汰されがちだったギタリスト。
しかしこの曲での彼のプレイは、いつも通りテクニカルなパートもありながら、そうした評価を一息に吹き飛ばすような情操も感じます。
基本的にはゆったりとしているのですが、所々高音域でギターを叫ばせたり、更に後半ではペンタトニックで超加速したり、その上でまたゆったりに戻ったり。
まるでギター1本のメロディで1つのドラマを生み出しているかのようです。
ペトルーシのプレイの中でも、最もロマンティックで鮮やかなプレイの1つではないでしょうか。
彼のギターはこの曲の発表後から、ますますテクニカル成分が強くなり、こうしたメロディアスな演奏をする場面は徐々に少なくなっていきます。
それはそれで知的でかっこいいのですが、こうしたまるで魂でギターを歌わせるようなプレイができるのも、元来のペトルーシギターの醍醐味ですよね。
このソロで思い切りリスナーを舞い上がらせた後に、強力なゴスペルと重なりながらジェイムズ・ラブリエ(Vo) が大サビを歌いあげる流れは圧巻。
空間を飲み込むような密度で、現実離れしたスケールの美しさが聴き手の心の深くに入り込んでいきます。
他のドリーム・シアターの曲ほど変拍子は使われてないのですが、それとはまた違った上手い曲展開でこの美メロを際立たせていて、華やかさで勝負してきたアーティストが、突然オーソドックスで洗練されたプレイに持ち武器を変えたイメージ。
作曲における彼らの引き出しの数を証明したような作品です。
「The Spirit Carries On」(魂は生き続ける)。
細やかな工夫よりも、ストレートな魂のメロディで20年以上ファンから愛されるバラードを聴いてみてください。
それでは。
ライオット『Flight of the Warrior』
今日はRiot『Flight of the Warrior』について。
アルバム「Thundersteel 」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドRiotが1988年に発表したスピードメタルです。
とてもムーディーなメタル曲。
歌メロが一見明るいようで、でもよく聴くとどこか切なく刹那的なボーカルメロディで聴かせる作風になっています。
歌い手はトニー・ムーア。
ライオットといえば、たびたびボーカルが代わる事で話題になるバンドですが、本作から感じられる濃厚なエモーションは、彼の要素が大きい。
かなり高いキーのパートもあるのに、張り叫ぶのではなく、あくまで滑らかにベルカントの響きでリスナーに丁寧に感情を届けてくれます。
機械的なまでに正確なのに、熱が伝わってくるイメージでしょうか。
たしか若い頃はオペラ歌手を真剣に目指していたらしいですが、中音から高音への移動がとてもスムーズで、安心しながら聴いていられるバランス感覚を感じる歌声です。
もともとテクニックはあった歌手のようですが、ライオットの代表曲のひとつ「Thundersteel」を歌いあげる為に徹底的にハイトーンの発声を鍛えた、との事。
生来の幅広い声域に溺れる事なく、あくまで自前の努力で整った歌唱を奏でる事にこだわるところに、トニーのシンガーとしての威厳を感じます。
また、楽曲自体のサウンドも見事。
実は当時としては世界最新鋭の機材を使ってレコーディングしたそうですが、最新鋭過ぎて細かな操作の仕方が誰も解らず、想定よりも軽い音で仕上がってしまった事がトニーの口から語られています。 笑
とは言え、この手のメロディ重視のスピードメタル曲のサウンドとしては、充分すぎるほどパワーのある音。
重すぎず軽すぎずの心地よい音色で、輝く美旋律の曲をバックアップしてくれています。
このサウンドによってマーク・リアリ(Gt)の紡ぐ疾走リフ&ソロの迫力が更に倍加。
妥協の無いクオリティの高さが本作の魅力です。
アメリカ発なのに、ジャーマンにも通じるメロディックスピードメタルを聴いてみてください。
それでは。
エヴァネッセンス『Bring Me to Life』
今日はEvanescence『Bring Me to Life』について。
アルバム「Fallen」収録。
この曲はアメリカのHR/HMバンドEvanescenceが2003年に発表したオルタナティブ・メタルです。
随所に美しいストリングスが流れ、オルナタの中でもかなりゴシックに近いムードの曲なのですが、サウンドがとにかくへヴィ。
ベン・ムーディー(Gt)のギターをはじめ、バックのサウンドがかなりクッキリとしていて、ゴシックの儚さとHR/HMのパンチ力を併せ持った、隙の無い楽曲になっています。
そして、その重い演奏に負けないエイミー・リー(Vo.Pi)の歌声の圧力も凄い。
エイミーといえば後に、日本の「和楽器バンド」とコラボした事でも話題になりました。
その際に、スタジオでエイミーが何気なく適当に歌った鼻歌の時点で巧すぎて、ギターの町屋を驚かせた、というエピソードもありますが、女性メタルシンガーの中では世界的に見ても上位の歌唱力の持ち主としても有名。
学生時代にも合唱隊に所属していて、そこでもリーダーを努めていた経緯があったりと、歌唱を基礎からビッチリ磨きあげた秀才タイプの歌い手の模様。
そう聞くと確かに歌い方にどことなくクワイアっぽい壮大さを感じますよね。
その学生時代にも美術を学び、昼食の時間も1人で作品作りに没頭していて、親しい友人は1人か2人ぐらいしかいなかった程の、生粋の芸術好きの彼女。
この『Bring Me to Life』における彼女の歌唱は、その「表現」に対する情熱を感じられる歌声だと思います。
そのエイミーの歌唱の合間に、ところどころ入る男性コーラスのラップには賛否両論あるようですが、個人的には好き。
ゲスト出演のポール・メコイによるラップですが、全体的にメロディアスな作品の為、あえてメロディの無いラップを混ぜるのは、かえってバランスが取れている気がします。
メタル調のバンドで合いの手パートにラップを入れる、というと他ではリンキン・パークが有名。
ですが本作はそれに、上手い具合にひんやりとしたゴシック成分を織り混ぜて、ファンタジックにまとめたイメージ。
ゴシック系のオルナタにデスボイスでも無いラップで合いの手を入れる、という曲はこれまでありそうであまり無かったので、新鮮な情感を感じられる思います。
重いリフ、流麗な旋律、澄んだボーカルと男らしいラップの掛け合いがトリプルコンボで攻め混んでくる作品です。
エヴァネッセンスを一躍有名バンドにした代表曲を聴いてみてください。
それでは。