音の日

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Dir en Grey『VINUSHKA』

今日はDir en Grey『VINUSHKA』を聴いた感想を。


アルバム「UROBOROS」収録。

この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2008年に発表したエクスペリメンタル・メタルです。


タイトルの直訳は「罪」。

演奏時間9分を越える大作であり、非常に重い曲。

基本的に京(Vo)の書く歌詞は陰鬱な作風のものが多いのですが、本作の詞は一種のリアリティを孕んでいます。

歌詞はストーリー仕立てになっていて、解釈は人それぞれですが、おそらく一般的な解釈では

「社会の価値観に共感できず、異を唱えた主人公が、世間から異端者扱いされて、最後には死刑台で処刑される」

というもの。

「価値を見い出せず 首縊り十三階段」
「手を叩き馴れ合う人」

「女々しい思想に混ざり傷付ける」
「そんな君がなんだか悲しすぎる」

死刑台に立った主人公が辺りを見渡すと、「ようやくあいつが死刑にされるぞ!」と拍手する人々の姿が。

その中にはその空気に馴れ合う人―内心では「異端者だからと殺すのはやりすぎじゃ…」―のように主人公を思いやってくれる少数派の人もいる。

主人公はその想いにある程度は感謝しているのかもしれませんが、けれど周囲から憎まれるのを恐れて、結局は自分を助けようとまではしてくれないその人を

「死刑にされる自分も哀れかもしれないけれど、本当は言いたい事があるのに周囲に迎合して、結局は自分の死刑に賛同する態度を示すしかない、君のような人間も悲しすぎる」

と「そんな君」を哀れみながら死を迎える。


誰が正しくて、誰が間違ってるのかを一元的に決めるのは難しいという事。

死刑という「公的殺人」に対しても、喜ぶ人、悲しむ人、様々な受け取り方をする人がいるという事を、死刑囚の目線を通して、京が語りかけてくる内容になっています。

Dir en Greyの歌詞はどれも風刺的というか文学的で読み手の心に深く突き刺さる作品が多いのですが、特に日本人という、先進国では数少ない死刑制度を残す国に住む人々には、考えさせられるものがある詞ではないでしょうか。


詞もそうですが音楽的にも凄い。

Xjapanの「Rose of Pain」が好きな人ならハマる気がします。

原曲は薫(Gt)で、基本的にはヘヴィなロックバラードに近いと思いますが、中間では急展開。
HM、ハードコア的に疾走します。

それが終わると、途端に静寂のアルペジオとウィスパーボイスパート。

ラストの大サビでは京のスケールの大きな超高音の歌メロが披露され、最後にはまた疾走して幕を閉じる。

メロディの良さはそれぞれの好みによるでしょうが、「クオリティ」という観点では、Dir en Grey全楽曲の中でも最上級だと思います。

元ドリーム・シアターなどのメンバーとして知られるプログレッシブメタルドラマー、マイク・ポートノイは、本作が収録された「UROBOROS」を「お気に入りのアルバム」の1つにカウントしていますが、それはプログレ色が強い本作が収録されていることも理由の1つなのかもしれませんね。


激しくもあり、美しくもあり、重々しくもあり、ある意味完全に近い曲を聴いてみてください。



それでは。