Fear, and Loathing in Las Vegas『Just Awake』
今日はFear, and Loathing in Las Vegas『Just Awake』を聴いた感想を。
この曲は、日本のポストハードコアバンドFear, and Loathing in Las Vegas(フィアー・アンド・ロージング・イン・ラスベガス)が2012年にリリースしたオルタナティブメタルです。
潘めぐみ、伊瀬茉莉也、沢城みゆきが声優として出演している事でも知られるアニメ「HUNTER×HUNTER」のEDテーマとしても有名。
「こんな日常の憂鬱さえ ため息も出ずに無感情な僕ら」
「つぎはぎの心は不安定 洗い流された初期衝動を」
「呼び覚まして走り出せ」
「誰しにも在った、若い頃の情熱を忘れないで」というメッセージが込められた曲。
この曲で面白いのは、歌詞は良い意味で若々しい、熱血一直線とも言える内容なのに、曲調はむしろ老練したベテランアーティストのように緻密であるところ。
流麗な歌メロ+デスボイスという部分はDir en greyに近いところがありますが、彼らの場合、更にそこにジャズやニュー・ウェーブの要素が組み込まれています。
しかも強引に混ぜこんだような要素は一切なく、聴き手に「むしろどれ1つがかけてもいけない」と思わせてくれるまでのハイクオリティ。
Tomonori(Ds)の緩急のついたリズムパターンが、その楽曲のドラマ性を極限までひきたたせてくれています。
聴いた人達から「今の日本にこんなバンドがいるなんて」という声があがっているように、一度好きになれば必ずリスナーに「他では聴けない」と中毒性を発揮させてくれる曲です。
ちなみに本作は日本語versionと英語versionがあります。
日本語versionの方がメジャーではありますが、曲調自体が洋楽的なところがあるので、そこに共感した人には英語versionの方が合うかもしれません。
その時の気分によって聴きわけてみてください。
それでは。
クイーンズライク『Revolution Calling』
今日はQueensryche『Revolution Calling』について。
アルバム「Operation: Mindcrime 」収録。
この曲は、アメリカのプログレッシブメタルバンド
Queensrycheが1988年に発表したメロディックメタルです。
一見シンプルなハードロックなのようで、細かな工夫がかっこいい曲。
基盤がプログレバンドだけあってギターソロパートでの変拍子など、程よい変化球が、丁度良い回数で投じられています。
リフも、あまり激しく刻んでいるわけでも無いのに不思議とヘヴィ。
それがスコット・ロッケンフィールド (Ds)の激重のバスドラと絡むと、リスナーが思わず一緒にリズムを刻みたくなるような、ダンサブルなまでのハイテンションを感じさせてくれます。
このノリはアメリカ的な強さですよね。
この曲が良いのはテクニックやリズムだけじゃなく、旋律も細やかなところ。
イントロからハモるギターもさる事ながら、ジェフ・テイト(Vo)の上手すぎる歌声から奏でられるボーカルメロディは一聴の価値あり。
本作収録のアルバム「Operation: Mindcrime」自体このバンドの世界的人気のきっかけになった作品ですが、その素人にも玄人にもウケた原因の1つがこのキャッチーなメロディではないでしょうか。
テクニカルで美メロ。
ドリーム・シアターやラッシュのファンならハマるかもしれません。
ちなみにこの曲は、アルバムでは直前に収録されている楽曲である「Anarchy-X」と繋がるように収録されています。
ファンからは
「ジューダス・プリーストの「The Hellion」~「Electric Eye」の流れの凄さに匹敵する」
とまで評される見事な流れなので、興味のある人は是非アルバムで「Anarchy-X」から繋げるように聴いてみてください。
それでは。
大黒摩季『夏が来る』
今日は大黒摩季『夏が来る』について。
この曲は、日本のシンガー・ソングライター大黒摩季を1994年にリリースしたポップロックです。
音楽専門誌でも頻繁に取り沙汰されたように、歌詞がユニークな曲。
「"何が足りない どこが良くない" どんなに努力し続けても」
「選ばれるのは Ah 結局 何も出来ないお嬢様」
婚期を逃しかけている女性の気持ちがストレートに綴られています。
ネットニュースではある人のアラサー女友達が、この曲を聴いたら共感のあまり大声で叫んだ事が話題になっていましたが、「急いでいる」女性に突き刺さる歌詞のようです。
大黒摩季が自身の事を書いたのだとしたら、正直過ぎて面白いですよね。笑
とは言え決してふざけている歌詞ではなく
「物事いろいろ知ってしまうと 瞬発力が無くなるもので」
「運命の人だと思っても 経験が邪魔して素直になれない」
と、読み手が切実に考えさせられてしまうような歌詞も。
よく「小利口ならバカの方が良い」というように、半端に世の中を知ると、世の中障害だらけに見えてしまいがちで、つい何事にも二の脚を踏んでしまうようになるんですよね。
他人や社会に怯えながら、それでもあえて「私の夏はきっと来る」(夏の太陽のような明るい希望が来る?)と叫ぶ。
自分の未来を悲観しがちな全ての人を励ますメッセージソングではないでしょうか。
ちなみに楽曲面も秀逸で、編曲担当があのZARD、T-BOLAN、WANDSにも楽曲提供した事でも知られる名アレンジャー葉山たけし。
特にアップテンポなわけでもない演奏なのに、リスナーのテンションをぐんぐん挙げてくれるような楽曲進行。
割とナイーブな内容の歌詞には、この位エネルギッシュな曲調の方が釣り合いが取れると思います。
一聴で覚えられるほどシンプルでインパクトのあるメロディメイクはこの人の十八番。
今の日本では数少ないロックな女性歌手との最高の相性が楽しめる楽曲ではないでしょうか。
サマーソングらしく爽快で、それでいて程よく影が残る曲を聴いてみてください。
それでは。
小松未歩『願い事ひとつだけ』
今日は小松未歩『願い事ひとつだけ』を聴いた感想を。
この曲は日本のシンガー・ソングライター小松未歩が、1998年にリリースしたポップロックです。
高山みなみ、山口勝平、山崎和佳奈が声優として出演している事でも知られるアニメ「名探偵コナン」のEDテーマとしても有名。
小松未歩の楽曲の中でも、「謎」に次ぐ売り上げ枚数を誇る曲。
発売直後から、売り切れ店が続出したもよう。
メロディが良い事で知られる彼女の曲ですが、本作は構成も鮮やか。
イントロはミステリアスな雰囲気で聴き手を惹き込み、静寂の前半パートに。
そこから後半にかけてぐんぐん盛り上がっていき、曲に込められた感情がリスナーの心の深部に浸透していきます。
個性的なのは「盛り上がって」いくにも関わらず、明るくなるわけではなく、切なさを残したままなところ。
歌詞に
「思い出の歌が流れると 今でも切なさで胸が苦しくて 自由に夢を追いかけてる」
「あなたの噂を聞くことさえ無理ね」
とあるように、帰ってこない主人公(新一)を待ち続けているヒロイン(蘭)の「未だに終わらない寂しさ」を表現したのかもしれません。
基本的に「入りは暗くて、後半明るくなっていく」構成が多いJ-POP曲でこういう楽曲は珍しいのではないでしょうか。
情緒的な意味でも、音楽構成的な意味でも面白い曲だと思います。
ちなみに愛内里菜と三枝夕夏がコラボシングル「七つの海を渡る風のように」のカップリング曲として本作をカバーしています。
切なさの濃い小松未歩の声とは違う、情熱的な歌声によるバージョンもユニークなので、興味のある人は是非聴いてみてください。
それでは。
シン・リジィ『The Boys Are Back in Town』
今日はThin Lizzy『The Boys Are Back in Town』について。
アルバム「Jailbreak(邦題:脱獄)」収録曲。
この曲は、アイルランドのHR/HMバンドThin Lizzyが1976年に発表したロックチューンです。
タイトルの邦題は「ヤツらは町へ」。
「ベトナム戦争に出征していった不良達が地元の町に帰ってくる」という内容の曲です。
歌詞にはワルの要素もありますが、曲調自体は子供とおもちゃの関係性を描いた映画「トイ・ストーリー」にも使用された程ほのぼのしたもの。
一部のファンの間では「牧歌的」と評される事もあります。
この曲で好きなのは、フィル・ナイノット(Vo)のボーカルパート。
まるで語るように朗々とした歌声には、独特な説得力があります。
一般にHR/HM系統のバンドの曲は、他ジャンルでは珍しいレベルのハイトーンや声量を駆使するイメージ。
ですが、本作はそういう要素は欠片も見られず、まるで話しかけるような穏やかな声で歌い上げられています。
その中性的な歌い回しがギターのオシャレなコード進行とからみあい、唯一無二のグルーヴを演出。
「このバンドじゃなきゃ味わえない」と断言できるコンビネーションが味わえる曲です。
実はさりげにそのリフの動き自体も面白く、なんというか「空白」だらけ。
「間」とも言えますが、これが大音量で聴くと不思議とかっこ良さが4割増し。
もちろんどんなロックも小さい音で聴くより大音量の方が良いのですが、このリフはそういう次元ではない位、ボリュームの影響を受ける曲です。
音色自体も澄んでいて、トータルではやんちゃなロックというより、おおらかな大人のロック。
激しさよりは、軽快なのにどことなく漂う透明感で聴き手を惹き付ける楽曲ではないでしょうか。
ちなみにボン・ジョヴィがオムニバス・アルバム「Stairway to Heaven / Highway to Hell」において、
カーディガンズがシングル「Hey! Get out of My Way」のカップリング曲として本作をカバーしています。
ロック界の超ビッグバンド達さえ、思わず自分でプレイしたくなってしまう曲を聴いてみてください。
それでは。
プリンセス・プリンセス『世界で一番熱い夏』
今日はプリンセス・プリンセス『世界で一番熱い夏』について。
この曲は日本のガールズロックバンド、プリンセス・プリンセスが1987年にリリースしたロックチューンです。
「世界どっきりウォッチ」EDテーマとしても有名。
若々しさが眩しい曲。
本作は様々なバージョンが存在する楽曲で、例えば平成に入ってからアレンジされたものは、アカペラでのサビがアタマに入ってから演奏に入る、という流れ。
しかし、いわゆるこの「オリジナルバージョン」は、あえて複雑な表現は省かれていて、だからこそズッシリとした力強いパワーがみなぎる構造になっています。
特にBメロからサビに突入するパート。
岸谷香(Vo)の歌うキーが跳ね上がる部分はロック魂が全開。
声量は豊かなのですが、声質がどこか丸みを帯びていて、「かっこいいのに女らしい」な魅力が思い切り発揮されています。
セスナ機の飛行音が組み込まれていたりと遊び心も感じられて、「これぞサマーソング」と思える爽快感が味わえる曲です。
「世界で いちばん 大きな太陽」
「世界で いちばん 熱く光る夏」
「世界で いちばん 愛してる」
直球過ぎるぐらいストレートな歌詞も、この声で歌われると心地よい甘酸っぱささえ感じる事ができます。
ちなみに二階堂和美 はアルバム「ニカセトラ」で
人気声優の茅原実里 は「Minori Chihara Live 2009 "SUMMER CAMP"」でこの曲をカバーしています。
どちらも本作特有の爽やかさは保ったまま、独自のテイストを組み込んだ作品になっているので、興味のある人は是非聴いてみてください。
それでは。
Dir en grey『詩踏み』
今日はDir en grey『詩踏み』を聴いた感想を。
この曲は、日本のロックバンドDir en greyが2016年にリリースしたロックチューンです。
「ぺちゃくちゃ喋るゴミ共が」
「鎖一つ捥げない飼い犬」
攻撃的過ぎるメッセージが印象的な本作は、Dir en greyの変化を感じさてくれる曲。
出だしからとにかく京(Vo)が叫びまくります。
入りはディルの名物グロウルボイスが連発されますが、そこから「Fall」!と金切シャウトが炸裂。
今までの京のシャウトは、激しくも陰影があるものでしたが、ここでのシャウトは熱いというか伝統的なHR/HMのもののようにストレート。
「ディルの京」としては新しい声の出し方ではないでしょうか。
サビでの展開は従来の彼らと同じ。
荒々しい旋律から、流麗なメロディに様変わりします。
が、そのメロディも今までよりキャッチー。
まだ派手なメイクで、激しい曲を演奏をしていた路線の頃の初期Lluna Seaを彷彿とさせます。
良い意味でまさかこうした曲調の楽曲を、Dir en greyの演奏で聴けるとは思いませんでした。
ちなみにタイトルの『詩踏み』の意は「踏み絵」の音楽盤のよう。
「私は一人 孤独な死だけだ」
「たやすく裏切られる」
京本人には、自身の歌う歌に対して
「良いと思って音源を聴いたりライブに来てくれている人でも、次の日にはすぐ捨てられるかもしれないし、踏まれるような存在だろう」
「例え良いと思っていても、結局そのときだけの感情だろう」
という気持ちがあるようで、その事を歌詞のテーマにしたそうです。
「幼い頃から「他人は裏切る」という思いが、何故かずっとあった。」
と語る彼ですが、この辺りはブレずに徹底。
音楽的には変わっても詩人としては変わる気はない、という事なのかもしれませんね。
刺々しくも鮮やか。「彼らは変わった」とも「変わってない」とも受け取れる楽曲を聴いてみてください。
それでは。