音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

小野正利『You're the Only…』

今日は小野正利『You're the Only…』について。


この曲は日本の男性歌手、小野正利が1992年にリリースしたポップバラードです。

吉田栄作南野陽子石田ゆり子が出演した事でも知られるドラマ「君のためにできること」の主題歌としても有名。


「4オクターヴ超の声域」の持ち主として知られる小野正利自身の歌声が際立った曲。

本作自体の最高音はhiBなので一見すると普通のキーなのですが、それを「連発」なんですよね。

一般のプロのボーカルのミドルボイス含む最高音、つまりは「限界のキー」であるhiBを、軽々と出している所は驚異的。


現在でもモノマネ番組などで「Xjapanのモノマネをしている人」としても認知されています。

が、そもそもXjapanの曲は、3オクターヴ近い声域を持つ海外HR/HMボーカリストでもカバーする際キーを4、5下げるか、あるいはオク下で歌う事が多いんですよね。

それを原曲キーで本家に劣らぬ迫力で歌いこなしているのですから、彼がハイトーンボーカリストとして稀有な才能を持っている事が伝わってきます。


楽曲自体も秀逸。

静かなピアノのイントロから一転、サビでの爆発的な勢いなど、対比の効いた鮮やかな展開です。

ミリオンを達成し、あっさりとオリコン1位を獲得。
しかもその後ベスト10以内に約3ヶ月入り続ける、という快挙を達成。

名実共に「名曲」に相応しいバラードです。


ちなみに伴都美子アルバム「VOICE 2〜cover lovers rock〜」で

島谷ひとみがアルバム「男歌II〜20世紀ノスタルジア〜」で本作をカバーしています。

90年代の名作が現代的な音色によってアレンジされ、また新しい魅力を纏っています。

興味のある人は聴いてみてください。



それでは。





EGOIST『KABANERI OF THE IRON FORTRESS』

今日はEGOIST『KABANERI OF THE IRON FORTRESS(カバネリ オブ ジ アイアン フォートレス)』を聴いた感想を。


この曲は、日本の音楽グループEGOISTが2016年にリリースしたシンフォニック・ロックです。

なんとビルボードチャートの「Hot Animation」部門において1位を獲得した曲。

また、畠中祐、千本木彩花、内田真礼が声優として出演している事でも知られるアニメ「甲鉄城のカバネリ」のOPテーマとしても有名。


「ここまでするか」と言う程シンフォニック色の濃い雄大な曲。

作詞・作曲は「Supercell」メンバーとしても有名なryo。


この曲で好きなのは、とてと大きな抑揚。

ボーカルのchellyがインタビューでこの曲の聴きどころを尋ねられた際に

「サビですね。サビの中でもセクションがいっぱいあって、ころころ変わるんです。変わるということは、それだけ伝えたいことがあるということだと思います。」

と答えているように、まるでスロットの柄のように多彩な音と歌声の強弱で、聴き手を翻弄してくれます。

極端なまでの静と動がこの曲の持ち味ではないでしょうか。


極端な静と動とは言っても、メロディ自体はむしろ聴きやすいもの。

ryoが楽曲を手掛けるSupercellとも、あるいは既存のエゴイストの楽曲と比べても、旋律はかなりキャッチーです。

個性と親しみやすさが共存した、非常にアーティスティックな作品だと思います。

chellyいわく

「気軽に聴ける楽曲ではないと思います。だからこそ、気持ちが落ち込んでしまったときなどに聴いていただいたら、ふたたび立ち上がれる力を与えられるのではないかな、と感じています。」


ファンタジックの中にも、活力に溢れた「熱さ」のある曲を聴いてみてください。



それでは。






キッス『Detroit Rock City』

今日はKISS『Detroit Rock City』について。


アルバム「Destroyer(邦題:地獄の軍団)」収録。

この曲は、アメリカのHR/HMバンドkISSが1976年に発表したハードロックです。


メンバーのポール・スタンレー(gt)と、ピンク・フロイドやロッド・スチュワードと共演した事でと知られる大物プロデューサー、ボブ・エズリンとの超豪華タッグによって生み出されたロック。

叙情的過ぎるギターソロが持ち味の曲。

必ずしも技巧的では無いソロですが、メロディを重視した構成で、ツインでのハモりでじわじわと立ち上がってくる流れは、思わず聴き手に全神経を耳に集中させてしまう程の艶を備えています。

まるでこのフレーズだけで「kISS」を表現しているよう。

あんな格好した人達が、こんな切ない旋律を奏でたらそりゃ話題にもなりますよね。笑


また、メロディだけじゃなくリズムもニクい。

ピーター・クリスのシャッフル・ビートが曲の進行をグイグイと引っ張ってくれています。

ハードロック曲としてはリフの音数は少ない方ですが、その分ドラムの粒が目立っている印象。

意図してそう作っているのか素なのか定かではありませんが、ロックファンからkISSへの「簡単なのにかっこいい曲作るバンド」という評価は、こういう所か生まれているんだろうな、と思います。

「おいお前ら 体を動かせ」

「座んな 椅子になんか座ってんなよ」

歌詞の通り、聴いていると思わず夜にドライブに出掛けたくなる曲です。


ちなみに

ディー・スナイダー(アルバム「Spin the Bottle」収録)と

レーサーX (アルバム「Racer X - Live Extreme Volume II」収録)

など名だたるHR/HMバンドからもカバーされています。

メチャクチャ刺激的なアレンジになっているので、興味のある人は聴いてみて下さい。



それでは。





長渕剛『乾杯』

今日は長渕剛『乾杯』について。


この曲は、日本のシンガー・ソングライター長渕剛が1980年にリリースしたフォークソングです。


「とんぼ」と並ぶ彼の代表曲。

いわゆる「応援ソング」の括りの中では、日本では最も広く長く愛されている楽曲の1つではないでしょうか。

本作が多くの人から愛されている理由は、何よりもその熱く優しい詞。

「沈む夕陽を いくつ数えたろう」

「 乾杯!今君は人生の 大きな 大きな 舞台に立ち」
「 遥か長い道のりを 歩き始めた」

「君に幸せあれ!」

シンプルなのですが、だからこそまるで、長年連れ添った友人がそばで語りかけてくれているような「身近感」を感じます。

というもの実は、元々地元の友達が結婚すると聞いた長渕が、友達への祝福のために書いた曲。

実際に身近の人に向けて生み出された歌なんですね。

歌い方も、今でこそ荒々しいロックシンガー的な歌唱法で歌う彼ですが、この頃はマイルドな正統派フォークシンガーの歌い方。

現在のファンから見れば賛否あるのかもしれませんが、この曲がメジャーでヒットしたのはこの真っ直ぐな歌唱の方が効果的だったのかもしれません。


個人的にこの曲が良いと思うのは、その影響力。

「フォーク」というと現在ではややマイナーになりつつあるジャンルでなりつつあるジャンルですが、「この曲を聴いてフォークを知った」という若者がいまだに一定層いるんですよね。

アーティストの評価軸に、どれだけ売れたか、だけじゃなく「新しい世代に何を残せたか」というのがあると思うんですけど、この『乾杯』は間違いなく「残した」曲。

結婚した友人だけじゃなく、業界規模で彼の歌声は響いたわけですよね。

曲調は静かなようで、もの凄くスケールが大きな歌だと思います。


結婚に限らず、進学、入社、あらゆる「始まり」に似合う曲を聴いてみてください。



それでは。





KICK THE CAN CREW『アンバランス』

今日はKICK THE CAN CREW「アンバランス」を聴いた感想を。

この曲は、日本のヒップホップグループKICK THE CAN CREWが2002年にリリースしたヒップホップです。


歌詞に、かっこいい「ゆるさ」のある曲。

内容は
「大人になれば誰もが無難を求める。その中でいかに自分のペースを楽しむか」
を語ったもの。

「しのごの言いたがんじゃねぇ 知ってるさオレらはピーターパンじゃねぇ」
「 ジタバタしても時は流れる 青い春から解き放たれる」

「階段を上がんなら そう 今じゃない 今はアンバランス」

焦らず少しずつ進もう、とエールを贈るような詞。

現代人は、世の中の流れに乗り遅れないように、と常に急ぎがち。

その中で

「結論を急がず、まずは出来る事から」

と言える、一見ナンパなようで、人に流されない素朴な強さの込められたメッセージだと思います。


バックの伴奏も大きな抑揚は無く、まるで緩やかに流れるような演奏。

「自分は何にも乱されない」という芯のある想いが伝わってくるようですよね。

以前日本のラップ、ヒップホップは海外から「アメリカのラップ、ヒップホップは攻撃性が魅力だが、日本のラップ、ヒップホップには癒しがある」という趣旨の評価を受けたことがありますが、この作品はそれを絵にかいたような楽曲。

またヒップホップというと世間の一部からは反感を買いがちで、理由は「メロディが無いから」である事が多いですが、この曲にはバックで、聴き手をふんわりと包み込むような柔らかな旋律が流れています。

むしろヒップホップを嫌う人にこそ聴いてほしい綺麗さがある曲です。


「旅人」のような、自由な曲を聴いてみてください。



それでは。






ストラトヴァリウス『Black Diamond』

今日はStratovarius『Black Diamond』について。


アルバム「Visions」収録。

この曲は、フィンランドのパワーメタルバンドStratovariusが1996年に発表したネオクラシカルメタルです。


激しさの中にある叙情性が綺麗な曲。

ティモ・コティペルト(Vo)の歌うボーカルメロディ、特にサビメロが力強くも哀愁を帯びており、「パワフルなのに脆い」という神秘的な美しさを放っています。

日本のネオクラシカルメタルファンの中にはたまに、海外のネオクラ系バンドを日本のそれと比較した時に、「ギターやシンセの動きはかっこいいのに、歌メロが味気ないバンドが多い」という意見を言う人もいます。

日本人は歌謡曲文化があるせいか、歌メロに厳しい面があるのかも知れません。

けれどストラトヴァリウスの楽曲は、ボーカルのメロディも魅力的な曲が多いんですよね。

特にこの曲のような「うっすらと漂う切なさ」を感じさせるメロディは、日本人にこそ響くものがあるでしょうか。

ちなみにストラトヴァリウス側もそれを解っているのか、この曲のシングル版の発売は日本のみ。

こうして「リスナー側が自分達に何を求めているのか」を冷静に計算できるところも、彼らの人気の理由の1つなのかも知れませんね。


作曲者であるティモ・トルキ(Gt)のギターとイェンス・ヨハンソン(Key)のキーボードのバトルは、本作のクライマックス。

「ギター&キーボードバトル」はネオクラシカルメタルバンドの名物ですが、その代表格である彼らのそれは本当に見事。

疾走しまくっているのに高級感は損なわず、クラシカルだけに「威風堂々」とした威厳を纏って聴き手の耳に迫ってきます。

嫌味の無い高嶺の花感のあるメタルです。


異次元的な美を持つ曲を聴いてみてください。



それでは。






アリス『チャンピオン』

今日はアリス『チャンピオン』について。


この曲は、日本のフォーク・グループアリスが1978年にリリースしたフォーク・ロックソングです。

オリコンチャート1位獲得曲。

またアニメ 「そらのおとしもの」の第11話エンディングテーマとして、保志総一朗、トモ子など声優陣がキャラクター名義でカバーした曲としても知られています。


アリス史上最大のヒット曲。

作詞・作曲 谷村新司で、一見男らしい文体の歌詞ですが、内容は彼らしい、しとやかな感情を孕んだもの。

「ロッカールームの ベンチで君は きれたくちびるで そっとつぶやいた」

「帰れるんだ これでただの男に 帰れるんだ」
 
「これで帰れるんだ」

物語形式の歌詞ですが、内容的には

老いたチャンピオンボクサーが、若き挑戦者からの防衛戦に挑まれ闘うが、内心はチャンピオンの重圧、ファンからの期待の念で、押しつぶされそうになっている。」

「結果的には敗北してしまうが、そんなチャンピオンに「もう闘わなくていい。あなたは充分夢を見せてくれた。」と労りの想いを呟く、あるファンの心境」

を表現したもの。


普段「周囲の期待に応えなきゃ、がんばらなきゃ。」と自分を責めている人に響く歌詞ではないでしょうか。

ちなみに詞のモデルは元プロボクサーのカシアス内藤とのこと。

彼自身もとても強いボクサーでしたが、非常に優しくデリケートな性格だった為、途中から精神的に参ってしまい、後半負け試合が続くようになりましたが、それでも自分の限界まで戦い続けたアスリート。

その懸命な生き様が、谷村新司の心を打ち、生み出されたのが本作のようです。

精一杯闘った人に対する愛と敬意に満ちた詞だと思います。


曲調も、穏やかなフォークソングとイメージのあるアリスとはギャップのあるロック調。

谷村新司のドスの効いた声が合いすぎな位マッチしていて“かっこいいクドさ”を演出しています。

このストレートさは昭和のロックの美点ですよね。

威厳がありながら熱い、熱いのに優しい「アリス流ロック」の名が相応しい音楽ではないでしょうか。


「もう、がんばらなくていい」と応援してくれる曲を聴いてみてください。



それでは。