Dir en Grey『朔‐saku‐』
今日はDir en Grey『朔‐saku‐』を聴いた感想を。
この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2004年にリリースしたオルタナティブメタルです。
『朔』の意味は「始まり」。
原曲者は薫(Gt)であり、タイトルをつけたのも薫とのこと。
非常に抑揚の激しい曲。
入りの時点で凄まじいシャウト。
聴き手に「これから凶悪な曲が始まる」と伝えているかのような叫びです。
Aメロは歌声が低音ながら、リズムはややラップ調で歌われています。
この手のリズムは一歩間違うとただ軽薄なだけのノリになりがちですが、京(Vo)に発声に艶がある為、曲のダークな雰囲気は損ねていません。
Bメロに入ると一転、出だしと同じように、スクリーモのようなシャウトの連続。
まるで土石流が流れてくるような、ヘヴィな音が押し寄せてきます。
この曲の中でも、特に歌詞カードを見ないと何を言っているのか解らないパートです。笑
歌メロの真骨頂はサビ。
さっきまでのHR/HMのリズムが急激に変化し、ほとんどバラード曲と言えるほど滑らかなメロディに変貌。
京の発声もナチュラルで滑らかに。
もはや違うジャンルの曲を演奏しているかのようです。
メロディの美しさは、Dir en Greyの曲の中でも屈指ではないでしょうか。
大サビでの超高温のファルセットは見事です。
歌詞もさっきまで英詞だったのが、日本詞に。
他のパートとは、伝えたい感情が特別に違うということかもしれません。
一見すると洋楽のような曲なのに、コード進行は伝統的な邦楽のものをなぞっているのもDir en Greyらしさを感じます。
歌詞は、おそらくですが戦争、反戦詞にあたるもの。
「何一つも救えない人達には 両手の中」
「灰と涙と寡黙を」
虐殺される人々を救わない為政者達に、あえて黙りこんだまま、焼き殺された人々の遺体と悲しみを突きつけてやりたい、という想い。
「 赤日に問うは 寡黙と…「 」」
別個の詩集によれば、「」の中には「平和」と入っています。
つまりは第二次世界大戦中の、当時の日本政府に対する「いつになったら平和が訪れるの?」という民衆の意思を、代弁したメッセージでしょうか。
こういう生々しく重い歌詞を、あえてアップテンポの激しい曲に乗せるセンスも「京」という感じがします。
ちなみにPVは、団地に暮らす家族を題材にした少年犯罪がテーマになっており、そのあまりの残酷さから、PV集「AVERAGE FURY」発売の際には内容を一部制限して出さなければならなくなった程。
ただし2006年11月に、アメリカの大手音楽専門チャンネルMTVの人気番組「ヘッドバンガーズ・ボール」で、2005年に新設された視聴者が選定するPV音楽賞(HEADBANGERS BALL PV 2006)に、この「朔-saku-」のビデオクリップが日本のロックバンドの作品として初めて見事グランプリを獲得する、という偉業を達成しました。
京いわく「PVの内容と曲の内容は、あまり関係ない」とのことですが、一つの映像作品としてはとても見ごたえのあるものに仕上がっていると思います。
この作品のノーカットバージョンは、フリーウィルからインディーズ流通で直接発売されたPV集「AVERAGE PSYCHO」で見ることが出来ますので、グロ耐性がある人にはオススメです。
それでは。