Mr.Children『innocent world』
今日はMr.Children『innocent world』について。
この曲は、日本のロックバンドMr.Childrenが1994年にリリースしたポップバラードです。
いわゆる「風刺」的な歌詞が面白い曲。
世間的にはMr.Childrenと言えば、切ないラブソングのイメージ。
けれどこの曲は、どちらかと言うといわゆる「現代人」(と言っても20年以上前の曲ですが)の心の有り様をリアルに表現したような内容になっています。
「近頃じゃ夕食の 話題でさえ仕事に 汚染(よご)されていて」
世間の、特に日本人の悩みをストレートに反映したような詞。
仕事が好きな人なら食事しながら仕事の話をしていても楽しいのかもしれません。
けれど日本人は、「今の職場は好きですか?」というアンケートで「いいえ」と答えた人が世界でもだトップクラスだったんですよね。
作詞者の桜井和寿(Vo)だって、音楽を愛していても、いつでも好きな時に好きな様に歌えるわけでもない。
食事の場で、やりたくない仕事に対する愚痴をこぼす事を「話題を仕事に汚される」と綴った事は冷厳ですらあります。
この国ならでは憂鬱を鋭利に表現した詞ではないでしょうか。
けれど失望だけでも終わりません。
「また何処かで 会えるといいな その時は笑って 虹の彼方へ放つのさ イノセント ワールド」
イノセントワールドの意訳は「無垢な世界」。
「いつか必ず純粋さを取り戻してやるんだ」と叫ぶ事で、自分自身を鼓舞するような詞。
元々この曲自体、プロデューサーの小林武史から「絶望の先に希望を見つけるんだ」という指導を受けながら生み出されたもの。
この曲の製作直前まで、桜井和寿(Vo)は精神的に強く疲弊していたとの事。
けれどこの作品で、溜め込んだ本音をぶちまけた事で心が軽くなったらしく
「この曲の詞を書き出したことが、今まで鍵をしていた心のドアを開いてくれた」
語っています。
歌の理想形が、作り手と聴き手「両方が満足できる事」だとするならば、限りなくアートの完成形に近い作品なのかもしれませんね。
「Mr.Childrenの代表曲」の地位に相応しい曲ではないでしょうか。
歌い手とリスナー、両方にセラピーのようなメッセージを与えてくれる曲を聴いてみてください。
それでは。
Kalafina『One Light』
今日はKalafina『One Light』を聴いた感想を。
この曲は日本のボーカルユニットKalafinaが2015年にリリースしたポップロックです。
小林裕介、細谷佳正、浪川大輔、坂本真綾が声優として出演している事でも知られるアニメ「アルスラーン戦記」のEDテーマとしても有名。
一曲の中に混在する多彩な展開が素晴らしい曲。
基盤はアップテンポのロック。
元々タイアップ先の「アルスラーン戦記」のアニメ製作側から「アッパーチューンな楽曲を」という要望を受けて生み出された曲だそうですが、スロー~ミドルテンポ主体の楽曲が大半だったKalafina曲の中では最も激しい曲ではないでしょうか。
Aメロは、陽気なリズム。一般的なアニメソングのビートです。
古参のファンがここだけ聴くと「これ本当にKalafinaの曲?」と感じるかもしれません。
かっこいいんですけどこれまでのKalafinaのイメージとはタイプが違うリズムなんですよね。
しかしBメロで急変。
なにかに祈るような、叙情的で上品なバラード調に変貌します。
これはむしろ、「The・Kalafina」。
個人的にはこの部分が1番好きです。
そしてサビ。
AメロのアグレッシブなリズムにBメロの流麗なメロディをのせたような流れ。
「アルスラーン戦記」は大陸を舞台にした物語ですが、その主人公の戦いの舞台である荒々しくも雄大な荒野をそのまま音楽にしたようなイメージではないでしょうか。
うっすらとメロスピ感さえ漂う勢いが良いです。
まるでAメロ、Bメロ、サビとそれぞれが独立した個別の曲のようですが、それを通して聴く事で、まるで音の世界を旅しているような感覚さえ味わう事ができます。
作詞・作曲者は「Fate/Zero」、「ソードアート・オンライン」にも楽曲提供した事のある梶浦 由記ですが、彼女は本当に壮大な世界を舞台にした作品に合う曲を作るのが上手いですよね。
名作アニメの製作側と名音楽プロデューサー、そして実力派ボーカルユニットKalafina。
優秀なアーティスト達が協力しあって生み出されたハイクオリティな楽曲だと思います。
「遠くへ行けると信じた」
「僕らの名も無き心のままに」
抑揚に富み、曲にも詞にも強すぎる情熱の込められた歌を是非聴いてみてください。
それでは。
アイアン・メイデン『Hallowed Be Thy Name』
今日はIron Maiden『Hallowed Be Thy Name(邦題:審判の日)』について。
アルバム「The Number Of The Beast(魔力の刻印)」収録。
この曲は、イングランドのHR/HMバンドIron Maidenが1982年に発表したプログレッシブ・メタルです。
「シャバでは全てが裏目に出てしまった 一体何処で間違えたんだろう」
「今更後悔してみても、膨れ上がる恐怖はどうにもできない」
刑の執行を待つ死刑囚の心境を描いた本作は、アイアン・メイデンの代表曲の1つです。
非常にドラマティックな曲。
まるで囚人の嘆きを表現したような薄暗いメロディが、まるでストリートバスケのドリブルのように変幻自在なビートに乗って、聴き手の胸に迫ってきます。
この曲を聴いて連想するのは、日本のDir en greyの
『VINUSHKA』。
死刑囚の心情をテーマにした、という部分もそうですが、この起伏に富んだ展開、豪快なようでデリケートなコード進行は、それにのる祈るような痛切な歌メロを極限まで引き立てていると思います。
後の名作「Fear Of The Dark」の起承転結の激しい展開に通じる世界観が、既に片鱗を覗かせているのではないでしょうか。
また、ブルース・ディッキンソン (Vo)のボーカルスキルが楽しめる曲でもあります。
倍音の効いたナチュラルな高音、滑らかな強弱、そして前半の歌詞「The sands of time for me are running low~」部分からテンポチェンジするところのロングトーン。
前任のボーカリストであるポール・ディアノが偉大な個性派ボーカリストだった上に、新人で固定ファンもいなく、しかも本作収録のアルバムがデビュー一作目だったブルースには、元々強烈な逆風が吹いていました。
しかしアルバムリリース後、古参のファンの間で「前のメイデンとは違った良さがある」と好意的に受け取られ、見事にメイデンの新ボーカルとして認められていきます。
いわば「歌声で納得させた」わけですね。
メタルファンの間でも「歌唱力のあるメタルシンガーといえば」の議論で必ず名前が出る彼ですが、それと後人への影響力、世界的知名度など、歌い手としての総合力でも、間違いないなく「偉人」の領域に達した歌手だと思います。
死生観を改めさせられそうな歌詞、40年近く前の曲とは思えないクオリティ、そしてメンバー自身の演奏力。
その全てが壮大な化学反応を起こして生まれた楽曲です。
アイアン・メイデンのブランド「ドラマティックなメタル」の原点と呼ばれるヘヴィメタルを聴いてみてください。
それでは。
Whiteberry 『夏祭り』
今日はWhiteberry 『夏祭り』について。
この曲は、日本のロックバンドWhiteberry が2000年にリリースしたポップロックです。
伊藤雄城、林一樹、熊谷真実が出演した事でも有名なドラマ「ふしぎな話」の主題歌。
またアニメ「ReLIFE」のEDテーマとしても知られています。
元々「JITTERIN'JINN」オリジナルのカバー曲ですが、アレンジが良すぎて売り上げが本家を越えて、最終的にはWhiteberry自身最大のセールスを記録した曲。
今では日本ガールズバンドのサマーソングの代表格ですよね。
(確かZONEの「secret base 〜君がくれたもの〜」は「夏の“終わり”」)
タイトル通りのやんちゃな曲調が魅力的。
イントロはボーカルとピアノだけで静穏にスタートしますが、そこからドカンッとバンド演奏が始まります。
ファンの間では「それこそ夏祭りの花火のよう」と形容される事も。
そういう表現技法的なところも聴きどころですが、この曲で印象深いのは、前田由紀(Vo)の歌声。
まだ当時中学生(14歳)という事もあって、声に少女らしさが残り、これでもかと言うほど『夏祭り』感を的確に表現しています。
歌唱力も年齢の割には高いと思うのですが、それ以上に楽曲と合っているのは声質。
多分どんなに歌が上手い歌手でも、このバージョンの『夏祭り』で彼女の代わりは務まらない、と思わせてくれる、青春時代のお祭りをストレートに連想させてくれる歌声ではないでしょうか。
「無邪気な横顔がとても可愛いくて 君は好きな綿菓子買って ご機嫌だけど」
「少し向こうに 友だち見つけて 離れて歩いた」
素朴で可愛らしいんだけど、どこか影が残る歌詞も味があります。
一見愛嬌がある歌詞ですが、「空に消えてった 打ち合あげ花火」と比喩されているように、
「花火のように輝かしいけれど、過去の、長くは続かなかった幸福」
という、実は少しを甘酸っぱい寂しさを孕んだような想いをテーマにした歌なんですよね。
それをふまえた上でこの明るい曲調、ピュアな歌声を聴くと、この曲の聴こえ方が変わってきます。
きっと本質的には寂しさを抑えながら「それでも良い思い出だった」と語っているような、切なく優しい歌なのではないでしょうか。
この曲が年代を問わず人気なのは、若い人が聴けばリアルタイムの共鳴が、中高年が聴けば「自分にもこんな時代があったなぁ」と忘れかけていた大事な感覚を思い出させてくれるからかもしれませんね。
「花火のように一瞬だけど、どれだけ年を重ねても思い出してしまう綺麗な思い出」の尊さを再認識させてくれる曲だと思います。
ちなみに1番有名なのは本作にしても
さくらまやがカバーアルバム「まや☆カラ カラオケクイーンさくらまやと歌おう!!」で、
May J. カバーアルバム「Summer Ballad Covers」でカバーしていたり、と数多くのバージョンがある曲でもあります。
皆、独自の解釈で『夏祭り』の世界を表現しているので、自分と合った『夏祭り』を探してみるの面白いのではないでしょうか。
それでは。
MYTH & ROID『STYX HELIX』
今日はMYTH & ROID『STYX HELIX』を聴いた感想を。
この曲は、日本の音楽ユニットMYTH & ROIDが2016年にリリースしたポップロックです。
小林裕介、高橋李依、水瀬いのりが声優として出演している事でも知られるアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」のEDテーマとしても有名。
ビートは明るいダンスミュージック系。なのに強い哀しみが漂う曲。
作詞・作曲者はMYTH & ROIDですが、その内の1人は「けいおん!」に楽曲提供した事でも知られるTom-H@ck(Gt)。
入りは水滴が落ちるようなピアノの音から入りますが、そこから一気に力強いミドルテンポのビートが始まります。
そのリズムと切ないメロディが緻密に混ざり合い、それこそ「異世界」的な神秘性を演出。
Mayu(Vo)の透明感のあるウィスバーボイスがメロディの哀愁を最大限に高めています。
曲もそうですが、歌詞も突き刺さる内容。
「あの日々には戻れない 時は強く 哀しく強く」
「ただただ進んでゆくだけ ”Restart“」
「振り返らない そんな強さを 誰も皆演じている」
アニメの内容が
「普通の人間である主人公が、愛する人を守る為に戦い、何度も何度も殺されて、その度魔法で過去に戻り、再び戦う」
という壮絶な内容な為か、「苦しくても前に進むしかない」という、痛みの込められた前向きさを表現したものになっています。
詞の内容はアニメに沿ったものでも、「辛さは繰り返すと知りながら生きる」というのは、実際の世界で生きる私達にも通じる事ですよね。
「This endless dead end(この終わらない行止りの中でも)」
「君を砕くこの悲しみが いつか終わりますように」
この切望が本作の本質を表していると思います。
アニメの原作のライトノベルも重厚な内容で大ヒットした作品ですが、MYTH & ROIDはそれに相応しい哲学的なまでのメッセージが込められた楽曲を創造したのではないでしょうか。
儚いようでとても強い想いが込められた歌を聴いてみてください。
それでは。
ジューダス・プリースト『The Hellion/Electric Eye』
今日はJudas Priest『The Hellion/Electric Eye』について。
アルバム「Screaming for Vengeance(邦題:復讐の叫び)」収録。
この曲は、イギリスのHR/HMバンドJudas Priestが1982年に発表した正統派ヘヴィメタルです。
本来は「The Hellion」(インスト曲)と「Electric Eye」で別個の曲なのですが、繋いで聴くのがこの曲のファンの間では慣例なので、あえて並べて表記します。笑
「Painkiller」と対を成す、彼らの代表曲。
ロブ・ハルフォード(Vo)、K. K. ダウニング(Gt)、グレン・ティプトン(Gt)による共作ですが、組曲形式で、2曲合わせても4分そこそこの演奏時間にも関わらず、大作映画にも匹敵する程のドラマが詰め込まれてるのが特徴的。
最大の聴きどころは、その2曲の「繋ぎ目」部分。
いかにも「これから凄いものが来るぞ」と思わせてくれる曲調の「The Hellion」から、「Electric Eye」のドライブ感ありまくりのイントロになだれ込む様は荘厳ですらあります。
この「インスト曲→アルバムメイン曲」という流れは現在ロック界ではよくある展開ですが、それを一気に王道展開として世に広めたのが、おそらく本作。
影響力、ロックに対する貢献度という観点から見た時に、とてつもない次元のスケールに達した曲ではないでしょうか。
もちろん純粋に楽曲として聴いてもかっこいい。
「Electric Eye」は一見シンプルなHR/HMのようですが、ツインギターでのギターソロ、デイヴ・ホーランド(Ds)の後ノリのビートなど、フックに溢れる工夫が組み込まれています。
また、活動前期ならではのロブの中音域での歌唱も聴きどころ。
一般のロックボーカルと比較すれば普通のキーなのですが、そのキーでさえ後期のロブと比べると相当低く聴こえてしまうから面白い。
ロブの中音域は、めちゃめちゃ声量がある、という感じではないんですけど滑らかさと艶があり、不思議な聴き心地の良さを感じさせてくれます。
絶叫超ハイトーンと、艶やかな中音域を場面ごとに使い分けられるのが彼のオリジナリティではないでしょうか。
あのハロウィン(シングル「The Time of the Oath」)や、アズ・アイ・レイ・ダイング(アルバム「Decas」)でさえカバーした、大御所から尊敬される超大御所バンドの代表曲を聴いてみてください。
それでは。
globe『DEPARTURES』
今日はglobe『DEPARTURES』について。
この曲は、日本の音楽ユニットglobeが1996年にリリースしたポップロックです。
JR東日本「JR Ski Ski」CMソング、また「コカ・コーラ」のキャンペーンのウィンターソングとしても知られています。
作詞・作曲ともに小室哲哉で、2ミリオン達成曲。
元々90年代、Mr.Children、サザンオールスターズなどと張り合う程の人気を誇っていたglobe。
そのglobeの中でも史上最多の売り上げ枚数を誇る曲です。
当時のチャートでも1位があまりに長期間続いた為、テレビを見ながら「まだ1位なんだ」と呟く視聴者もいたもよう。
とてもKEIKO(Vo)の歌声が映える曲。
Aメロでは儚いまでの囁き声で、ほぼ同じメロディが繰り返され続けます。
しかしサビに入ると、彼女の持ち味のクリスタルハイトーンボイスが爆発。
バックの演奏のボリュームも上がり、静かだった入り部分の面影は残っていない程の迫力。
KEIKO自身の透き通った声質と、圧力を増したバックの演奏があつらえたような対比を成し、綺麗なのに弱くは無い佇まいを演出しています。
globe特有のダンスミュージック感は抑えめな為、その分メロディが強調。
小室ミュージックの情緒的な部分を楽しみたいたい人にオススメな曲です。
曲調は力強いのに
「ずっと伏せたままの 写真立ての二人」
など寂しげな歌詞とのギャップ感も魅力的ではないでしょうか。
ちなみに華原朋美がアルバム「MEMORIES -Kahara Covers-」において、
また小室哲哉プロデュースのトリビュートアルバム「#globe20th -SPECIAL COVER BEST-」においてL'Arc~en~Cielのhydeが本作をカバーしています。
どちらも自分の声質を活かしたアレンジで歌い上げているので、興味のある人は是非聴いてみてください。
それでは。