音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

川田まみ『Serment』

今日は川田まみ『Serment』を聴いた感想を。


この曲は日本の女性歌手、川田まみが2012年にリリースしたポップロックです。


釘宮理恵江原正士日野聡が声優として出演しているアニメ「灼眼のシャナIII-FINAL-」のOPテーマだった事でも有名。


スリリングな電子ロック。

ニュー・ウェイヴ色が混ざった鮮やかな音色のロックが、アップテンポでグイグイ聴き手の鼓膜に迫っていきます。

テンポは速めでもメロディはキャッチーで哀愁がある、という昔ながらのアニメソング的強さを持ちながらも、サウンド自体は新しく瑞瑞しい、という現代的強さを持っている、贅沢な構造の作品です。


楽曲自体のクオリティもさることながら、目立つのは川田まみの歌唱力。

下積み時代「春生楽(HAURA)」というボーカルスクールで基礎からみっちり学んだ王道派の歌い手であり、若さからくる勢いと、中音~高音域までスムーズに繋ぐボイスコントロールで聴き手を魅了してくれます。

声を伸ばす場面では彼女名物の「まみびぶらーと」を披露。

光線銃の効果音のような声の波で、楽曲のリズムを心地よく振動。

デジタルサウンドが全面に出ているのに、楽曲に情感が溢れて感じるのは彼女の歌唱法も大きいと思います。

ラストの「そう 「それだけ。」」のロングトーンで、徐々に声が薄れていくパートは本作のクライマックス。

一般に「クライマックス」というと、歌メロのキーが跳ね上がったり声量を増したりするもの。

しかしこのパートはむしろボリュームを落としているのに、むしろ痛切な雰囲気が漂っているところがユニーク。

シャープな曲構造と、エネルギッシュなようで儚さがある歌声の対比が扇情的な作品です。


機械音主体なのにロマンティックな曲を聴いてみてください。



それでは。





ミスター・ビッグ『Colorado Bulldog』

今日はMr.Big『Colorado Bulldog』について。


アルバム「Bump Ahead」収録。

この曲は、アメリカのHR/HMバンドMr.Bigが1993年に発表したテクニカル・ハードロックです。


とにかく演奏陣のスキルが楽しめる曲。

エリック・マーティン(Vo)のパワフルながら流水のように無駄の無い歌声もさることながら、バックのメンバーが目立ちまくる構成になっています。


まずイントロ。

元々ビリー・シーン(Ba)が原案を出して、それをポール・ギルバート(Gt)に提案したパートだそうですが、鬼の速さのソロが一瞬でリスナーの耳を捕らえます。


その難易度は、後に加入したリッチー・コッツェン (Gt)がこの曲の演奏を任された時に「ちょっと待て!」となってしまったほど。笑

リッチー自身も相当なテクニカルプレイヤーで、このバンドに加入する際ポールの後釜を任された時も「まぁ問題ないでしょ」と少し自信ありげに考えていたそうですが、初めてこのイントロを聴いた時は驚いてしまったようです。笑

ただそのイントロさえ、ポール自身は3日で身につけてしまったそうですから、一時は「世界最速」の異名をとったギタリストの威厳を見せつけてくれますよね。

RACER Xっぽいところがあるのも彼のファンからすれば嬉しいところではないでしょうか。


ビリーも、特に中間部の方で大活躍。

そこでもポールも相当な速弾きですが、ビリーも激速のフィンガリング。

速いのですが、それでいてメロディも流麗でポールとソロバトルをしているようなスリルを感じさせてくれます。

日本でもメロディックなプレイをするベーシストとしてL'Arc~en~Cielのtetsuyaがいますが、本作はソレに更にHR/HMのスピードを上乗せさせたような構造。

まさにビリー流「歌うベース」。


パット・トーピー (Ds)のドラミングもエネルギッシュながら的確。

ハイスパートなのですが、高難度のシャッフルビートをさらりとこなしていて、力強くも精密な弦楽器隊に綺麗に噛み合うプレイです。

随所でパットの代名詞の、スネアによるグレースノートがあるところもオイシイ。


メンバー全員に「テクニカルながらスピーディー。スピーディーながら音色もキッチリ作り込む。」というところが共通している楽曲です。


技術志向があまり好みじゃない人にも、総合点で訴えかけるモノがある作品だと思うので、是非聴いてみてください。



それでは。






セリーヌ・ディオン『To Love You More』

今日はCéline Dion『To Love You More』について。


この曲は、カナダ出身の歌手Céline Dionが1995年にリリースしたポップバラードです。

鈴木保奈美岸谷五朗鈴木京香長瀬智也が出演した事でも知られるドラマ「恋人よ」のEDテーマだった事でも有名。


「あの娘は私のように愛してはくれない 私だけがそばに居られるの」

「あの娘が去れば 私がまだあなたのところにいるのに気づくの」

見る人によっては純粋、見る人によってはヤンデレ風味な歌詞が印象的な作品です。

葉加瀬太郎率いる音楽ユニツト「KRYZLER & KOMPANY」と共演した事でも話題になりました。

後半に進むにつれて壮大になっていく、という流れはセリーヌ・ディオンのもう1つの超名曲
「My Heart Will Go On」(映画タイタニック主題歌)と同系統の曲にも聴こえますが、本作はバックのドラミングがかなり激しく、ややロックバラードよりと言えるかもしれません。

それでも高音域のぶ厚さ、職人芸とでも言うべき声色の濃淡の繊細さなど「セリーヌ・ディオンのバラード曲」らしさは失われていないのですが。

アメリカ&日本の玄人音楽ファンから人気のギタリスト、マイケル・トンプソンの奏でる音色もクッキリしながらも澄んでいて、まるで宝石のような輝きをはなっています。

プレイ面でも超一流の作品ではないでしょうか。


単純な売り上げ面で言えば、世界的には前述の「My Heart Will Go On」の方が高いでしょうが、実は日本国内に限ってはそれすら上回るセールスを記録しているんですよね。

その売り上げ枚数は、なんと驚異の126.4万枚。

ダニエル・ブーンの「ビューティフル・サンデー」に次ぐセールスです。

プレイヤーがメジャー&マイナー層両方から人気のメンバーが揃っているから、というのもあるでしょうが、やはり作詞作曲、プロデュースにデイヴィッド・フォスターが関わっている、というのが大きいのでしょうね。

ホイットニー・ヒューストンマイケル・ジャクソン、シカゴ、マドンナ、などそうそうたるアーティストをプロデュースしてきた世界最高水準のプロデューサーですが、そのメロディックながら鋭いメッセージ性を兼ね備えたセンスは本作でも遺憾なく発揮。

セリーヌ・ディオンの精密な歌声と肩を並べる緻密なクオリティの楽曲が、互いを支え合い、高めあい、並のポップス曲とは次元違いの世界を表現しています。

限り無く完全に近い完成度のバラードです。


オリコン洋楽シングルチャートで18週連続1位、日本の洋楽(シングル部門)で歴代2位を記録した曲を聴いてみてください。



それでは。





D'espairsRay『Lost Scene』

今日はD'espairsRay『Lost Scene』を聴いた感想を。


アルバム「MIRROR」収録。

この曲は、日本のロックバンドD'espairsRayが2007年に発表したロックチューンです。


ヘヴィさと叙情曲のような切なさが刺さる曲。

Aメロはミドルテンポなので、一見するとロック調にも聴こえますが、サビでは途端にバラードのようなメロディに豹変され、あくまで「歌で聴かせる」タイプの作品なのだという事を伝えてくれます。

HIZUMI(Vo)の声質もL'Arc~en~CielのHYDEDir en greyの京のような「男らしくも艶がある」系の声なので、歌メロの持つ品が更に高まっている印象です。


ロディアス路線な歌メロに対して、バック演奏の方はかなりハード。

TSUKASA(Ds)のドラム音は、他パートを引き立たせる為か少し抑えめなプレイですが、Karyu(Gt)、ZERO(Ba)の弦楽器隊はかなり攻撃的なサウンドHR/HM級のバワーを備えています。

日本バンドとしては数少ない、メタルバンドの晴れ舞台である「Wacken Open Air」に招待された事もあるグループなだけあって、音色のキレは折り紙つき。

デスボイスの導入などDir en grey的なエクペリメンタルメタル+ナイトメアのようなメロディアスロック。
そこに更にインダストリアルロック色を織り交ぜたような構造でしょうか。


アメリカ、イギリス的な電子ロックさと、日本ロックバンドらしい美旋律を巧みに融合させた作品です。


綺麗な歌メロに重低音にエレクトリックなアレンジと、作り込まれた楽曲を聴いてみてください。



それでは。





アングラ『Spread Your Fire』

今日はAngra『Spread Your Fire』について。


アルバム「Temple of Shadows」収録。

この曲は、ブラジルのHR/HMバンドAngraが2004年に発表したネオクラシカルメタルです。


「EDENBRIDGE」のサビーネ・エルデスバッカーがレコーディングに参加した事でも話題ななりました。


一般にネオクラに求められるものが全て詰まっている曲。

劇的な展開、美メロ、テクニックが器用に一曲にまとめられています。


特に目立つのは展開。

ゆったりしたオーケストラメインのイントロから一転、スピードメタル調の激速ビートに様変わり。

クラシカルな演奏から一気にメタル調、という流れは日本のネオクラシカルメタルバンドの代表格Xjapanの「紅」、「Silent Jealousy」を連想させます。

現代ではネオクラ系バンドの王道的な流れですが、アングラの場合凄まじいのは使用されている、その高すぎる技術。

特に中間部分での音速オルタネイトピッキングはそんじょそこらのバンドでは聴けないレベルで、その難易度はヤングギターにおいて最高ランク認定の「ライオンマーク」を授与されたほど。

昔の音楽評論誌では、よくミュージシャンを評する時に「ミュージシャンの~は技術はあるが、個性がない」という文言が使用されますが、その技術もここまで突き詰めれば、もはや「オリジナリティ」だと思います。

リズムが全くぶれずに噛み合うツインでのプレイパートも鳥肌もの。


そしてもう1つのアングラらしさとして、キャッチーなサビメロ。

そのメロディアスさは、彼ら自身が生み出したネオクラシカル界の教科書「Carry On」、「Nova Era」 」に勝るとも劣らないもの。

そしてただでさえ美しいのにそこでクワイアが絡まり、大きな「スケール」が加わると、本作の熱量はクライマックスに到達します。


アングラといえば世間では前述の「Carry On」、「Nova Era」ばかりが取り沙汰されがちですが、個人的にはこの曲の凄さにもっと目が向けられても良いと思ったり。

「 完成度 」という規格において間違いなくアングラ最高水準の曲です。


超絶技巧、メロディ、そして情熱が詰まったメタルを聴いてみてください。



それでは。





カーペンターズ『I Need to Be in Love』

今日は Carpenters『I Need to Be in Love』について。

この曲は、アメリカの兄妹ポップスデュオCarpentersが1976年にリリースしたポップバラードです。

邦題は「青春の輝き」。


いしだ壱成香取慎吾SMAP)、反町隆史浜崎あゆみが出演した事でも知られるドラマ「未成年」のEDテーマだった事でも知られています。


ある種の「気のおけなさ」が魅力的な曲。


「朝の4時だというのに目は冴えるばかり」
「一人として友達の姿もなく 希望にすがりついてるだけの私 でも 私は大丈夫よ」

「そうね、私は恋をするべきね そうね、私は時間を無駄にしすぎた」
「そうよ、私は不完全な世界に完璧を求めてる
そして おばかさんなことに それが見つかると思っているの」


実際の世の中でそんな相手が見つけるのは難しいと知りながら、それでもそれを諦めきれない、という想いが表現されています。

ファンの間では、

カーペンターズのメンバー、リチャード・カーペンター (Pi.Vo)、カレン・カーペンター (Ds.Vo)は、幼い頃から音楽の仕事漬けで、まともに恋愛を楽しんだ事が無かった。それを指して「私は時間を無駄にしすぎた」と語っているのではないか」

という推論がありますが、スターだからこそ一般的な幸せを楽しめない空しさが込められた作品なのかもしれません。

兄のリチャードいわく「生前のカレンの一番のお気に入りの曲だった」との事ですが、それは彼女たちが普段しまいこんでいる胸の内を素直に打ち明けた曲だからでしょうか。

ただ、「普通の恋愛が出来ない」、というのは売れっ子ミュージシャンならではの苦悩なのかもしれませんが、「なかなか出会えない、運命的な良きパートナー(恋人)を求める心」というのは、世間の大多数の人に通じるところがあるメッセージですよね。

一般社会の人達も、若い頃は白馬にのった王子様や大和撫子に憧れながら、大人になったら表向き「そんな相手にはそうそう出会えない」と達観的に振る舞います。

けれど、人知れず心の中では憧れが捨てきれず、どこかで奇跡的な出会いを待ちわびながら過ごしている人が居て、まるでそういう人達の胸の内を代弁したような内容にも読めるんですよね。

本作のヒットの理由は馴染みやすい曲調もあるでしょうが、世の中の多くの人が、内心でひっそりと抱えている理想と共感する部分があるからかもしれません。


メロディも「Top of the World」に通じる、ふんわりとした佇まい。

大げさな起伏もなく、自然体で歌っている感じのするバラードで、個人的には「女性ボーカルのビートルズ」というイメージ。

歌詞が痛切なのにメロディが鷹揚というギャップ感もまたこの曲の聴きどころ。


懐かしいメロディにのる、センチメンタルな身近のある歌詞の曲を聴いてみてください。



それでは。






LiSA『oath sign』

今日はLiSA『oath sign』を聴いた感想を。


この曲は、日本のLiSAが2011年にリリースしたロックチューンです。


小山力也大原さやか川澄綾子が声優として出演している事でも知られるアニメ「Fate/Zero」のOPテーマだった事でも知られています。


ロックな曲調の中に混ざるクラシカルな佇まいが綺麗な曲。

作詞・作曲者はAKB48(片山陽加小嶋陽菜篠田麻里子秋元才加宮澤佐江松井玲奈)
に「イイカゲンのススメ」、ClariSに「コネクト」の楽曲提供した事もある渡辺翔

キュート&クールな曲を作る事が得意な彼ですが、本作にはそれにエレガントさが上乗せされたような世界観です。

ピアノ、コーラスからロック演奏になだれ込む展開など特徴的な要素が多い曲ですが、特に好きなのは中間部から後半の大サビにかけて。

ギターとストリングスがまるで沸騰するような熱量で絡んでいます。

ギターはかなり攻撃的なロック演奏なのですが、ストリングスは前奏と同じメロディをなぞった神秘的な演奏で、圧力と流麗さが見事なコントラストを構築。

激しい曲ですが、あくまでも音階、作り込みの繊細さで訴えてくる作風ではないでしょうか。


LiSA(Vo)のボーカルプレイも詩情あふれる歌声。

hotexpressの棚橋寛から

「拭いきれない不安に向かって突き進む運命を描いた世界観が、力強くも切ないLiSAのボーカルによって描かれている。」

と評価されたように声量豊かでパワーがありながらも、さりげなく愁いを帯びていて深みを感じます。

本作が一種の荘厳さを持つのは、ドラマチックな曲調もあるでしょうが、LiSAの一聴しただけでは聴き漏らしそうなほど微細な感情表現も大きい。

アグレッシブなバンド演奏と、ストリングスとLiSAのデリケートなプレイの融合が味わい深い作品です。

キャッチーで、それでいてどこか上品な曲を聴いてみてください。




それでは。