レインボー『Kill the King』
今日はRainbow『Kill the King』について。
アルバム「Long Live Rock 'n' Roll(邦題:バビロンの城門)」収録。
この曲は、イングランドのHR/HMバンドRainbowが1978年に発表したネオクラシカルメタルです。
後世のネオクラ、パワーメタルバンドに多大過ぎる程の影響を与えた曲。
リッチー・ブラック・モア(Gt)、ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)、コージー・パウエル(Ds)の3大巨頭が圧倒的な化学反応を起こして生み出されたスペシャルな作品ですが、個人的に推しているのはリッチーのプレイ。
非常に高い次元で、テクニックとメロディアスが融合しています。
特にイントロ部分。
3本弦のコードアルペジオでの高速プレイですが、なんとオルタネイトピッキングでの演奏との事。
一般のアマチュアギタリストならエコノミーでようやく弾くようなフレーズを、さらりとオルタネイトで弾きこなしているんですよね。
当時のギター通の間でも「完コピは不可能」と言われていたそうですが、それを苦もなく正確にプレイするリッチーのスキルに脱帽。
巧いいけどフレージングセンスが無いギタリスト、フレージングセンスはあるけど演奏が下手なギタリスト、そういうプレイヤーは山ほどいるでしょうが、巧くてフレージングセンスまであるのが、リッチーがリッチーたる由縁。
ギターの神に愛されたプレイヤーです。
もちろんリッチー以外も活躍。
超ハイトーンなのにファルセット成分が無く声の「太さ」を失わないロニーの超人的歌唱、後ノリなのにドライブ感ありまくりのコージーのビートなど聴きどころが満載。
そしてその3人のプレイばかりがフューチャーされがちですが、さりげにヘヴィでズンズン響くボブ・ディズリー(Ba)のメタリックなベースも渋いです。
作品、プレイヤー両方に恵まれた歴史的名ロックではないでしょうか。
ちなみに偉大な作品ゆえStratovariusやHeathenなどそうそうたる面々にカバーされていますが、個人的にお気に入りなのは、ロニー・ジェイムズ・ディオの追悼トリビュートアルバム「This is your Life」に収録されているMetallicaのバージョンのもの。
原曲のきらびやか成分を薄くして、変わりに重さを重視したような、新しい『Kill the King』として成立していると思うので、興味のある人は是非聴いてみてください。
それでは。
T-BOLAN『おさえきれない この気持ち』
今日はT-BOLAN『おさえきれない この気持ち』について。
この曲は、日本のロックバンドT-BOLANが1993年にリリースしたロックバラードです。
小田茜、安室奈美恵、辺見えみりが出演した事でも知られるドラマ「いちご白書」のEDテーマとしても有名。
ゲストコーラスに栗林誠一郎、TWINZERの生沢佑一が参加した事でも話題になりました。
森友嵐士(Vo)の声が自己主張しまくりのバラード。
「そこまでやるか」というほど大きく感情表現した歌声は、まさに「クドかっこいい」彼の持ち味です。
半音近く音程が上下する極深ビブラートなど、森友嵐士の個性が前面に出まくり。
実際、曲調自体どちらかというと薄味の中性的バラードな為クリーンボイス系の歌手が歌っていたら、ただキレイなだけの曲で終わっていたかもしれません。
しかし「The・男」な声質の森友嵐士が歌う事で、逆にメロディの綺麗さが引き立つという現象。
作詞・作曲担当が森友本人ですが、自分の声にあっている曲調を、客観的に把握できているのでしょうね。
近年日本のチャートでは、ウィスパー系のボーカルやファルセット多用のしっとり系のボーカルが増えている気がします。
それはそれでもちろん良いのですが、こういうぶ厚い声で歌う「男らしい系」のボーカルも、もっと沢山いても良いと思うんですよね。
L'Arc~en~CielのHydeやDead endのMORRIEなどベテラン勢にはいることはいるのですが、10~20代の歌手にはまだまだ少なめ。
もっとこの国に多様なプレイヤーが溢れて、あらゆる音楽ファン層に訴えるシーンが出来上がる日が来る事を、一日本人としては願っています。
90年代的かっこよさのあるバラードを聴いてみてください。
それでは。
Dir en grey『Ranunculus』
今日はDir en grey『Ranunculus』を、聴いた感想を。
アルバム「The Insulated World」収録。
この曲は日本のロックバンドDir en greyが2018年に発表したロックバラードです。
世相批判的な歌詞が印象的な曲。
『人を失う怖さから』
「 いつの間にか自分を 誰かの様に嘘で騙した」
「人間を被る」の時からそうでしたが、近年の京(Vo)は以前にも増して「社会では自分を出すと、人扱いされない」のそんな哀しみをテーマにした歌詞が増えてきた気がします。
前にインタビューで「(歌詞は)書きためる事はせず、その時その時に思っている事をそのまま書く」という趣旨の発言をしていましが、現在の京は「社会で自分を出しきれない人達」に痛心しているのかもしれません。
「憎む為じゃないだろ?誰かの為に今日も笑うの?」
「叫び生きろ 私は生きてる」
京が一番言いたかった事はこの部分でしょうか。
「本当は怒りたい時も泣きたい時もあるのに、それだもあなたは周りの為にニコニコ笑っている。それは1つの美徳だろうけど、それだけを繰り返して終わっていいのか?」
「言いたい事があるならはっきり言え。少なくとも自分はそうして生きている」
というとてもシビアなようで優しいメッセージ。
京と言えばメディアでも、他人や他ミュージシャンバンドの事を好きなものは「好き」、嫌いなものは「嫌い」、興味ないものは「興味ない」と言いたい事をはっきり口に出す人で有名。
その京からすれば様々な抑圧の中で生きている一般的の人達が、とても息苦しい生き方をしているように見えるのかもしれません。
とは言え、いきなり普通の人が、京ほど本音を出して生きるというのは難しいと思いますが、「今よりほんの少しだけ正直に生きよう」と解釈すれば、この歌詞の内容がリスナーにとっても身近になるのではないでしょうか。
数年前にホリエモンの著書「本音で生きる」がヒットしたように、僕達一般人も少しだけ素直な場面を持ってもいいのかもしれません。
音楽的には、ディルの曲としてはかなりオーソドックス。
今まで見せてきたヨーロッパの宗教音楽的な要素は鳴りを潜め、ハイトーンである事以外は王道のロックバラードになっています。
デスボイスを抑え、メロディ重視で進む展開はデビュー当時のDir en greyのよう。
どことなくLuna Seaのバラードを連想させる所が「初期」っぽいです。
ディルと言えば世間的にはシャウトやサイコスティックな世界観が注目されがちですが、こういう素朴なメロディセンスがもっと評価されても良い気がします。
まぁ、あまり多くの人から好かれようとは思わないのが彼らなのかもしれませんが。笑
オーソドックスなようで、どこか彼ららしい曲を聴いてみてください。
それでは。
ホワイトスネイク『Bad Boys』
今日はWhitesnake『Bad Boys』について。
アルバム「Whitesnake(邦題:白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス)」収録。
この曲は、イングランドのHR/HMバンドWhitesnakeが1987年に発表した正統派メタルです。
ジョン・サイクス(Gt)のギターが主張しまくる曲。
ジョンの代名詞の16分刻みのリフ「マシンガンピッキング」が大暴れし、聴き手を音の弾で圧倒します。
テンポだけみればHR/HM曲としては一般的ですが、体感速度はそこらのスラッシュメタルにも負けていません。
ジョンの癖なのかわかりませんが、個性的なウネりがあるんですよね。
「高速で這いずるギター」とでも表現すれば良いのでしょうか。
パワーコードを多用しながらも、さりげなくsus4も使用していたり、と豪快さの中にも小回りを効かせているところがクール過ぎる曲です。
ちなみにジョンのギターやデイヴィッド・カヴァデール(Vo)の粋な歌声ばかりがフューチャーされがちな曲ですが、ニール・マーレイ(Ba)、エインズレー・ダンバー(Ds)のリズム隊も良い仕事をしています。
特にエインズレーの怒涛のバスドラが凄い。
本作の発表より少し前に、表だった活動をほとんどしてなかった為、リリース前の段階では往年のファンから「現役時代の勢いは残っているのか?」と心配する声もあったようですが、そんな声はその超ヘヴィなサウンドで一気に吹き飛ばしてしまいました。
レッド・ツェッペリンしかりMR.BIGしかり、良いロックバンドはリズム隊が重厚ですが、彼の存在の価値を再確認させてくれる音源になっていると思います。
疾走感がありながらズシッとした厚みもあるHR/HMです。
Whitesnakeに「The・ブリティッシュロック」なイメージを持ってる人ほど、そのLAメタル感に驚かされる曲だと思うので是非聴いてみてください。
それでは。
GLAY『時の雫』
この曲は、日本のロックバンドGLAYが2004年にリリースしたポップバラードです。
釈由美子が出演している事でも知られるドラマ「スカイハイ2」のEDテーマだった事でも有名。
GLAYの曲としてはかなり演奏時間が長い曲。
演奏時間7分を越えるGLAY楽曲の中では大作ですが、長くてもダレを感じさせない、強い情意で聴き手を包んでくれます。
特徴としては、とにかくストリングス(Key)がきらびやか。
一般のシンフォニックロックほど派手なプレイはしていないのですが、必要な時、必要な量、必要なタイミングでのみ的確に動き、神秘的な存在感を示しながらも、他楽器の音と調和を保っています。
これ程までにストリングスが美しい作品。
にも関わらずTAKURO(Gt)いわく本来「キーボードがなくても成立する曲。」
ではなぜキーボードの音を入れたかと言うと「溝口肇さんとやりたかったから」、との事。
ストリングスでのアレンジをさせたら日本屈指、とも言われる名編曲家ですが、以前から彼のファンだったTAKUROが、彼との共演を望み意図的にストリングスを入れたそうです。
その目論見は見事成功。
ロック演奏ながらもどこかに温かさのあるGLAYの演奏と、高級感がありながらもしとやかさが巧み
に解け合っています。
ストリングスが無くても成立はしても、ストリングスがあったから成功した、と言える曲ではないでしょうか。
ちなみに歌詞は、
「見送りはわざとはしゃいでは サヨナラの言葉飲み込んだ」
「変わり無いかな? 傷付いてるかな? 決してあなたには届かない 想っている事忘れないでいて 時の雫がホラ囁いて」
と、愛しい人との決別をテーマにしたもの。
別れる際に雰囲気を暗くしない為にわざと明るく振る舞いますが、本当は別れる事を受け入れきれない為に「サヨナラ」の言葉が口から出てこない。
曲調は幻想的なのに、一種の「リアルさ」のある歌詞が哀調を帯びます。
リアルな詞をファンタジックなメロディにのせる。
これはGLAYのバラード曲の多くの共通点かもしれませんね。
清らかな妖しさのある曲を聴いてみてください。
それでは。
LiSA『crossing field』
今日はLiSA『crossing field』を聴いた感想を。
この曲は、日本の女性歌手LiSAが2012年にリリースしたロックチューンです。
松岡禎丞、戸松遥、伊藤かな恵が声優として出演している事でも知られるアニメ「ソードアート・オンライン」第一期のOPテーマとしても有名。
LiSA自身の最大のヒット曲。
2017年2月時点、全世界で50万ダウンロードを記録しました。
日本レコード協会からもゴールド、シングルトラック部門においてもプラチナを授与された事でも話題に。
激しくも起伏に富む構成が魅力的。
Bメロ部分で一旦静まり、サビで切れ味鋭く一気に駆け抜ける、チェンジオブペース的な流れがかっこいいです。
特に大サビ前でLiSAが、一瞬タメを作ってから歌い出す場面は本作のクライマックス。
例えるなら浅倉大介の楽曲に、バンド成分を濃いめに注入するとこうなりそうなイメージの曲調ではないでしょうか。
ちなみにその大サビ部分では直前、瞬間的に二重に再生されているかのような工夫が。
一瞬なので一聴しただけでは気付かない人も多いかもしれません。
渡辺翔(作曲担当)のアイディアなのか、とく(アレンジ担当)のアイディアなのかはわかりませんが、一般のJ-POPではそうそう見かけない手法。
「アニメソング」というとまだ日本では一部で軽んじられがちなジャンルですが、中にはその手の偏見を吹き飛ばしてくれるような、こういうハイクオリティな楽曲があるのも事実なんですよね。
鮮やかながら重厚な作りの曲だと思います。
ちなみに歌詞はアニメに内容に沿ったものですが、それだけでもありません。
「目を閉じ世界を 知った」
「眠る小さな想い 拡がり出して 気付く」
「 弱い 私 君がいれば 暗い世界 強くいれた」
LiSA自分はこの歌詞を
「アニメの中でキャラクターが一緒に戦う誰かを信じて、そして誰かを守りたいという自分の心を信じて戦う気持ち。
そして私自身から、私を信じてくれる君(ファン)がいてくれるから、私は私を信じて歌い続けられるという想い、両方を込めてこの曲を届けたかった。」
と語っています。
アニメのタイアップ曲としてだけじゃなく、そのタイアップ曲さえあくまで自己表現の為の媒体とする。
ある意味アーティストの鑑ですよね。
彼女いわく「(この曲は)大切なラブレター」。
LiSAの、自分を支えてくれた人達の感謝の歌でもあります。
物憂げのようで強いメロディ、遊び心が混ざる展開、そして歌い手のフォロワーへの謝辞の想いが込められた曲を聴いてみてください。
それでは。
ボン・ジョヴィ『You Give Love a Bad Name』
今日はBon Jovi『You Give Love a Bad Name』について。
アルバム「Slippery When Wet」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドBon Joviが1986年に発表したロックチューンです。
コンパクトながらインパクトに溢れる曲。
どことなくゲイリー・ムーアを連想させるような佇まいを感じます。
ボン・ジョヴィのメジャー曲の中でもこれ以上は無い、という程シンプルな作品ですが、それだけに彼らのエネルギッシュなパッションを直球で感じられる内容。
構成は非常にオーソドックスです。
Aメロはポップ調の明るい雰囲気で始まり、Bメロでグンッと盛り上がる。
そしてその後は、そのBメロの勢いさえ凌ぐほどの、超パワフルなサビに突入します。
おそらく本作のメインである箇所と言えると思いますが、それに相応しいエネルギー量と、世界的知名度を誇るのがこのサビ部分です。
一見簡素なメロディですが、ジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)のあまりにも強烈な声量にはかえってこういうパワープレイなメロディの方が相性が良い気がします。
また、バックの壮大なコーラスもそのサビを強調。
おそらくアレック・ジョン・サッチ(Ba)のモノの思われる超ハイトーンのハモりが、ジョンの歌声に後ろから背中を押すように加速感を付与。
力押しのようで高級感がある、高潔な泥臭さが本作の美点ではないでしょうか。
ちなみに余談ですが、ボン・ジョヴィとしては初の全米チャート1位をとった曲でもあります。
当時のボン・ジョヴィは、ジョンいわく一般の人達は「ボン・ジョヴィってバンド名が、ジーンズなのかピザ屋なのかも分かってなかったんだ」と冗談混じりに語る程のマイナーバンド。
それが本作の大ヒットを皮切りに、アメリカで知らない人はいない程のロックスターの地位を磐石なモノに。
実は元々「en:Heaven in Your Eyes」 で有名なカナダのロックバンド「LOVERBOY」に提供する予定だったけれど頓挫した曲との事。
この曲が無ければあんなに早くボン・ジョヴィが出世できなかった可能性もある事を考えると(Livin' on a Prayerもあるので、大丈夫だったかもしれませんが)、結果オーライだったわけですね。笑
最近でもThe 1975が「ザ・サウンド」をあのワン・ダイレクションに提供しようとしましたが、彼らに響かなかった為に自分達の曲として発表したらそれが大ヒット、というエピソードがありましたが、
「他ミュージシャンに捧げるようとした曲を自分で発表したら売れた」
というのはミュージシャンあるあるとしてカウントしても良いかもしれません。笑
彼らを世界的スターに押し上げた名作を楽しんでみてください。
それでは。