倉木麻衣『Stand Up』
今日は倉木麻衣『Stand Up』について。
この曲は日本の女性歌手、倉木麻衣が2001年にリリースしたポップロックです。
「Love, Day After Tomorrow」「Stay by my side」「Secret of my heart」「Feel fine!」と並び称される事もある、倉木麻衣自身の5大代表曲としても知られる曲。
面白いのは曲構成。
一般的にJ-POPというのは
イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→A(B)メロ→サビ→間奏→A(B)メロ→大サビ→アウトロ
という流れが主流だと思いますが、本作の進行は
イントロ→サビ→Aメロ→Bメロ→Cメロ→間奏→Aメロ→Bメロ→Cメロ2回リピート→Dメロ→間奏→Cメロ2回リピート→サビ
という、平均的な日本のポップスと比べてトリッキーというか、捻りのある流れになっています。
ひとつひとつのフレーズにめちゃめちゃインパクトがある曲、というわけではないかもしれませんが、全体を通して聴くと遊び心に気付く事ができる、かっこいいニクさのある曲です。
また、ほのかに漂うノスタルジーもこの曲の魅力。
ダンスミュージック系の曲ですが、ノリに7~80年代に流行したカントリーミュージックの佇まいを感じます。
明るいのですが、どこか穏やか。
やんちゃながらも無邪気な温かさで聴き手をほっこりさせてくれるリズム。
「ただ ほんの少しの勇気が見つからなかった It's too much for me」
「心縛るものis what a shame We can try a little harder 踏み出そう」
ふんわりした曲調と熱い歌詞とのギャップが本作の聴きどころだと思います。
彼女の「代表曲」の中でも異色の位置にある曲を聴いてみてください。
それでは。
BREAKERZ『月夜の悪戯の魔法』
今日はBREAKERZ『月夜の悪戯の魔法』を聴いた感想を。
この曲は日本のロックバンドBREAKERZが2011年にリリースしたロックバラードです。
高山みなみ、山崎和佳奈、林原めぐみが声優として出演している事でも知られるアニメ「名探偵コナン」のEDテーマとしても有名。
BREAKERZの楽曲の中でも、かなりメロディ重視で構成されたバラード。
厳密にはメロディ重視の楽曲は他にもあるのですが、BREAKERZのいわゆる「ロックバラード」の範疇では、旋律の滑らかさはトップレベルだと思います。
特に好きなのはサビに入る直前にギターが「ジャーン」と重低音で「タメ」を作ってから、DAIGO(Vo)がサビを歌い出す場面。
スポーツでいつもより速いボールを投げる時には腕を大きく振りかぶるのと同じように、歌も最高潮のパート直前では間をおいた方が、その箇所がより盛り上がるんですよね。
基本的な事のようでとても重要なパターンを効果的に使用したバラードだと思います。
また、そういう王道的な魅力を踏まえた上で、更にシンセで琴の音を再現するなど細かな工夫も。
インタビューでメンバーが「和のテイストを取り入れたかった」と語っていましたが、これが上手い事綺麗にハマっています。
そのままでも充分情感的できらびやかな曲調が、このアレンジのおかげで、幽玄的な美しさを演出。
歌詞にも
「花のように咲き誇り 鳥のように羽ばたいて」
「 風のように舞い上がり 月の夜に逢いにきて」
と花鳥風月を意識したと思われるフレーズが含まれるなどこれでもか、というほどのこだわりぶり。
日本的な「たおやかさ」 楽しめる曲です。
ちなみにPVではDAIGOが着物姿で女形を演じながら歌っています。
思ったより楽曲と合っていたので興味のある人は是非視聴してみてください。
それでは。
ライオット『Thundersteel』
今日はRiot『Thundersteel 』について。
アルバム「Thundersteel」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドRiotが1988年に発表したパワーメタルです。
ライオットの中でも、これ以上は無いというほどの王道なパワーメタル。
鋭く速いドラムにのる叙情的なメロディはメタルファンなら、アメリカというよりは北欧のメタルを連想するのではないでしょうか。
この曲で好きなのは、その激速のリフ。
パワーメタルだけあってもちろんメロディも美しいのですが、それだけじゃなくこの曲が放つシリアスさ、緊迫感のようなものはこのリフが醸し出していると思います。
当時のアメリカではもっと朗らかというか、ポジティブな雰囲気のメタルが流行していた印象。
マーク・リアリ(Gt)の影響が強いのでしょうが、その中であえてこういうシビアな曲を発表するセンスが面白いです。
ボーカルのトニー・ムーアの歌声がジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードに似ているのも個人的にポイントが高いです。
ギターソロパートもクラシカルでスリリング。
速いのですが、あえて大きな抑揚を省いた「攻撃的なようで冷静」な旋律で聴き手を熱中させます。
この感じもアメリカというよりはヨーロッパ、特にジャーマンメタル。
エキサイティングの中にも、「ここでこのフレーズはとうして入れたんだろう?」と、こちらに考えさせる要素があります。
アメリカ的エネルギー量と、北欧的デリケートさを併せ持つ曲です。
攻撃的ながらクールなメタルを聴いてみてください。
それでは。
修二と彰『青春アミーゴ』
この曲は、日本のアイドルユニット修二と彰(亀梨和也、山下智久)が2005年にリリースしたポップロックです。
亀梨和也、山下智久、堀北真希が出演した事でも知られるドラマ「野ブタ。をプロデュース」の主題歌としても有名。
「古今」の良さが詰まった曲。
基本的に音やビートは当時の日本の音楽シーンの流れを組んだ新しいもの。
なんですが、メロディにどことなく(むしろモロ?)昭和のアイドル歌謡の要素が混ざっていて、ノスタルジックな佇まいがあります。
実際本作はジャニーズの若いファンだけじゃなく中高年からも支持されていて、それもあってか、既に「ネットでの音楽ダウンロード」が台頭しつつあった2005年に、ミリオンセールを達成するという偉業を成し遂げています。
年代を選ばずオススメできるかっこよさを持った曲です。
また亀梨和也、山下智久2人の声質が絶妙に相性が良いのもヒットの秘訣ではないでしょうか。
亀梨の方はやや硬質というかロック色が強い声なのですが、逆に山下の方はアンニュイな肩の力が抜けたような声。
濃味と薄味の違いというか、「パワフル」と「マイルド」が丁度良いバランスで配合されています。
その辺も「幅広い世代」に愛される理由なのかもしれませんね。
日本のクリエイターとスウェーデンの作家チームが総力を上げて生み出した傑作を聴いてみてください。
それでは。
Do As Infinity『深い森』
今日はDo As Infinity『深い森』を聴いた感想を。
この曲は、日本の音楽ユニットDo As Infinityが2001年にリリースしたロックバラードです。
山口勝平、ゆきのさつき、 辻谷耕史が声優として出演している事でも知られるアニメ「犬夜叉」のEDテーマとしても有名。
伴都美子(Vo)の詞が、とても示唆に富んだ曲。
「深い深い森の奧に 今もきっと 置きざりにした心 隱してるよ 」
「探すほどの力もなく 疲れ果てた 人々は永遠の 闇に消える」
ここでの「置きざりにした心」の意味は名言されていませんが、だからこそそれぞれで「他人に伝えられなかった想い」「目指すべき理想」と自由に解釈する事ができます。
誰の心にも本来目を背けてはいけないことがあるのでしょうが、日々の激流の中でどうしても「置きざり」にして、いつしか忘れてしまうんですよね。
アニメのストーリーで、登場人物の桔梗が主人公の犬夜叉を森の中に封印する、という流れがあるのでそれを組んだのかもしれませんが、物語の内容を通して実際の社会の人々の心境と、それに伴う哀しみを表現した上手い歌詞だと思います。
曲の流れも、歌詞と合うダークなもの。
にもAメロでの歌メロは落ち着いていて理性的なのに、サビでは一気に悲痛な感情を吐き出します。
どことなく漂う綺麗な冷たさと、サビでのどろりとした熱さのコントラストが楽しめる流れです。
転調パートがその落差をより極端にしているところがポイント。
作曲者のD・A・Iこと長尾大(Gt)が長年温めて満を持して発表した曲だそうですが、それに相応しい成熟度を誇る曲ではないでしょうか。
少年アニメのタイアップ曲とは思えないほどの鋭さをもつ歌を聴いてみてください。
それでは。
アーチ・エネミー『Enemy Within』
今日はArch Enemy『Enemy Within』について。
アルバム「Wages of Sin」収録。
この曲は、スウェーデンのデスメタルバンドArch Enemyが2001年に発表したメロディック・デスメタルです。
アンジェラ・ゴソウ(Vo)のデス声が印象深い曲。
デスメタル界では当時異例の女性ボーカルとしても評判な彼女ですが、本作での彼女のソレは特にキレています。
荒々しくもどこか品のある声は、彼女自身がリスペクトしているジェフ・ウォーカーを彷彿とさせます。
普通デスメタルとはバックのギターリフや、ドラムのブラストビートをメインで聴かせてボーカルは「リズム」に徹する事が多いもの。
しかしこの『Enemy Within』はこれでもかというほど歌声が前に出ている、珍しいタイプのデス曲です。
機械的なまでに正確なリズム感もクール。
楽曲的にも、メロディがかなり美旋律。
バラードのようにしっとりときたキーボードのイントロから、北欧メタル的なクラシカルギターリフに展開する様は圧巻。
さながらブルータル成分の強いソナタ・アークティカのよう。
展開、激しさ、メロディアスさ、そしてかっこいい歌声のバランスが魅力の曲です。
聴き手に畏怖を感じさせながらもキャッチーなメタルを聴いてみてください。
それでは。
GAO『サヨナラ』
今日はGAO『サヨナラ』について。
この曲は、日本のシンガー・ソングライターGAOが1992年にリリースしたポップバラードです。
高嶋政宏、鈴木京香、国生さゆりが出演した事でも知られるドラマ「素敵にダマして!」の主題歌としても有名。
とにかく彼女自身の、中性的な歌声が映えるバラード曲。
日本の音楽業界における「ユニセックス系」のはしりと言えるかもしれません。
使用されている音域も、おそらく意図的だと思うのですが、ちょうど男性曲とも女性曲ともとれるキーの為、ますます「性別」を感じさせない声になっています。
非常に演奏や歌声に厳しい事で知られるXjapanのリーダーYOSHIKIも、自身のバンドのボーカルTOSHIの声は滅多に褒めないにも関わらず、彼女の声は「良い」と誉めたそう。
個性とスキルを兼ね備えた稀有なボーカリストではないでしょうか。
楽曲自体も、彼女自身の声のインパクトに埋もれがちですがかなり魅力的。
特に音色が目立っていて、当時流行していたサイケデリック・ミュージックの要素を踏まえながら、すっきりとした爽快感が漂っています。
ビートはあまり起伏がなく特別に盛り上がるところも下がるところもないのですが、その方がこの曲の
「何も失くさないと信じていた あの頃に~遠くへ~~もっと遠くへ~~もっと遠くへ~帰りたい」
の歌詞のような、純粋な郷愁の念が引きたつ効果が。
それが作曲者の階一喜の狙いだったのか、あるいは単に「ボーカルが特殊だから、バックは余計なことを、しない方が良い」と判断したからかもしれませんが、その雑味の無い清廉さがこの曲の持ち味だと思います。
ちなみに柴咲コウが、カバーアルバム「続こううたう」において本作をカバーしています。
とても情感的なバージョンになっているので、興味のある人は聴いてみてください。
それでは。