ドッケン『Tooth and Nail』
今日はDokken『Tooth and Nail』について。
アルバム「Tooth and Nail」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドDokkenが1984年に発表したヘヴィメタルです。
押し切るようなビートの曲。
普段は比較的小回りの効いた展開の曲を演奏する彼らとしては、珍しいタイプの楽曲ではないでしょうか。
とは言えその「勢い」は並大抵のものではありません。
分厚い音色と音圧で、聴き手をグイグイと引っ張ってくれます。
ストレートなリズムもここまでいくと個性ですよね。
サウンドはHR/HMそのものですが、ドン・ドッケン(Vo)の声色はベルカントでのナチュラルな声。
シャウト成分がHR/HM曲としては薄めで、聴き心地の良いものになっています。
ジャンルの壁を越えて愛されるタイプの歌声です。
この曲の肝は、やはりジョージ・リンチ(Gt)のギターソロ。
速弾き、ジャック・オフ・ヴィブラート、そして高速タッピング。
彼の持つあらゆるテクニックが詰め込まれています。
しかもただテクニカルなだけではなく速弾きパートが一段落すると、メロディアスな叙情パートに様変わり。
理性的な技巧で魅せた直後に、情緒的な旋律で響かせる。
右脳と左脳両方に訴えかけてくるようなソロだと思います。
もちろんソロパートだけではなく、リフも疾走感が溢れたかっこ良いもの。
この硬派なリフと、前述のドッケンのソフトな歌声のコントラストもこの曲の味の1つです。
スリリングでありながら、泣きのメロディも流れているメタルを聴いてみてください。
それでは。
槇原敬之『もう恋なんてしない』
今日は槇原敬之『もう恋なんてしない』について。
この曲は、日本のシンガー・ソングライター槇原敬之が1992年にリリースしたポップバラードです。
柴田恭兵、三浦洋一、風間トオルが出演した事でも知られるドラマ「子供が寝たあとで」と主題歌としても有名。
日本でもヒットしましたが、海外でも評価が高く、ポルトガル、韓国、香港など多くの国のプロミャージシャンにカバーされています。
元々は槇原敬之が、プライベートで仲の良いキーボティスト本間昭光(その後、ポルノグラフィティやいきものがかりのプロデュースを務めた人)から、先日失恋した事を話された時に
「本間さんが元気になる曲を作りますよ」
と返し、その後に生み出された曲とのこと。
楽曲的には憂鬱な雰囲気と、それ以上の温もりを兼ね備えたメロディが特徴的。
Aメロはしとやかで少し落ち込んでいるような歌メロが流れますが、Bメロからうっすらと元気になっていき、サビで伸びやかな旋律に変わっていきます。
まるで失恋で落ち込んだ人が、幸せだった日々を振り返っていき、「それでも良い思い出だったな」と元気を取り戻していくよう。
面白いのが歌詞。
有名な
「もう恋なんてしないなんて 言わないよ 絶対」
のフレーズ。
ファンの間でも長らく「タイトルが「もう恋なんてしない」なのに矛盾しているのではないか?」と物議を醸していたんですよね。
それに対しての槇原敬之本人の答えは
もう恋なんてしない、では若い人に向けて恋愛を否定的に歌ってしまいかねない。
だから、恋愛に対するポジティブな面を強調するため、二重否定にした。
つまり否定形のタイトルは、否定形の言葉を後で二度重ねる為の「布石」みたいなものだったんですよね。
本当はポジティブな内容の歌詞を、あえて否定の言葉を使う事でよりポジティブに聴こえさせる為の、言葉のトリック。
ポップアーティストには珍しい「詞先」で曲作りをする彼らしい、歌詞へのこだわりを感じます。
ちなみに肝心の本間昭光のこの曲を聴いた時の感想は、
「元気になる曲だけど俺の失恋話は槇原が書いた詞のように良い話では無いんだよなぁ~笑」
まぁ、冗談雑じりにこういう事を言えるくらいですから、きっと元気にはなったんですよね。笑
語りかけるように安心感を与えてくれる曲を聴いてみてください。
それでは。
NANA starring MIKA NAKASHIMA『GLAMOROUS SKY』
今日はNANA starring MIKA NAKASHIMA『GLAMOROUS SKY』を聴いた感想を。
この曲は日本の女性歌手、中島美嘉がNANA starring MIKA NAKASHIMA名義で2005年にリリースしたロックチューンです。
CDと着うたフル、両方でダブルプラチナを授与された曲。
また中島美嘉本人、宮崎あおい、松田龍平が出演した事でも知られる映画「NANA」の主題歌としても有名です。
ボーカルが日本のバラードシンガーの歌姫である中島美嘉、作曲・プロデュースがL'Arc~en~CielのHYDEと豪華な顔ぶれ。
ジャンル的にはおそらく畑違いの2人が組む事によって、異次元の化学反応を引き起こしています。
「あの雲を払って 君の未来照らしたい この夢を抱えて一人歩くよGLORIOUS DAYS」
「あの虹を渡って あの朝に帰りたい あの夢を並べて 二人歩いたGLAMOROUS DAYS」
昔は夢を抱えて「二人歩いた」のに、現在は「一人歩くよ」。
元々は大切な人と共に目指した夢なのに、その人と別れた今は、その夢を一人で目指す、という内容でしょうか。
映画を観ていないので、あらすじは解りませんが、切ないようで強いメッセージが込められた詞だと思います。
この曲で好きなのは、ヘヴィな曲調と中島美嘉の歌声のギャップ感。
前述の通り基本的にはポップバラードを歌う事が多い彼女のクリーントーンの歌声と、ロックなゴリゴリのサウンドが鮮やかな好対照を成しています。
HYDEが作っただけあってVampsを連想させるようなパンキッシュな荒々しい演奏。
それがまさか中島美嘉の繊細な歌声と絡む日が来るとは、中島美嘉ファンもHYDEファンにも予想できなかった事ですよね。
サビでは中島美嘉の名物クリスタルボイスでのファルセット。
バックの重低音のギターとこれでもか、というほどの魅力的なコントラストは一瞬で聴き手の耳をとらえます。
アグレッシブな演奏と針の糸を通すようなデリケートな歌声が的確なバランスで融け合った曲です。
ちなみにAcid Black Cherryがカバーアルバム「Recreation 2」で、
さらにはイギリスのパンクミュージシャン、ダンカン・レッドモンズ(SNUFF)がソロプロジェクトでのアルバム「Sticks Up Girls」において本作をカバーしています。
原曲とはタイプの違うハードさを持ったバージョンなので、興味のある人は聴いてみてください。
それでは。
フェア・ウォーニング『Burning Heart』
今日はFair Warning『Burning Heart 』について。
アルバム「Rainmaker」収録。
この曲は、ドイツのHR/HMバンドFair Warningが1995年に発表したハードロックです。
とても繊細なロック。
ジャンルの上ではハードロックだと思いますが、一般的な感覚ではおそらくHR/HMとロックバラードの丁度「間」くらいに感じると思います。
日本でいうB'zのロック曲のようなイメージでしょうか。
楽曲の特徴としては、やはり何と言ってもその細やかなメロディ。
元々Fair Warning自体、音楽専門サイトから「メロディが、日本人好みのマイナー調」と評されるほど叙情的な楽曲を作ることで知られているバンド。
中でも、この曲はその最たる例と言えるのではないでしょうか。
トミー・ハート(Vo)のクリアなハイトーンボーカルが美しい。
声質が良いけど歌唱力の低い歌手、歌唱力はあるけど声質が残念な歌手、そんな歌い手はごまんといますが、ここまで技術と声の艶やかさを併せ持ったボーカルは貴重だと思います。
サビでの高音域でのハモりパートは絶品。
個人的にこの曲のメインは、やはりアンディ・マレツェク(Gt)のギターソロ。
このソロによって、この曲の価値を最大限に高められているのではないでしょうか。
決して静かではない、なんなら派手なぐらいのプレイ。
なのに聴き終えた後に残るのは、どことなく寂しげな雰囲気なんですよね。
ロック調の演奏で、これだけしっとりとした情感を込める事ができるのは珍しい才能だと思います。
アンディというと、世間でヘルゲ・エンゲルケのスカイギターばかりが取り沙汰されている事に対して、インタビューで「フェアじゃない」、という趣旨の発言をするなど、やや僻みっぽいような一面がある事でも知られています。
(一部では、「それが後の脱退の理由。」との声も)
けれどアンディの才能は、ヘルゲのそれほど「わかりやすい」ものではないというだけで、ギタリストのしてのセンスは決してヘルゲにも引けをとらないんでよね。
現在は別バンドで活動中なので、しばらくはこのメンバーでの演奏は聴けそうにありませんが、いつかこの泣きのギターを再びFair Warningでプレイしてくれる日が来ると良いなぁ、と思います。
普通ツインギターのロックバンドというと、片方が優秀でも、もう片方は平凡、という向きが多いと思いますが、1つのバンドに2人も天才的なギタリストを擁していたわけですから、思えば良い意味で贅沢なバンドです。
パワフルながらも感情移入しやすい曲を聴いてみてください。
それでは。
海援隊『贈る言葉』
この曲は、日本のバンド海援隊が1979年にリリースしたフォークソングです。
武田鉄矢本人が主演を務めた事でも知られるドラマ「3年B組金八先生」の第1シリーズの主題歌としても有名。
また「第22回日本レコード大賞」において、武田鉄矢(Vo)を作詩賞(西条八十賞)に導いた曲としても知られています。
いわずと知れた、卒業ソングの金字塔。
2~30年位前の日本の、丁度いま位のシーズンではTVで毎年流れていた曲です。
老若男女に対する知名度では「旅立ちの歌」に匹敵すると思います。
曲調的にはとてもピュアなフォークソング。
急な転調があるわけでもピッチに急激な変化があるわけでもない、どことなくビートルズのバラード曲を彷彿とさせます。
武田鉄矢の声が今とあまり変わらないのが凄い。笑
穏やかながも芯のある歌声は、金八先生が生徒に語りかける時の声を連想させます。
曲は素朴ですが、歌詞はある種、壮大。
「悲しみこらえて 微笑むよりも 涙かれるまで 泣くほうがいい」
「人は悲しみが 多いほど 人には優しく できるのだから」
一般的にアーティストとは、自分と特定の誰かをテーマにしたラブソングを綴る事が多いと思います。
実際この歌詞は武田鉄矢いわく、「学生時代の失恋をネタにして作った」。
つまりそもそもはラブソングなんですよね。
ですが、この曲は恋愛を通して、人間の人生の歩み方そのものについて歌われているようにも聴こえます。
それはもちろん「ヒューマンドラマ」でもある金八先生のイメージもあるでしょうが、何よりも歌詞の内容が示唆的で、相手の脆さも含めて受け入れてくれる思いやりに溢れているからではないでしょうか。
聴き手を選ばず世界全体に対する愛を感じさせる、そういう意味でも「Love&Peace」を掲げたビートルズのような佇まいを感じさせます。
個人同士の想いというよりも、「人」全体に語りかけるようなメッセージが込められた曲を聴いてみてください。
それでは。
T.M.Revolution『INVOKE―インヴォーク―』
今日はT.M.Revolution『INVOKE―インヴォーク―』を聴いた感想を。
この曲は、日本の音楽プロジェクトT.M.Revolutionが2002年にリリースしたロックチューンです。
保志総一朗、三石琴乃、子安武人、桑島法子が声優として出演している事でも知られるアニメ「機動戦士ガンダムSEED」の第1期OPテーマとしても有名。
物凄い緊張感を持つ曲。
作詞は井上秋緒で作曲とアレンジは浅倉大介、といういういつものメンバーですが、元々ガンダムの制作側が、T.M.Revolution側に「THUNDERBIRDのような曲をお願いします。」と依頼して作られたそう。
結果的には全然「THUNDERBIRD」じゃないわけですが。笑
(ガンダム制作側いわく、「イントロの部分で少し使われてるだけだった。笑」)
楽曲の特徴は、とにかく極端なまでの疾走感。
BPMは150ちょっと位ですが、膨大な数の音が詰め込まれまくっているので、一般の同じテンポの曲よりも速く感じます。
並の洋楽のロックに入れても珍しいレベルの迫力。
実際、一部のHR/HMファンからも支持されていて「今のJ-POPにこういう曲もあるんだ」という声も聞こえます。
一般人にも「この曲からT.M.Revolutionのファンになった」というコメントする人がいるなど、T.M.Revolutionの新たなファン層を開拓した曲と言えるのではないでしょうか。
ただし「新たな」と言っても、決して真新しい事をしているわけではなく、むしろ今までの「浅倉大介節」をより強く突き詰めたようなイメージ。
トランスをベースに、きらびやかなシンセサウンドを織り混ぜるところは、良い意味で従来型のT.M.Revolutionです。
この曲で好きなところは、激しいのに、どことなく計算されている所。
普通ここまで音を詰め込んだら、音が渋滞するというか、抑揚のどこが抑でどこが揚なのか解りづらくなるものだと思うんですよね。
それをここまで整えられた、美しく、むしろ切なささえ感じさせる構造にできるのは、やはり彼の音色選びと、作曲に対する思考力が卓越しているからではないでしょうか。
激しくも賢く高級感のある朝倉大介らしい、ひいてはT.M.Revolutionらしい曲調です。
激情的ながら透明感のある曲を聴いてみてください。
それでは。
ザ・ダークネス『Get Your Hands Off My Woman』
今日はThe Darkness『Get Your Hands Off My Woman』について。
アルバム「Permission to Land」収録。
この曲は、イギリスのロックバンドThe Darknessが2003年に発表したハードロックです。
非常に濃い味の曲。
曲調自体はド直球なハードロックですが、印象深いのはジャスティン・ホーキンス(Vo)のボーカルプレイ。
楽曲の大部分でファルセット使用。
一般的にはパラフルさ重視で、それこそロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)やロニー・ジェイムズ・ディオ(ブラック・サバス)のような、力強い声で歌う事が主流のHR/HM。
「Permission to Land」中の他の曲にも言える事ですが、ここまで柔らかな裏声を推すロックも貴重ではないでしょうか。
それでも不思議と骨太でエネルギッシュに聴こえるのは、おそらくバックの演奏陣のプレイと相性の良さ。
特にジャスティンの実の弟であるダン・ホーキンス(Gt)のギタープレイは王道というか、古き良きロックの型を正確になぞっています。
思い切り伝統的なダンのロックギターに、思い切り前衛的なジャスティンのボーカル。
両方が揃っているから対比が完成し、1つの「オリジナリティ」に昇華された、という感じがします。
「バンドは異なる個性を持った人達同士の共同作業」という事を再認識させられる曲です。
個人的にイントロのフランキー・ポーレイン(Ba)の「さぁ、最高にノレる音楽が始まるよ」的なベースも好き。
短い時間でも、一瞬でリスナーに陽気さを与えるセンス。
ダンとジャスティンの間で埋もれがちですが、個人的には彼も評価されるべきベーシストです。
一聴しただけでは好き嫌いもある世界観かもしれませんが、慣れればむしろ病みつきになれると思うので、時間がある時に聴きかえしてみることをオススメしたいですね。笑
それでは。