BUMP OF CHICKEN『天体観測』
今日はBUMP OF CHICKEN『天体観測』を聴いた感想を。
この曲は、日本のロックバンドBUMP OF CHICKENが2001年にリリースしたポップロックです。
伊藤英明、坂口憲二、オダギリジョーが出演したことでも知られるドラマ「天体観測」の挿入歌としても有名な曲。
また、日本レコード協会からダブルプラチナを授与されています。
作詞・曲共に藤原基央(Vo)。
彼ら自身の最大のヒット曲です。
あまりに売れすぎて、作曲者の藤原のところに今まではろくに連絡をくれなかった知人達が、一斉に電話をかけてきたそう。笑
知人達の現金な態度に、本人は正直嫌になってしまったようですが、中には売り上げのことでは無く「元気か?」と、藤原自身のことを純粋に気遣う連絡をくれた人がいて、その事に感銘を受けて生み出されたのが後の「ベル」とのこと。
一聴しただけだとオーソドックスなJ-POPに聴こえますが、ドラムのリズムパターンがまめに変化したり、イントロだけでも8本ものギターを使用するなど、細やかな工夫が随所に散りばめられています。
メロディだけじゃなく、彼らの職人的なこだわりも楽しめる曲です。
何より、ファンから特に評価されているのは詞。
「「イマ」というほうき星 君と二人追いかけている」
インタビューの際、藤原基央は「未来や過去じゃなくて今を歌いたい」と語っていましたが、その気持ちを最も明快に表現しているのがこのフレーズだとではないでしょうか。
「気が付けばいつだって ひたすら何か探している」
「幸せの定義とか 哀しみの置き場とか」
とあるように、ほうき星の意味が「幸福」なら、この歌詞の意味は「大切な人と、未来では無く今幸せになりたい」と、解釈できます。
藤原基央の独創的な比喩のセンスが味わえる歌詞です。
彼のファンは作曲家としての彼以上に、作詞家としての彼を支持している人が多いようですが、この曲はメロディも良い上に詞も美しい、とても完成度の高い曲ではないでしょうか。
「過去を振り返りたい時も未来に希望を持ちたい時もあるけれど、今この瞬間も大事にしよう」というメッセージを感じてみてください。
それでは。
ヴェルヴェット・リヴォルヴァー『Set Me Free』
今日はVelvet Revolver『Set Me Free』について。
アルバム「Contraband」収録。
この曲は、アメリカのロックバンドVelvet Revolverが2004年に発表したオルタナティブメタルです。
「いつか晴れた日に」、「グリーン・デスティニー」で知られるアン・リーが監督を勤めた映画「ハルク」の主題歌としても有名な曲。
バンド自体も
2002年に元ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュ(Gt)、ダフ・マッケイガン(Ba)、マット・ソーラム(Dr)の3人
デイヴ・ナヴァロ・バンドのデイヴ・クシュナー(Gt)
元ストーン・テンプル・パイロッツのスコット・ウェイランド(Vo)
と、それぞれビッグバンドからメンバーを迎えて結成されたスーパーグループです。
曲調はダークで直球な、ロックンロールよりのメタル。
冷えた雰囲気の独特なギターフレーズから、切れ味の鋭い演奏が始まります。
スコットの歌声はHR/HM曲としてはかなりの低音。
歌い方がかなりのシャウト声なので、ハイトーンじゃなくても迫力があります。
まるでアクセルにインスパイアされたような、硬質の発声が特徴的。
サビメロはとてもキャッチー。
コーラスとの絡みがメロディアスであり、映画の主題歌らしいスケールの大きさが演出されています。
ハードな演奏でも、とっつきにくさの無い歌メロです。
個人的に、この曲のメインはリフ。
シンプルなようでトリッキー。
まるで第2のヴォーカルのように、音が細やかに動き回っています。
一般のアーティストが、少し考えた位ではまず思いつかなさそうなクオリティ。
全てダウンピッキングでプレイされているのも、こだわりを感じます。
スラッシュとダフの緻密なコンビネーションが、この曲の根底にあるものではないでしょうか。
これだけ動いても余分だと感じさせる音が無いのがかっこいいですよね。
このバンドのクールなところが一通り詰まっている曲だと思うので、是非聴いてみてください。
それでは。
サザンオールスターズ『涙のキッス』
今日はサザンオールスターズ『涙のキッス』について。
この曲は、日本のロックバンドサザンオールスターズが1992年にリリースしたポップバラードです。
1992年8月の月間オリコンチャートで1位。
オリコン歴代シングルランキングでは79位を獲得。
また、賀来千香子、布施博、宮崎ますみが出演したことでも有名なドラマ「ずっとあなたが好きだった」の主題歌としても知られています。
作詞・作曲共に桑田佳祐。
「エロティカ・セブン」、「勝手にシンドバッド」とはまた違う魅力を持つ、落ち着いたバラード曲です。
ミドルなリズムに乗るしっとりしたメロディは、多くのファンから支持されています。
桑田佳祐の奏でる、アコースティックギターの旋律が最高。
ちなみにあのSMAPの草彅剛が、「自分の好きな楽曲」として挙げたのがこの『涙のキッス』です。
2016年にSMAPの解散騒動(後に解散)があり、その後に草彅自身が出演する番組『SMAP×SMAP』にてメンバー5人でこの曲を披露し収録したものが、同番組で放送されました。
メロディも素晴らしいですが、特に胸に響くのは歌詞。
「ふられたつもりで生きてゆくには」
「駄目になりそうなほど 悲しみが消えない」
いわゆる男の未練の詞。
「いい加減割り切らなきゃならないんだろうけど、どうしてもあなたを忘れられない」と嘆くような想いが綴られています。
よく「昔の恋を忘れられないのは、女より男」とは言いますが、あるいは桑田佳祐自身にも忘れられない恋があって、その気持ちをストレートに書いたのがこの歌詞なのかもしれません。
一般にラブソングの詞は、どちらかと言うと若い人に響くイメージがありますが、過去の恋愛への未練の思い出は、年齢を重ねた人にこそ多いのではないでしょうか。
この曲が世代を越えて愛される理由の一つかもしれませんね。
ポップなリズムに乗る別れの歌を聴いてみてください。
それでは。
Dir en Grey『朔‐saku‐』
今日はDir en Grey『朔‐saku‐』を聴いた感想を。
この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2004年にリリースしたオルタナティブメタルです。
『朔』の意味は「始まり」。
原曲者は薫(Gt)であり、タイトルをつけたのも薫とのこと。
非常に抑揚の激しい曲。
入りの時点で凄まじいシャウト。
聴き手に「これから凶悪な曲が始まる」と伝えているかのような叫びです。
Aメロは歌声が低音ながら、リズムはややラップ調で歌われています。
この手のリズムは一歩間違うとただ軽薄なだけのノリになりがちですが、京(Vo)に発声に艶がある為、曲のダークな雰囲気は損ねていません。
Bメロに入ると一転、出だしと同じように、スクリーモのようなシャウトの連続。
まるで土石流が流れてくるような、ヘヴィな音が押し寄せてきます。
この曲の中でも、特に歌詞カードを見ないと何を言っているのか解らないパートです。笑
歌メロの真骨頂はサビ。
さっきまでのHR/HMのリズムが急激に変化し、ほとんどバラード曲と言えるほど滑らかなメロディに変貌。
京の発声もナチュラルで滑らかに。
もはや違うジャンルの曲を演奏しているかのようです。
メロディの美しさは、Dir en Greyの曲の中でも屈指ではないでしょうか。
大サビでの超高温のファルセットは見事です。
歌詞もさっきまで英詞だったのが、日本詞に。
他のパートとは、伝えたい感情が特別に違うということかもしれません。
一見すると洋楽のような曲なのに、コード進行は伝統的な邦楽のものをなぞっているのもDir en Greyらしさを感じます。
歌詞は、おそらくですが戦争、反戦詞にあたるもの。
「何一つも救えない人達には 両手の中」
「灰と涙と寡黙を」
虐殺される人々を救わない為政者達に、あえて黙りこんだまま、焼き殺された人々の遺体と悲しみを突きつけてやりたい、という想い。
「 赤日に問うは 寡黙と…「 」」
別個の詩集によれば、「」の中には「平和」と入っています。
つまりは第二次世界大戦中の、当時の日本政府に対する「いつになったら平和が訪れるの?」という民衆の意思を、代弁したメッセージでしょうか。
こういう生々しく重い歌詞を、あえてアップテンポの激しい曲に乗せるセンスも「京」という感じがします。
ちなみにPVは、団地に暮らす家族を題材にした少年犯罪がテーマになっており、そのあまりの残酷さから、PV集「AVERAGE FURY」発売の際には内容を一部制限して出さなければならなくなった程。
ただし2006年11月に、アメリカの大手音楽専門チャンネルMTVの人気番組「ヘッドバンガーズ・ボール」で、2005年に新設された視聴者が選定するPV音楽賞(HEADBANGERS BALL PV 2006)に、この「朔-saku-」のビデオクリップが日本のロックバンドの作品として初めて見事グランプリを獲得する、という偉業を達成しました。
京いわく「PVの内容と曲の内容は、あまり関係ない」とのことですが、一つの映像作品としてはとても見ごたえのあるものに仕上がっていると思います。
この作品のノーカットバージョンは、フリーウィルからインディーズ流通で直接発売されたPV集「AVERAGE PSYCHO」で見ることが出来ますので、グロ耐性がある人にはオススメです。
それでは。
キッス『Love Gun』
今日はKiss『Love Gun』について。
アルバム「Love Gun」収録。
この曲、アメリカのロックバンドKissが1977年に発表したハードロックです。
作詞・作曲者であるポール・スタンレー(Vo、Gt)はインタビューで度々「キッスの楽曲の中で最も好きな曲」の一つに挙げてます。
ちなみにタイトルの『Love Gun』は、一説には男性器の比喩であるとのこと。笑
レッド・ツェッペリンの「ハウ・メニー・モア・タイムズ」の「ザ・ハンター」にインスパイアされたものだそうですが
「お前が俺の引き金を引いちまったんだ」
「ラブ・ガン」
のフレーズはストレート過ぎて微笑ましささえ感じますよね。笑
キャッチーながら叙情性を感じる曲。
サウンドは重いですが、Kiss特有の軽快なロックンロールの要素が織り混ぜられており、ヘヴィながら聴きやすい構成になっています。
また、ファンの間ではギターソロの評価がとても高い曲。
実はこのソロは、ロックギターの基本のスケールをそのまま演奏したものなのですが、バックの演奏との絡み、音色、入りのタイミングがジャストな為、この曲の重要部分と言える程素晴らしいソロになっています。
ミュージシャンは、シンプルなプレイにこそセンスが表れるとするのなら、このソロはkiss、及びポールのメロディセンスが再確認できるソロと言えるのではないでしょうか。
そして感動的なのがサビ。
歌メロが覚えやすく、またそれにコーラスが絡むことで、まるで協奏曲のような重厚さを醸し出しています。
名サビ故、ライブにおいてはオーディエンスとの大合唱がお決まりに。
J-Rockに近いキャッチーさは、kissが日本のロックバンドに多大な影響を与えたバンドだということを、改めて感じさせてくれます。
良い意味での「わかりやすさ」がある曲です。
80年代のアメリカンハードロックのかっこよさがモロに詰まった楽曲を是非聴いてみてください。
それでは。
B'z『Don’t Leave Me』
今日はB'z『Don’t Leave Me』について。
この曲は、日本のロックユニットB'zが1994年にリリースしたロックバラードです。
第9回日本ゴールドディスク大賞ベスト5シングル賞受賞曲。
また植木等、東幹久、かとうかずこが出演したことでも知られるドラマ「新空港物語」主題歌としても有名な曲です。
曲調は和製ブルースロック。
序盤はゆるやかなメロディで、後半部分から圧力を増していく展開になっています。
この曲の直前に発表されたシングル「裸足の女神」が王道のJ-POPバラードだったのに対して、まるでアメリカのハードロックのようなサウンド。
最近では珍しくないハイトーンシャウトが、ギターソロ前で披露されているのも印象的。
稲葉浩志(Vo)がB'zの活動の中で、ハイトーンを多用するようになったのも丁度この曲あたりからではないでしょうか。
ちなみに昔ながらのファンの中には本作を「B'zの転換期」と呼ぶ人も。
作曲者の松本孝弘(Gt)自身も、本作の趣旨を
「(『The 7th Blues』からの先行)シングルとして、今までの様なポップな曲も候補にはあったけど、そろそろ目先を変えたものが必要だと思うし、自分たちがいいと思った曲をあえてシングルにした」
と語っていて、「これまでのB'zの型を打ち壊そう」という意図を感じます。
稲葉の歌詞も
「惜しくない 君を失っても」
「本気で思った いい気分で坂を転がり」
と、これからの自分達の路線変更を示唆するようなフレーズが。
前述の松本の「自分達がいいと思った曲をあえてシングルにした。」発言もそうですが、逆に言えばこれまでは「自分達がいいと思った曲はシングルにさせて貰えなかった。あるいはしなかった。」という捉え方もできます。
やはりアーティストとは言え事務所所属である以上、ある程度売り上げを意識せざるを得ないような状況はあって、B'zも「出したい曲が出せない」という葛藤に苦しんだ時もあったのかもしれません。
しかしきっかけは何かわかりませんが、この曲からはその戒めを振り切り、思いきり自分達のやりたいダイナミックなロックサウンドの音楽を発表したわけです。
タイトルが『Don’t Leave Me(離れないで)』で、歌詞にも
「だれもいない ぼくを包んでくれるのは本当にいない」
「IT’S TOO LATE 君の代わりは」
とあるように、心の奥ではファン離れを怖れる気持ちもあったのかもしれません。
だからこそ、その不安を乗り越えてリリースしたこの曲は、B'zのアーティストとしての魂をそのまま体現した作品と言えるのではないでしょうか。
新たなB'zの幕開けに相応しいバラードだと思います。
挑戦の想いが込められた曲を是非聴いてみてください。
それでは。
Gackt『Last Song』
今日はGackt『Last Song』を聴いた感想を。
この曲は、日本のシンガー・ソングライターGacktが2003年にリリースしたロックバラードです。
激しくもデリケートな曲。
穏やかなサウンドのアコースティックギターから入り、その流れでとんどん抑揚をつけながら進行していきます。
途中からロックのヘヴィな成分が増えていきますがメロディは美しいままで、最後はまたアコースティックギターの静かな音で終わっていく。
演奏時間は一般的なポップと同じ位ですが聴き終わると、まるで一本の映画のようなスケールの大きさを感じる曲です。
特にサビの威力は凄い。
演奏陣の音圧も強いですが、Gackt本人の声量の爆発力が見事。
静かなAメロからいきなりドンッとこの声量で迫ってきます。
大音量でもうるさく感じないのは、メロディの良さとGacktの発声の艶やかさの為でしょうか。
歌声はパワフルてすが、歌詞は儚げ。
「寄りそって抱き合った 温もりは忘れないでね」
「違う誰かを愛しても」
別れたあなたは、いつかは違う人のところへ行ってしまうのかもしれないけれど、自分との思い出だけでも大切にとっておいてほしい、という想い。
相手はそれを温かく受け入れてくれたのか、「未練がましい」と突き放したのかはわかりませんが、Gacktの太く男らしい声でこの歌詞を歌われると詞の切なさがより一層、胸に突き刺さる気がします。
あえて強い声で弱さを歌う、というのはGacktの多くの楽曲に共通する事かもしれません。
インタビューでも自分の心の事を「弱いんです。」と談笑混じりで語っていましたが、それを隠さず多くの人々に「これが自分の本音だ」と曝け出す事ができるのが、彼の強さなのかもしれません。
この『Last Song』も、そんな彼の強さと弱さを感じられる音楽になっていると思います。
ベストアルバム『THE SIXTH DAY 〜SINGLE COLLECTION〜』にて再録バージョン
ベストアルバム『THE SEVENTH NIGHT 〜UNPLUGGED〜』にてアコースティックバージョン
ベストアルバム『BEST OF THE BEST vol.1 -MILD-』には、ベストアルバム『THE SEVENTH NIGHT 〜UNPLUGGED〜』のアコースティックバージョンを基にした再録バージョンがそれぞれ収録されていますが、そちらもオススメです。
それでは。