トリヴィアム『Departure』
今日はTrivium『Departure』について。
アルバム「Ascendancy」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドTriviumが2005年に発表したメタルコアです。
構成が素晴らしい曲。
まずダークなメロディの後、キャッチーで美しいサビに。
さらに疾走パートで暗いメロディに後戻り、そして最後には再び情感溢れる大サビに入ります。
メロディックなサビメロと直前のロングトーンでのシャウトとの落差が絶妙。
疾走パートのギターは、彼ららしいスラッシュ感全開のリフです。
Slayerの表現に近いかもしれません。
なによりもサビでのマシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo)の歌声が良い。
シャウトパートとは別人のような、クリーントーンでしっとりと歌い上げられています。
まるで一曲の中コア、ヘヴィメタル、バラードが混在しているよう。
本人が「影響を受けたバンド」として
メタリカ、メガデス、スレイヤー、アイアン・メイデン、チルドレン・オブ・ボドム、アノレクシア・ネルヴォサ等、
計20以上のバンドを挙げるほど、多趣味なミュージシャンなのも理由の1つかもしれません。
万華鏡のような感情表現ができるヴォーカリストですよね。
憂いと激情がせめぎ合う曲を是非聴いてみてください。
それでは。
米米CLUB『君がいるだけで』
今日は米米CLUB『君がいるだけで』について。
この曲は、日本のロックバンド米米CLUBが1992年にリリースしたポップバラードです。
安田成美、中森明菜、東幹久が出演したことでも知られるドラマ「素顔のままで」テーマソング。
3ミリオン受賞曲としても有名な曲。
軽快でムードのある楽曲てす。
そもそもはメンバーのフラッシュ金子と石井美奈子の結婚を祝う為に作られた曲だそうですが、確かに結婚式で家族、親戚を賑やかすには持って来い、という朗らかさがありますよね。
ただし
「儚いものへの憧れだけで」
「すぐ目の前にあることを忘れてた」
と読み方によっては「他の女に目移りしたこともあったけど、心から愛したのは君だけ」という、浮気まがいのことを繰り返した男の愛のメッセージ、とも読めるフレーズも。笑
実際に結婚式場で歌うには注意が必要かもしれません。笑
米米CLUBといえばこの曲以前は「Funk Fujiyama」のようにユニークというか、上質なメロディとあえて茶化したような世界観を組み合わせた、個性的な色彩を帯びたバンドもして知られていましたが、この『君がいるだけで』から大幅に路線変更。
ストレートなJ-POPを演奏するバンドへと変貌を遂げます。
古参のファンからは賛否両論が激しかったそうですが、世間的には大ヒット。
第34回目日本レコード大賞ポップス・ロック部門で大賞を受賞するまでになります(ソニーとしては同曲から、西野カナの「あなたの好きなところ」まで24年間大賞が出なかったとのこと)。
この曲のリリースを境に、米米CLUBは日本の大半の人が知っているメジャーバンドになっていきました。
この曲のヒットの理由は、もちろん有名ドラマのタイアップ効果もあると思いますが、カールスモーキー石井の歌唱力の凄さも捨てられません。
もともとバンド自体、ライブにおいてはミュージカルのようなパフォーマンスをすることでも有名なバンドですが、石井の歌い方もミュージカル俳優のようにナチュラルでよく通る、芯のある発声。
ハキハキしてぶれない歌声は、聴き手に一種の安心感を与えてくれます。
その上でくっきりとした感情表現までしているのが良いですね。
曲の良いところを最大限に引き出せるヴォーカリストだと思います。
ロマンチックながら重くはならない曲を是非聴いてみてください。
それでは。
ロードオブメジャー『親愛なるあなたへ…』
今日はロードオブメジャー『親愛なるあなたへ…』を聴いた感想を。
この曲は日本のロックバンド、ロードオブメジャーが2005年にリリースしたロックバラードです。
「奇跡の扉 TVのチカラ」EDテーマ。
作詞・作曲者共に、北川賢一(Vo)。
ロードオブメジャーの、シングル曲としては初めて
のバラード曲。
バラードとは言っても、サウンドにはロードオブメジャーらしい「メロコア感」があるのが特徴。
透き通るようなメロディに、彼らにパンクなイメージを持っていた人ほど驚いたのではないでしょうか。
一聴しただけだとシンプルな曲のようですが、「アコースティック・ギターを3本使った」と近藤信政(Gt)はコメントしています。
実際はかなり重厚な構成の曲です。
歌詞の内容は、「ラブソング」ではなく「両親への感謝」を歌ったもの。
「平凡だけどそう 暖かく いつでも僕を支えてくれた」
「‘大丈夫”と優しく微笑み合った 家族があった」
平凡、とありますがなんとなく「実際は普通より優しい家族だったんだろうなぁ」と思わせてくれる詞ですよね。
サビに入ると北川が、いつものエネルギッシュな歌い方から、少し繊細な歌い方に変わります。
ただ力強く歌うのではなく、少しナイーブさを感じる歌唱が聴きどころ。
普通の感謝の気持ちの他に「自分を育てるのに沢山の苦労もあったろうに」という、ある意味「申し訳なさ」のような感情を感じます。
ただ明るく感謝するより、ずっと相手の心に届く表現ですよね。
家族に限らず、友人でも恋人でも先輩後輩でも、人によってそれぞれの「自分を助けてくれた人」を思い浮かべながらきいてみるのも良いのではないでしょうか。
それでは。
パンテラ『Mouth for War』
今日はPantera『Mouth for War』について。
アルバム「Vulgar Display of Powar」(邦題:俗悪)収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドPanteraが1992年に発表したスラッシュメタルです。
モダンなHM。
イントロのギターサウンドには鬼気迫るものがあります。
リフには衝撃的なグルーヴがあり、音も太く旋律も美しい。
ハードながらキャッチーさが残るリフメイクは、ダイムバッグ・ダレル(Gt)の十八番ですが、その傾向が前面に押し出されているのが本作だと思います。
ダレルといえばの10代のアマチュアの頃には、アメリカの州全体のギターコンテストで、あまりにも何度も賞を受賞し過ぎて、最終的にはコンテスト出場禁止された程のテクニシャンとしても有名。
そのスキルだけじゃなく、素晴らしいリを生み出すセンスも彼が多くのメタルファンからリスペクトされる所以なんでしょうね。(ちなみに出場禁止された代わりに、審査員を頼まれたとのこと)
前半は聴き手をグイグイと迫っていくようなダイナミックなもの。
しかしギターソロが入った後の後半は、バックに少し哀愁の漂うメロディーが流れ始めます。
あまり大袈裟には流れずさりげなく奏でられるメロディが、かえって強い存在感を発揮。
リズムも速くなり、メタルとしての緊張感もアップます。
一見激しさで押しきる曲のようで、静と動の対比が丁寧にとられた曲です。
「憎悪を前向きな力へと切り替えた時」
「自分がどんな風に変わるかなんて分からない」
歌詞は、強い怒りさえ生きる糧にする、というポジティブな「変化」をテーマにした内容のようですが、まるでそれに伴うように曲の流れも変化。
パワーがありながらストーリー性も楽しめる楽曲です。
凶暴さと冷静さを兼ね備えた曲を是非聴いてみてください。
それでは。
MISIA『Everything』
今日はMISIA『Everything』について。
この曲は、日本の女性歌手MISIAが2000年にリリースしたポップバラードです。
2ミリオン達成曲。
2001年度JASRAC賞受賞。
また、松嶋菜々子、堤真一、矢田亜希子が出演したことでも知られるドラマ「やまとなでしこ」主題歌としても有名。
メロディのストレートさと難解なコード進行とのギャップが、この曲を形作っています。
細かく動き回るコード進行に乗って、滑らかで綺麗な歌メロが流れます。
ベースがそのコードを支えながら、16ビートのドラムが楽曲全体に抑揚を与えている、という感じです。
MISIA自身の歌声も表情豊か。
名物のホイッスルヴォイスを抑え、前半は中音域主体。
ですが普通の歌い方、というわけでも無くMISIAの基盤であるR&Bの要素を織り混ぜたような歌声で、良い意味で日本人離れ。
そしてリスナーが、中音域に耳が慣れてきたところで、後半には転調。
得意のハイトーンヴォイスが爆発します。
高音部を歌っても、声が全く細くならない歌唱は流石の一言です。
バックのゴスペル系のコーラスも、雰囲気を思いきり盛り上げてくれています。
作曲者はJUJUに楽曲提供したこともある松本俊明で、プロデューサーがSMAPをプロデュースしたことがある冨田恵一ですが、7分を超える大作バラードでもダレないのは、この二人の才能も大きいですよね。
実は現在までのところ、2000年代の女性アーティストのシングルとしては最大の売り上げを記録。
男性アーティストを含めても「TSUNAMI」(サザンオールスターズ)、「世界に一つだけの花」(SMAP)、「桜坂」(福山雅治)に次ぎ、4位。
また、20世紀中に達成された最後のミリオンセラー曲でもあります。
名実共に、邦楽史に名前を刻んだバラードだと思います。
ハイクオリティな楽曲にのる日本のメジャーシーン最高レベルの歌唱を堪能してください。
それでは。
T.M.Revolution『BOARING』
今日はT.M.Revolution『BOARING』を聴いた感想を。
この曲は、日本の西川貴教のソロプロジェクトT.M.Revolutionが2001年にリリースしたポップロックです。
村上里佳子、奥菜恵、中村俊介が出演したことでも知られるドラマ「別れさせ屋」主題歌。
T.M.Revolution名義の曲で、アニメ以外のタイアップは珍しいですよね。
曲調はロックですが、とても美しい曲。
メロディ自体はバラードに近いと思います。
ファンからは「バラードじゃないのに泣かせる曲」と呼ばれることも。
西川貴教の歌は全体的にミドル~アップテンポの、ハイスパートなデジロックナンバーが多いですが、この曲は落ち着いた曲が好きな人にも受け入れられると思います。
歌詞は意味深なもの。
「一人立ち」を連想させるような内容ですが
「ボロボロで持って歩いた 想い出は写真のよう
都合いい場面ばかりが 心 弱らせてゆく」
楽しい想い出を思い返すのは心地いい。けれど都合の悪い記憶には触れない。
その癖が、自分を甘やかしていく。
この歌詞の主人公に限らず、この言葉が思いあたる人はきっと世の中に沢山いますよね。
けれど
「そうここから旅立つんだ キレイな淋しさのひとつを抱いて
僕は僕だけに笑えればいい 今は君に手を振ろう」
いつまでも安楽な場所にだけ居られない。
それなら逆境の道でも前に進む。
という力強いメッセージ。
実はプロデューサーの浅倉大介は、この曲を最後に西川貴教のプロデュースを離れてしまいます。
もしかしたら作詞者の井上秋緒は、浅倉大介の決意を知って、まるで「西川貴教が浅倉大介の手から卒業」のような詞を書いたのかもしれませんね。
まぁ浅倉大介は作曲やアレンジには未だに関わっているようなので、離別というよりは主導権を「今の彼ならもう一人で大丈夫」と西川貴教に委譲した、と言うのが正確かもしれません。
誰もが一度は経験する「自立」をテーマにした尊いメッセージソングだと思います。
「旅に出たいけど、穏やかな今の場所に後ろ髪を引かれてしまう」
そんな気持ちになった時に聴いてみるのが良い曲ではないでしょうか。
それでは。
イングヴェイ・マルムスティーン『Crush and Burn』
今日はYugwie Malmsteen『Crush and Burn』について。
アルバム「The Sevnth Sigh」収録。
この曲は、スウェーデンのミュージシャンYugwie Malmsteenが1994年に発表したネオクラシカルメタルです。
Voとして、元Loudnessのマイク・ヴェセーラが参加したことでも話題になりました。
非常に上品なメタル。
イントロの時点で名曲の雰囲気が漂っています。
ベートーベンの悲愴3楽章にインスパイアされたと思われるメロディ。
クラシックの気品を的確にバンド演奏に取り込んでくれています。
また、曲間のいたるところに散りばめられたギターリフも特徴的。
まるでギターで歌っているかのようにメロディックです。
そのリフと絡む、マイクの歌唱も素晴らしい。
歌メロは全体的にハード過ぎずマイルド過ぎずですが、このサビでテンポダウンする展開はインギーの曲の中では貴重ではないでしょうか。
後半のサビでの、歌声がクリーントーンになる部分は至上です。
クライマックスは中盤の、圧巻のギターソロ。
当時のHR/HM界最先端の、速さと美しさが高度に共存したソロ。
日本では、「ロックギターの神」マイケル・シェンカーと対をなす「ロックギターの王者」と呼ばれるイングヴェイですが、その革新的なテクニックとセンスが遺憾なく発揮されたプレイだと思います。
このソロのラストにもイントロと同じフレーズが一瞬の「タメ」と共に出てキーボードと掛け合い、またヴォーカルへとつながっていく流れは絶品です。
場面ごとのメロディの良さも凄いですが、曲間のつなぎのスムーズさも秀逸な曲ではないでしょうか。
男性的な厚い演奏と、女性的な繊細なメロディのコントラストを味わってみてください。
それでは。