マイケル・シェンカー・グループ『Cry For The Nations』
今日はMichael Schenker Group『Cry For The Nations』について。
アルバム「Michael Schenker Group」収録。(邦題:神【帰ってきたフライングアロウ】)
この曲は、HR/HMバンドMichael Schenker Groupが1980年に発表したハードロックです。
マイケルがソロパートでハジける曲。
マイケル・シェンカーが参加した作品は大抵どれもソロが目立つのですが、本作のそれはとにかくクオリティが素晴らしく、長いのに無駄な音なんて1つもない構成になっています。
大部分はマイケルらしいアグレッシブなフレージング。
ですが時折ファンの間でも話題になるように、ハイライトはチョーキング。
とてもスムーズなフィンガリングで、鋭いんだけど澄んだトーンでリスナーを酔わせます。
もともとマイケル自身、現代のネオクラ系ギタリストのような速弾きや、プログレ系ギタリストのような複雑なフレーズを弾くわけでは無く、あくまで古き良きペンタトニックやマイナースケールの中で多彩な音色を表現するタイプのギタリスト。
いわば、王道を極めて本当に王になってしまったようなギタリストなのですが、本作のソロではその突き詰めた正統派ぶりをモロに感じる事ができます。
メロディー自体もかっこよく、古参のHR/HMファンから「名演」と語り継がれるのも納得できるソロです。
バラードチックなイントロからハードロックになだれ込む曲展開もナイス。
そして渋い味を出してくれているのがゲイリー・バーデン(Vo)。
歌唱力には賛否あるボーカリストですが、 この掠れた声のままかかるビブラートが、ディストーションを通り越したファズボイス、といった感じで、80年代HR/HM感が滲み出ている所が良い。
厳密には声域の狭さに批判があったようで、それを理由に後のアルバム「M.S.G.」への出演を最後にマネージャーから脱退させられた程ですが、だからこそ出るのこの「全力で発声してる」感。
声域が広いボーカルはもちろん素晴らしいですが、曲によってはむしろ声域が狭いボーカルが必死に声を出してる方が逆にかっこよくなる作品もあるんですよね。
ある意味ロングレンジの歌い手では出せない味を持っている、という意味でこれも1つの武器。
それにゲイリーはよく「歌は巧くないけど歌メロ作りは上手い」と評され、
「マイケルと僕のコンビは、曲作りに関してはいいものを持っているんだ」
とゲイリー本人も語るように、この『Cry For The Nations』での歌メロもゲイリー無くして決して実現しなかったと断言できるほど、マイケルのギターと美しくグルーヴしています。
往年のファンから「マイケルのグッドパートナーはゲイリーかフィル・モグか」と語られる程のコンビネーション。
このメンバーじゃないと辿り着けない境地です。
時代に流されないスタイリッシュさを持つロックを聴いてみてください。
それでは。