浜田省吾『悲しみは雪のように』
今日は浜田省吾『悲しみは雪のように』について。
この曲は日本のシンガー・ソングライター浜田省吾が1992年にリリースしたポップバラードです。
鈴木保奈美、唐沢寿明、江口洋介が出演した事でも知られるドラマ「愛という名のもとに」のOPテーマとしても有名。
1981年に水谷公生が編曲したオリジナル盤が出ていますが、この星勝がアレンジしたリメイクバージョンは、それより電子音が強調された構造。
と言っても、良い意味で芯は変わっていない、飾り気の無い素朴さが溢れた雰囲気ら生かされたままの曲調です。
この曲の良いのは、やはり歌詞。
「君は怒りの中で 子供の頃を生きてきたね
でも時には誰かを許すことも 覚えて欲しい」
「泣いてもいい 恥ることなく 俺も独り泣いたよ 誰もが泣いてる」
この歌詞が生まれたのは、とあるコンサート期間中。
期間中に浜田省吾の実の母親が危篤になってしまい、移動の新幹線の中で彼は茫然自失。
しかしその辛さの中で、
「悲しみは、決して自分だけにあるのではなく、
たとえばこの車中の他の人にも、車窓から見える人にも、見えない涙を流しながら、みんなに悲しみがあるんだ」
という答えに辿り着き、その想いを歌に代えたのが本作との事。
タイトルの『悲しみは雪のように』の「雪」の意味が仮に“誰にも平等に降り積もるもの”だとしたら、とても痛切なものがありますよね。
特に綺麗だと思うのが入りの
「君の肩に悲しみが 雪のように積もる夜には 心の底から 誰かを愛することが出来るはず」
のフレーズ。
「あなたも深く傷付いた事があるのだろうけれど、そのあなたは他の人の痛みにも気付けるはず」と、ただ傷付いて終わりなのではなく、その痛みを、あえて前を向く為の足掛かりにする。
タイトルで「悲しみ」と言っていますが、決してネガティブなだけではない、むしろ力強さすら感じる詞。
浜田省吾の語るように穏やかな歌声が、逆に歌詞に骨太感を与えています。
「雪」という言葉を使った詞で、こんなに温かい世界を表現した曲は稀有だと思います。
五木ひろし、中村あゆみ、稲垣潤一、広瀬香美…など多くの著名アーティストからリスペクトされ、カバーされている曲ですが、それはプロも一般人も問わず、「誰しも」の心にある悲しみ、影で流している涙に気付き、そっと包んでれる優しさが伝わっているからではないでしょうか。
よくある言い回しですが、「普通である事が普通じゃない」歌なのかもしれません。
皆それぞれで苦しみ、皆それでも生きている、という事を思い出させてくれる曲を聴いてみてください。
それでは。