音の日

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サイモン&ガーファンクル『The Sound of Silence』

今日はサイモン&ガーファンクル『The Sound of Silence』について。


この曲はアメリカのポップスデュオ、サイモン&ガーファンクルが1966年にリリースしたポップバラードです。

映画「The Graduate(卒業)」の挿入歌としても有名。

マリー・ラフォレ、リチャード・アンソニーカーメン・マクレエ、クミコ、ディスターブド …など数々の著名アーティストにカバーされている事でも知られています。



儚げなようで、芯が太い曲。

ポール・サイモン(Vo.Gt)の奏でるフォークギターの音色が、まるで葬式に流せそうなほど穏和で痛切。

けれどサウンドは空しげでも、メロディ、そして歌声に強さ、僅かですが明るさのようなものが感じられ、そのぼんやりとした脆さと綺麗なバランスがとれています。


この曲で印象的なのは歌詞。

「一万、おそらくそれ以上の 話さずに語らう人々」
「聴くことなく聞いている人々」


「「馬鹿」と僕は言った」
「「君たちは本当に知らない癌のような沈黙が育っていることを」」
「僕が諭す言葉を聞いてくれ 僕が差し出した腕を掴んでくれ」
「でも、僕の沈黙の雨粒のような言葉は落ちて、
その沈黙の井戸に、こだました」


社会には様々な重い課題がひしめいている。
それにも関わらずそれに当たり前のように見ないふりをし、「沈黙」する人達への憂いが表現されています。

本作がリリースされた直前のアメリカでは、北ベトナムを北爆、更にたった2年前ではジョン・F・ケネディの暗殺事件など、国家規模で大きな波乱が巻き起こっていた時期。

作詞者のサイモンがそれらを意識して書いたのかは定かではありませんが、そういう社会全体で「その事とどう向き合うか」を考えなきゃならないような事でも、実際にそれと向き合って意見を述べる人は少ないよね、という悲しい独白ともとれる歌詞です。

こういういわゆる「社会派」的な歌詞は、例えばU2「Bloody Sunday(血の日曜日)」のようにリアルな描写が通例なイメージがあります。

しかし本作のソレは、何の問題を指しているのかはあえて語らず、あくまでその問題を「見て見ぬふりをする民衆」側に対する想いが綴られている、おそらく珍しいタイプの楽曲ではないでしょうか。

サイモン自身はこの曲の歌詞に「それほど深い意味はないよ」と語っていますが、読み手側からすれば何かを考えずにはいられない、引き寄せられるものがある歌詞。

陽炎のように、ふわふわしていてそれでいて脳裏に焼きつく鋭さを兼ね備えた作品だと思います。


「無視」を悲しむ想いが、込められた曲を聴いてみてください。



それでは。