音の日

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ディープ・パープル『Speed King』

今日はDeep Purple『Speed King』について。


アルバム「Deep Purple in Rock」収録。

この曲は、イギリスのHR/HMバンドDeep Purpleが1970年に発表した王道ハードロックです。


展開のイントネーションが凄い曲。

全パート大暴れしてるのに、全く破綻していない、むしろ攻撃的に互いを支えあっているような一体感を感じる事ができます。

イントロの時点でかっこいい。

各パートと音が、絡まった糸のように複雑に混ざりあい、ひとつの雷鳴を連想させます。

もはや音の塊。

そして唐突にジョン・ロード(Key)の穏やかなオルガン。

教会音楽のような静謐な品を演出していきます。

そして更に不意に今度はハードロックパート。

スピードメタルでは伝統的な展開ですが、これを70年代初頭に導入していたという事実が驚き。

この『Speed King』はよく音楽評において、

「スピードメタルやスラッシュメタルを含む、後のメタルのスタイルの原型を作った曲」

などと評されますが、この劇的な展開は現代のメロスピファンにも受け入れられるでしょう。

たまに「レッド・ツェッペリンとディープ・パープルの違いは何か?」

という問いに対し音楽ライターからは

ツェッペリンはブルースの要素をバンド音楽に織り込んでいるのに対し、パープルはクラシックを巧みに組み込んでいる」

という解釈が述べられる事もありますが、本作はそのパープルっぽさが如実に表れているところが特徴的です。


また、ジョン・ロードリッチー・ブラックモア(Gt)の龍虎のバトルも健在。

ジョンは本作収録アルバム「Deep Purple in Rock」レコーディング直前から、ブラックモアのスピーディーなギタープレイに負けないように、ハモンドオルガンの音色と弾き方を変化させたそうです。

下積み時代にクラシックピアノを学んでいた影響か、元々は少ししっとりした、なめらかさを重視したタッチのプレイヤーだった印象でしたが、「Deep Purple in Rock」からはロックらしいパワフルなタッチにアップロード。

慣れた弾き方から変化させただけでも相当な負担なはずなのに、その上でこの速弾きまでこなすわけですから、ジョンのストイックさが伝わってくる曲でもあります。

天才肌のプレイヤーのように評されがちな彼ですが、実際のジョンは途轍もない努力家でもあるんですよね。


そして個人的に好きなのがイアン・ギラン(Vo)の歌唱。

若き日のイアンの勢いが詰まった歌声です。

全編の、がなるようなハイトーン歌唱も凄いですが、中間部での超絶高音フェイクは圧巻の一言。

現代メタルはボーカルの高音化が進んだ印象ですが、今この歌を聞き返すと、そんな若手たちに「本物のハイトーンシャウトってのはこうやるんだよ!」と、発破をかけるようなパワーを感じます。

もともと地声、ミックスボイス、シャウトなど多様な歌声を使い分けられるテクニカルな歌手なのですが、本作の歌声はとにかくエネルギッシュ。 

もの凄い圧力でぐいぐいリスナーに迫っていく様は正にクラシック(古き良き)ロック・ボーカリスト

間奏での「ハハハハハハッ!!」の大笑いパートがなんとなくアーティスティック(笑)。

スリリングに叫んだ後にこのユーモラスなイタズラ声は面白いです。

ライブの際にはイアンが「次はとびきりのバラード行くよ」と言った直後に、このハードロックを演奏するという演出も(笑)。

イアンはインタビューにおける理路整然とした受け答えぶりから「知性に溢れたボーカル」などと語られる事もありますが、かと思えばこんなお茶目な一面をのぞかせるギャップも魅力。

一曲の中にメンバーの多様な一面が詰まったロックです。

鮮やかなドライブ感の曲を聴いてみてください。



それでは。