音の日

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ムック『ママ』

今日はムック『ママ』について。


アルバム「葬ラ謳」収録。

この曲は日本のロックバンド、ムックが2002年に発表したロックチューンです。

アルバム名の読みは「ほむらうた」。


攻撃的なようで儚い曲。

アップテンポに妖しいメロディをのせる、という曲構成はムックの十八番ですが、歌メロがいつになく悲しげ。

作詞・作曲ともに逹瑯(Vo)ですが、本人が影響を受けたバンドとして公言しているバンドBUCK-TICKの耽美性に、ややメロコア感を混ぜたような雰囲気になっています。

逹瑯の、全体的にまるで泣き声のまま歌っているような裏返りかかった歌い方が、楽曲の悲しさを直球で表現してくれています。

特にサビでは慟哭しているような声で、特にその表現が激しい。

サビ直前に入るミヤ(Gt)の奏でる情感的なフレーズが、そのサビの勢いを一層後押し。

元々ムックはこの逹瑯とミヤの2人から始まったバンド。

その始まりのメンバーに相応しい、阿吽の呼吸が完璧に揃ったコンビネーションだと思います。


歌詞の内容もとても悲痛。

「ボクの大好きな優しいママ」
「ここに来てから見当たらない」
「ボクの大好きな優しいママ」

「わずかな記憶だった 形の違うママ」
「あなたがボクを捨てて」
「今日ボクは死にました」

飼い主に捨てられて保健所で殺処分される猫の心境を綴った内容。

逹瑯自身が飼い猫(名前はテト)をとても可愛がっている愛猫家の為か、世間の飼い猫をあっさり捨ててしまう飼い主に物申したくてこういう歌詞を書いたのかもしれません。

捨てた飼い主を直接批判する文章ではなく、飼い猫側の視点に立った詞を書く、逹瑯らしいセンス。

猫の視点にたった詞の音楽作品と言えば他にもBUMP OF CHICKENの『K』がありますが、いずれにしても最後に猫は亡くなる、という共通点があります。

ただ、『K』が猫が飼い主との約束を果たす為に奔走する愛に溢れた内容なのに対し、この『ママ』は愛する飼い主に裏切られた猫が主人公の内容という、ある意味真逆にも近い構成。

社会風刺の要素を帯びてるという意味では夏目漱石の「我輩は猫である」の方に近いのかもしれませんが、その重苦しいメッセージが逹瑯の悲鳴にも似た声にのって、痛いほどリスナーの胸に突き刺さっていきます。

インタビューなどでも明るいテンションで話す逹瑯がこういう歌を歌う事でギャップも感じられますよね。

ビートは刺々しいのに、悲しみと無力感が詰まった曲です。


ロマンチックなメロディに切ないメッセージがのった曲を聴いてみてください。



それでは。