音の日

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スキッド・ロウ『Slave To The Grind』

今日はSkid Row『Slave To The Grind』について。


アルバム「Slave To The Grind」収録。

この曲は、アメリカのHR/HMバンドSkid Rowが1991年に発表したヘヴィメタルです。


押せ押せで迫ってくるメタル曲。

「下らないうじ虫共を踏みつぶせ」
「社会制度の奴隷になってたら世界の王にはなれない」

非常に攻撃的な歌詞を叫びながら進んでいく世界観はまさに、王道ロックのイメージそのものです。

元々スキッド・ロウは、下積み時代から仲が良いボン・ジョヴィに事務所に推挙されてデビューしたバンド。

その為、当初彼らの演奏を聴いた事が無いメタラーからは「どうせポップな曲を出すのだろう」的な目を向けられていました。

ボン・ジョヴィ自体は優れたバンドですが、一方で伝統的なHR/HMというにはマイルドなメロディが、正統派メタル好きなリスナーからは賛否あったバンド。

スキッド・ロウはその弟分のバンドという事で、色眼鏡で見られていた風はあったんですよね。

ですが、本作の重いサウンド、凶暴な作風はそんな硬派なメタラーからも評価されました。

結果的に彼らのファン層を拡げる事に一役買った曲でもあります。


本作で男前なのは、ヘヴィメタルにパンクの要素がスムーズに混ざっているところ。

音色の太さ、うねるような音の流れはメタルのそれですが、曲展開はあまり難しい事はせず、ひたすら暴走したダンプカーのように進行していく様はパンクのワイルドなところを踏襲しています。

昔メタルファンとパンクファンは仲が悪い時期があり、1980年代前半ぐらいまではお互い顔を合わせると殴り合いを始める事件すらあったほど。

どうやらフィーリングよりテクニック重視のバンドも多かったヘヴィメタルのファンと、「音楽は本来感情を届ける為のもので、技術を誇示する為のものではない」と、あえてシンプルなプレイにこだわったパンクのファンでは音楽的な価値観に相違があった模様。

しかし80年代中頃に台頭したバンド、S.O.Dによって、ハードコアパンクヘヴィメタルの融合ジャンル「クロスオーバー」のブーム到来。

メタルファンとパンクファンは、徐々に互いの距離が近くなり、今では昔ほどの険悪な雰囲気は漂わなくなりました。

この『Slave To The Grind』の発売時期は、そのブームがピークだった時期の直後ぐらいに発表された曲。

もしかしたらクロスオーバーを意識して生み出した作品なのかもしれませんが、ここまで綺麗な比率でメタルとパンクの要素が混ざった曲も珍しいと思います。

スキッド・ロウというと世間的には「I Remember You」 「18 and Life」の影響でロックバラードのイメージを持っている人も多いバンドですが、そういうリスナーがこの曲を聴いたら、良い意味で衝撃かもしれません。


この曲でユニークなのはセバスチャン・バック(Vo)の早口ボーカル。

基本的にこの曲はデイヴ・スネイク・セイボ(Gt)とスコッティ・ヒル(Gt)の暴風のようなリフ、ソロがメインの曲だとは思います。

けれどバズの捲し立てまくる歌唱もリズムの核を担っており、本作のスピード感を思い切り高めている印象。

バズはバラード曲での熱唱も良いですが、こういうスラッシーな歌唱もここまでナチュラルにこなせる所が魅力的ですよね。

元々この曲自体、完成直後にバズが、メタリカのラーズ・ウルリッヒに聴いてもらって、しつこく頼みこんで太鼓判を押させてアルバムに収録させた曲との事。笑

バズと言えば、メンバーは反対しているのに、「キッスの再結成ツアーのサポートをやりたい!」と捲し立てまくったり、かなり強引な性格で有名ですが、そのマインドが声に表れているのかもしれません。笑

反骨の思いが込められたこの曲を歌うのにピッタリのボーカリストです。


何もかもなぎ倒すような反逆精神の詰まったメタルを聴いてみてください。



それでは。