ニルヴァーナ『Smells Like Teen Spirit』
今日はNirvana『Smells Like Teen Spirit』について。
アルバム「Nevermind」収録。
この曲は、アメリカのオルタナティブロックバンドNirvanaが1991年に発表したグランジです。
泥くさくかっこいいグランジ曲。
イントロからたった4つのパワーコードをそのままほぼ全編に展開させる、という非常にストレートな構成です。
その為じっくり聴き込むと、まるで規則的に揺れる振り子を見つめ続けた時のような、ふわふわした酩酊感を味わう事ができます。
全米チャート6位の結果が、その魔性の魅力の強さを表しているのではないでしょうか。
実は当時、90年代初頭のアメリカでは、まだテクニカル系のメタルブームの風がまだ残っていたためか、このシンプルな作りには、その時代の評論誌からは批判も多かったんですよね。
しかしその一方で、一部の評論誌では特集記事を組まれたり、その後多くの若手ミュージシャンが「自分達もこういう曲をやりたい」とインスパイアされ始めます。
今では多くの評論家、音楽関係者から「90年代における重要な曲」とまで語られ、メジャー受けもマイナー受けもする、グランジの「古典」の位置にまで昇り詰めました。
そういう「始めは賛否両論激しかったけど、後に高く評価された」という部分は、イギリスのプログレッシブ・ロックの古典、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を連想させます。
また、カート・コバーン(Vo.Gt)の声も凄い。
まるで後のリンキン・パークのチェスターのような轟音シャウト。
どっから声が出てるんだろう、という程のガラガラ声が曲に込められた怒りを見事に体現しています。
カートもチェスターも、ダークでその時代の等身大の若者の想いを代弁するような作詞が得意、という共通点があります。
ガラス細工のような繊細な詞を、男らしい叫び声で歌われると逆にリスナーの心に刺さる。
当時のカートのマネージャー、ダニー・ゴールドバーグはカートの歌声を
「彼の声は弱さとともに、稀にしかない親密さをかねそなえていた」
「彼の歌を聞くとみんな、『自分だけが違うんじゃない』『一人じゃない』と感じることができたんだ」
と語っていますが、本作はそれを明確に表した歌声ではないでしょうか。
個人的に好きなのはラストのサビ。
これまで同じようなリズムのコード進行だったのに、ここだけコードチェンジが早くなっています。
野球のピッチングでいうチェンジアップのようなドッキリ感が、快活なスリリング感を演出。
シンプル一本で攻めるのかと思いきや、後半の一度の変化球で聴き手を驚かせる。
トリックを効かせるのにもあまり大袈裟な事はしない所が好印象です。
隅々まで無駄が無く、本当に必要な音だけが詰め込まれている作品だと思います。
素直で、だからこそ熱い声が引き立つ曲を聴いてみてください。
それでは。