藤谷美和子と大内義昭『愛が生まれた日』
今日は藤谷美和子と大内義昭『愛が生まれた日』を聴いた感想を。
この曲は日本の藤谷美和子と大内義昭が1994年にリリースしたポップバラードです。
ドラマ「そのうち結婚する君へ」の挿入歌としても知られています。
歌メロが素晴らしい曲。
作曲は羽場仁志。
中森明菜の「無垢」や「花よ踊れ」を手掛けた人ですが、少し悲しげで、けれどか弱いわけでもない、歌謡曲美点が詰まったような美旋律です。
男女のデュエット曲には、男性のキーと女性のキーでのユニゾンも多いのですが、本作の特徴は、男女のデュエット曲にも関わらず、キーが同じである事。
藤谷美和子は通常の女性キーで歌っているのですが、大内義昭は男性ボーカルとしてはかなり高いキーで歌っているんですよね。
最高音部分に味があって、高い声でも張り上げる感じじゃなく、ややファルセット気味の、透明感のある声で歌い上げられています。
叙情的な歌メロであえてシャウトする表現もありますが、このナイーブな演奏の曲では、この歌い方の方が好感が持てます。
大内義昭は、もともと小比類巻かほるの「Hold On Me」の作曲したりと、世間ではポップロック畑の人、というイメージがあったアーティスト。
それが、後にこういう歌謡曲+ポップバラード、のような歌を歌った、というところもユニークですよね。
メロディはセンチメンタルですが、歌詞は前向き。
「天窓の星より 近くが美しい 未来で一番 輝く過去を 過ごしている」
「愛が生まれた日 忘れない 生きてきたその理由(わけ)を… あなたがいれば それだけでいい …めぐり逢えた」
歌詞がデリケートなぶん、ポジティブな歌詞に逆に説得力を増します。
作詞は秋元康。
「天窓の星より 近くが美しい」という形容詞が綺麗。
89年に美空ひばりに「川の流れのように」の詞を提供した事もありましたが、その時の
「ああ川の流れのように とめどなく 空が黄昏に染まるだけ」
に匹敵する美しさを放つ詞だと思います。
かつては「おニャン子クラブ」、現在では「AKB48」と、バリバリのアイドル界隈のプロデューサーも80~90年代はこういう作風にも挑戦していたんですね。
AKB48の「少女たちよ」のワンフレーズ
「人の目に触れる星と 気づかれない星 そこにはどういう差があるの?」
など現在の秋元康にもいえる事ですが、彼は星や空を使った表現が巧み。
「作詞家として、メロディを倒すくらいの勢いで詞を作っているように感じる」
と評した事がありますが、この一度読んだら忘れられない、インパクトのある言葉選びのセンスは彼の真骨頂。
内容も、その表現法も読み手の心に優しく突き刺さるようなパワーがある歌詞です。
悲しげなメロディと、あたたかい詞のギャップを楽しんでください。
それでは。