音の日

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米津玄師『馬と鹿』

今日は米津玄師『馬と鹿』について。


この曲は、日本のソロアーティスト米津玄師が2019年にリリースしたポップロックです。

ラグビーワールドカップ2019テーマソング。

また、大泉洋松たか子高橋光臣が出演した事でも知られるドラマ「ノーサイド・ゲーム」の主題歌としても有名。


摩訶不思議な曲。

これと似たものをほとんど聴いた事がない、というほど独特なメロディで、聴き手を未開の空間に連れ去っていきます。


特徴的なのは、転調の多用。

転調と言えば、有名なのはTHE ALFEE
海外では、ジャンルは違いますがブラジルのエルメート・パスコアールなど他にも名手はいます。

しかし米津玄師の場合、メロディがダークの為、聴いているとまるで、アーティスティックなノイローゼもでも言うべき異色感をリスナーに感じさせるところが印象的。

実は、有名な「海の幽霊」の作曲直後で、精神的に疲労困憊の状態の時に作った曲。

本人いわく燃え尽き症候群のようになってしまい、「頭がおかしくなった」感じが出ていると自己評価していましたが、本作もそれこそ海の底をさまよっているような深淵さを漂わせています。

こうしたファンタジックな作曲傾向は、ニコニコ動画で「ハチP」名義で作品投稿していた頃からみられましたが、この『馬と鹿』はそれを一層濃縮したような、「米津っぽい」曲。

しかしただダークなだけじゃなく、ポップなリズムが緩和材となり、ミステリアスであっても不気味ではないところが、美しい配合比率です。


緩和材と言えば、歌詞はとてもピュア。

「呼べよ 花の名前をただ一つだけ」

「歪んで傷だらけの春」

ここでの「花」とはおそらくラグビー日本代表のエンブレムの桜。

元々、この曲自体、米津が「主人公が逆境の中を進んでいく様をどうにか音楽にできないかと探った末にできた曲」と語るように、困難と戦うラグビープライヤーをテーマにした作品。

「歪んで傷だらけの春」は、激しいプレイで、桜のエンブレムがぐしゃぐしゃになったユニフォームの事を指しているようですが、いつもアンニュイな米津玄師がこんな熱い歌詞を書いたのかと思うと、ギャップが面白いですよね。

一見すればドロドロしていて、コアな層にのみ受けそうな作風。

にも関わらずチャート上位に食い込む事が出来るのは、一般の人にも伝わる、温かさのような一面も持っているからなのかもしれません。

以前共演した、「Foorin」のもえのから、「クールな方かと思っていたら、すごく優しい方だった」と評された、彼の人柄が垣間見える楽曲です。


退廃的なホスピタリティーを感じる事が出来る曲を聴いてみてください。



それでは。