パール・ジャム『Once』
今日はPearl Jam『Once』について。
アルバム「TEN」収録。
この曲は、アメリカのロックバンドPearl Jamが1991年に発表したグランジ・ロックです。
二面性がかっこいい曲。
グランジというにはハード、メタルというにはややマイルドな、ピンポイントで隙間を縫うような激しさで、破壊力と軽快さを兼ね備えた爽快感があります。
静かなイントロからギターが入る、というロックの王道展開ですが、入るのが「ちょうどここに欲しい」といい最高のタイミングの為、絶妙なフィット感を演出しています。
ストーン・ゴッサード(Gt)の奏でるリフも、スタイリッシュ。
疾走感もあるのですが、うねりもあって男らしい野性的圧力を放っています。
男らしいと言えば、エディ・ヴェダー(Vo)の声質も凄い。
たとえは70年代のザ・メタルボーカルのような荒々しい声、太さ。
全打席フルスイングみたいなもので、押しが強すぎて好き嫌いはあるかもしれませんが、他のどんなに歌の上手い歌手が歌ってもこの味は出せないだろう、と思わせる濃密なエネルギー量を放出。
中音域主体で歌うグラハム・ボネットのようないう熱さで、メタルの古典的なかっこ良さを求める人には、思い切りフィットする声ではないでしょうか。
そして、さりげにキレが良いのがマイク・マクレディ(Gt)のギターソロ。
伝統的なメロディなのですが、音の運び方、とても的確な濃度のワウがかけられていて、硬派な曲調にそっと色をつけています。
基本的には荒っぽい楽曲でも、どことなくカラフルに聴こえるのは、この艶のあるソロの要素が大きい。
あまりメロディックだとグランジのパンチ力が薄くなり、かと言って攻撃的なだけだと、どこかチープになってしまう。
オルタナ的かっこよさを保ちながら、古き良きHR/HMのようにソロで魅せる。
グランジ自体は、HR/HMと比較すればやや新しいジャンルですが、古参のHR/HMファンの鑑賞にも耐えうるレトロさが香るところが本作の芯。
綺麗なビンテージ感と、細やかな飾りが楽しめる曲です。
猪突猛進の中にもフックがあるグランジを聴いてみてください。
それでは。