フェア・ウォーニング『Long Gone』
今日はFair Warning『Long Gone』について。
アルバム「Fair Warning」収録。
この曲は、ドイツのHR/HMバンドFair Warningが1992年に発表したロックバラードです。
洋楽らしさと、らしくなさの共存が魅力的な曲。
ドイツのバンドの楽曲ですが、ジャーマンロックというよりはむしろJ-Rockよりで、あくまで歌で聴かせる作品、といった感じです。
イントロでは物憂げというか、80年代の邦ポップスのような寂しさがあります。
綺麗なのですが、どこか「懐かしさ」があり、聴き手に青春の思い出を連想させるようやノスタルジーが漂う旋律。
一気に感動するというよりは、じんわりと、胸に染み込むようなメロディです。
サビでは、まるで真逆のようにインパクトのある音圧に。
そもそもがハードロックバンドであるフェア・ウォーニングらしく、サウンドは大型車のタイヤのように厚い。
ですが、メロディは優しくて、まるでボン・ジョヴィのバラードを連想させます。
楽曲後半の、トミー・ハート(Vo)の切迫感のあるシャウトは必聴で必殺のパート。
切ないイントロから始まって、明るいサビを通って、とどめに激しく張り叫ぶ、という最高の揺さぶりでリスナーを蕩けさせる構成。
そのシャウトもロブ・ハルフォードのような攻撃的なものというよりは、トミー特有の甘さがあるもの。
この声で
「僕たちの愛が終わってしまうと分かっても
そこにすがることはしなかった」
「理由を探そうとも思わなかった」
「それでも僕たちの過ごした時間は 決して間違っていなかったと思う」
というセンチメンタルな歌詞を歌うのだから、更に味わいが増します。
歌もさることながら、アンディ・マレツェク(Gt)のギターソロも良い。
フェア・ウォーニングというとヘルゲ・エンゲルケ(Gt)のスカイギターが有名ですが、アンディのテクニカルながらトーンの美しいソロもヘルゲとタイプの違う存在感があると思います。
作品自体、かなりロックバラードの教科書のように王道なのですが、それでも個性を感じられるのはメンバーがそれぞれ自分らしい音色でプレイしている所が大きい。
古典的であっても平凡ではない曲です。
鉄の硬さと、羽根の柔らかさを持つバラードを聴いてみてください。
それでは。