MY FIRST STORY『不可逆リプレイス』
今日はMY FIRST STORY『不可逆リプレイス』を聴いた感想を。
この曲は、日本のロックバンドMY FIRST STORYが2014年にリリースしたオルタナティブ・ロックです。
宮野真守、 梶裕貴、水樹奈々が声優として出演している事でも話題になったアニメ「信長協奏曲」の主題歌としても有名。
大嵐のように、様々な展開で攻めこんでくる曲。
ドラマ性という尺度において、MY FIRST STORY作品の中で随一の多様さを持っています。
イントロの時点で非常にユニークで、ロック曲には珍しい3部構成。
大抵は1~2部で程々に終わらせて、すぐに歌に入る、という流れが一般的な流れ。
ですが本作は、出だしの段階でじっくり時間をかけて聴き手を引き込んでいきます。
入りの一部はミステリアス系。
ストリングスを主体とした、ひんやりとした神秘的な佇まい。
洋楽のパワーメタル曲のイントロを連想させます。
そして次の2部ではバンド演奏が開始。
リズム隊が奏でるエネルギッシュなビートに、ハーモニクス奏法を主体としたギターがのる、という贅沢な構造です。
この辺りから加速感を発揮。
更に3部ではギターソロパート。
ハードロック的なソロなのですが、少し影があるメロディ。
まるで、これから始まる歌の本質の前フリをしてくれているかのようです。
これだけ沢山の要素を詰め込みまくって、まだイントロが終わっただけ、というところが面白いですよね。
ここからのHiro(Vo)の歌が始まりますが、それがとても味のある中性ボイス。
はじめて聴いた時、一瞬男なのか女なのかわからなかったほど。笑
透き通りながらも歪みのかかったヘッドボイスで、トータルの声域は3オクターブにまで達する勢い。
この曲がロックでありながらも、どこかメタルチックな香りを漂わせるのはHiroの要素も大きい気がします。
かかったリバーブが声の存在感を更に強めているところが特徴的。
彼の声は音域や歌唱法も魅力的ですが、大胆な感情表現も凄い。
作品自体も押して引いて、引いてはまた押しを繰り返す抑揚の強いものですが、それに合わせて強弱を変え、エキサイティングに声の色合いまで変化させる彼の表現力も本作の最高の聴きどころの1つです。
元々彼自身、実は父親はあの森進一、母親は森昌子。
しかも2人いる兄のうち、ひとりは元NEWS・現ONE OK ROCKのTaka、という超がつく音楽サラブレッドなんですよね。
歌手の両親と兄に囲まれて、音楽的感性が養われたのかHiro自身の生来的なセンスなのかは解りませんが、この『不可逆リプレイス』の激情的の感情剥き出しな作風にこの上なくフィットした歌声ではないでしょうか。
「絶対的「僕」の存在は 形を変え今響き渡る」
独特な言葉選びで難解な歌詞と、ハッキリして解りやすい歌唱表現のコントラストも本作の美点の1つ。
野性的なドライブ感と理知的な工夫の両方が楽しめる作品だと思います。
めちゃくちゃに攻撃的なのに、ガラス細工のように微細に磨きぬかれた楽曲を聴いてみてください。
それでは。