音の日

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鬼束ちひろ『月光』

今日は鬼束ちひろ『月光』を聴いた感想を。


この曲は、日本の女性シンガー・ソングライター鬼束ちひろが2000年にリリースしたポップバラードです。

第33回全日本有線放送大賞新人賞受賞曲。

仲間由紀恵阿部寛生瀬勝久が出演した事でも知られるドラマ「トリック」の主題歌としても有名です。

累計売上は50万枚以上で、シングル作品としては彼女の自己最高を記録した曲。

徳永英明がカバーアルバム『VOCALIST 4』で、

SoulJaがアルバム『Letters』で本作をカバーした事でも話題になりました。


曲はピアノとストリングス主体でもの静か。
まるで途方にくれるように儚げな雰囲気をかもし出しています。

しかしただ静かな曲では無く後半では転調を交え、楽曲に込められた感情をよりストレートに吐き出すような表現に。

歌声も楽器の音色もデリケートなのに、不思議と爆発力があるのが特徴的です。

ちなみに使用楽器がピアノとストリングスである理由は、アレンジ担当の羽毛田丈史いわく

「ピアノだけでは強烈な歌詞には脆弱で、バンドでは楽曲の持つ美しさや儚さが損なわれる恐れがあるため、ピアノとストリングスカルテットを採用した」

とのこと。

結果的にはその狙いは大成功だったと思います。


歌詞のテーマは「抑圧からの解放」。

「I can't hang out this world(この世界を掲げる事など出来ない)」

「How do I live on such a field?(こんな場所でどうやって生きろと言うの?)」

世の中に対する不信感で満ち溢れています。

結局、詞の最後まで特に前向きな内容に変わっていく事もなく、終わりでまで

「こんな思いじゃ どこにも居場所なんて無い」

と叫んで幕を閉じます。

凄いのはこの曲のリリース時、鬼束ちひろはまだ19歳という事。

その若さでなぜこんなに人々に背を向けるような想いに至ったのかは解りませんが、この悲観的というかな詞でメジャーシーンでヒットしたのは、ある種の偉業。

逆に言えば、それだけ多くの人が自分の立ち位置に不安を感じている、という事なのかも知れませんね。

アタマから終わりまでほとんど絶望だけを呟く、というのは、有名曲としては珍しいパターンだと思います。


日常の中で思わず息苦しさや閉塞感を感じた時に聴きたくなる曲ではないでしょうか。



それでは。