音の日

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Dir en Grey『Clever Sleazoid』

今日はDir en Grey『Clever Sleazoid』を聴いた感想を。


この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2005にリリースしたロックチューンです。

映画『DEATH TRANCE』のエンディングテーマとしても知られています。

一曲の中で沢山の表情を見せてくれる曲。

AメロではインパクトのあるデスVoでのウィスパーから始まりますが、中間部ではメロディアスなハイトーンな歌メロに豹変します。
そのパートは圧力がありながら歌声はクリアです。

Dir en Greyの曲といえば、一曲の中で京(Vo)が様々な声色を使い分けることでも知られていますが、それがここまで多彩な作品も珍しいと思います。


歌詞から感じるのは、強い怒りと無力感。

「右、左、前、後ろから絶望と苦痛が溢れ出す」

「夜は冷たく長い 」
「夜空は深くそして広い」

実はこの曲の発表直前、京は本人も自覚していた程、精神的に追い詰められていたとのこと。

突然夜中に飛び起きてパソコンを叩き壊す、そのまま風呂の桶に2、3時間いる、等とても危険な状態だったようです。

この曲のインタヴューの際には「一年後ぐらいには、歌を止めてるかもしれない」とまで答え、記者を驚かせたことも。

タイトルの『Clever Sleazoid』は直訳すれば「賢くて、低俗な人達」ですが、これは「そういう気分にさせる周りの人間を指している」とも語っています。

いわゆる自暴自棄状態だったのかもしれません。

しかし、そうした苦悩の中から生み出された本作はリスナーからは評価され、これだけハードな曲調にも関わらず、オリコンチャートで最高10位を獲得しました。

素晴らしい作品は、ジャンルの垣根を越えて人の心に届くものなのかもしれませんね。

個人的にはこの

「声も出ないくらいに…そんな今に一人と気付く」

の部分が好きです。

他の歌パートは攻撃的な声なのに、ここだけキーも声量も下げて、囁くように歌われています。

詞の内容も他は殺伐としているのに、ここだけ弱音を吐いたように儚げ。

まるでさっきまでキレて暴れまわっていた人が、急に黙りこんで、静かに涙を流しているようです。

この暴力性と弱さを織り交ぜたような表現はDir en Greyの得意分野ですよね。


アルバムThe Marrow of a Boneには再録verも収められているのでそちらもオススメです。



それでは。