音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

キッス『Rock and Roll All Nite』

今日はKiss『Rock and Roll All Nite』について。


アルバム「Dressed To Kill」(邦題:地獄の接吻)収録。

この曲は、アメリカのロックバンドKissが1975年に発表したロックチューンです。


キッス作品の中でも最高にテンションが上がる曲。

コード進行がとてもオーソドックスで、ギター初心者の人が練習曲にもよく使うほど簡単なのですが、だからこその軽快さがリスナーの心を心地好く打ってくれます。

「ロックンロール・オールナイトはパーティー・ソングではなく“人生のお祝い”なんだ」

とメンバーのポール・スタンレーが語っているように、単なる盛り上げ用の音楽では無く、どことなく深層心理からじわじわと高揚感が沸き上がってくるような、深みのある愉快なリズムになっています。

「みんなが僕らをノらせてくれるから」
「僕らもそれに答えたい だから本気で演奏するんだよ」

ライブでファンに語りかける為に書いたと思われる、歌詞も熱いです。


この作品の好きなところは、遊び心。

ファンの間では有名なエピソードですが、本作に入ってるコーラス、手拍子はキッスのロード・クルー、スタジオ・ミュージシャンやピーターの奥さんによるものなんですよね。

しかもロード・クルーはジャケットのジッパーを上下して、その音すら効果音にしたり。笑

クラシックの世界でも、1950年にルロイ・アンダーソンが「タイプライター」においてオーケストラ演奏に実物のタイプライターの音を織り交ぜる、というユーモラスな構成の作品を発表した事もあります。

音楽は真面目でシリアスな構成の曲もかっこいいですが、時にはこういう少年のような無邪気さを楽しみたくなる時もありますよね。

多分、この曲が隅から隅まで「遊んでいる」曲ならこの演出を良く感じなかったかも知れません。

楽曲の大部分が、古き良き伝統を継承した王道さを持っているから、この演出も引き立つのだと思います。

ロック創世記を思い出させてくれる、ロックの「根」を感じさせてくれる所が、この作品の本質。

エディ・コクラン「C'mon everybody」、チャック・ベリーの「You Never Can Tell」のような、時代を越えた普遍性を持つ曲です。

ロックンロールの原点を思い出させてくれる曲を聴いてみてください。



それでは。






ラウドネス『S.D.I』

今日はLOUDNESS『S.D.I』について。


アルバム「HURRICANE EYES」(ハリケーンアイズ)収録。


この曲は、日本のHR/HMバンドLOUDNESSが1987年に発表した正統派へヴィメタルです。


二井原実(Vo)の歌声が暴れ狂う曲。

開始3:04付近での、ロングトーンの高音シャウトは、まるでメタルボーカルの魂がそのまま声になったようです。

この深くかかったビブラートを聴いていると、そのリズムに合わせてこちらの鼓膜が揺さぶられていくような錯覚に陥ります。

本作収録アルバムをリリースしてから数年後、二井原実は喉を痛めてしまい、一時的に高音域が出せなくなってしまいました。

ただしその後、リップロールを中心としたボイストレーニングに没頭し、若い頃と同等以上の高音域を復活させ、現在では完全にハイトーンボーカルとしてのパワーを取り戻す事に成功。

そのボイストレーニングのおかげか、純粋な歌唱力では現在の方が凄いと思うのですが、この若い頃ならではの「力で押し切る!」的な声が荒削りな魅力を醸し出しています。

また中間部での、デスボイスに近い低音シャウトなどの試みも面白い。

以前彼はブログで「デスボイスが苦手」という事を語っていましたが、これだけの低音で叫べるなら、強いデス声が出そうな気もしますよね。

ラウドネスはそういう毛色のバンドでは無いにしろ、低音デスボイスと高音シャウトを使い分ける二井原実の歌も聴いてみたいです。


そして粋なのが、山下昌良(Ba)のベースプレイ。

スピードプレイも凄いですが、音の粒立ちが素晴らしい。

特にデビュー当時は、かなりのテクニック路線のベーシストだった印象ですが、「複雑な音階が弾ける」という事以前に、サウンド自体の骨太さが秀逸なんですよね。

並みのベーシストが同じフレーズを弾いたとしてもこの重量感は出せないでしょう。

Bメロでの小回りの効いたフレーズでのプレイは本作の隠れたハイライト。

この曲は、ラウドネス名物の高崎晃(Gt)のボス・ハンド(両手)タッピング、イントロでの樋口宗孝(Ds)の大砲ドラミングなど聴きどころが多い曲。

ですが、この曲は山下昌良(Ba)の縁の下の力持ち感が光る作品だと思います。

柴田直人のワイルドなゴリゴリサウンド、木本高伸の丁寧な超正統派プレイも良いですが、本作は山下昌良のへヴィな存在感のあるサウンドが、いかにラウドネスに貢献しているかが解る作品です。


多彩な声色と、多彩な演奏テクニックのWパンチのメタルを聴いてみてください。



それでは





GLAY『嫉妬 (KURID/PHANTOM mix)』

今日はGLAY『嫉妬 (KURID/PHANTOM mix)』を聴いた感想を。


アルバム「ONE LOVE」収録。

この曲は、日本のロックバンドGLAYが2001年に発表したポップロックです。


ピリッとスパイスが効いた曲。

普段ポップ色が強いGLAYとしてはロック成分が濃い目で、ひんやりとスリリングな空気を纏っています。

「However」など、温かい曲のイメージをGLAYに持っているリスナーには新鮮に響くのではないでしょうか。

「口唇」や「誘惑」と並ぶ漢字2文字3大巨頭の一角あり、サビでの派手な転調など共通項もあります。

ただ、電子音が目立つという意味では、どちらかというと「口唇」よりかもしれません。

本作の名脇役はまさにその電子音で、硬派なロック調の曲に、ファンタジックなデジタル音が随所にまざる事で、男らしいんだけどクサくはない世界観を描写。

おそらくマニュピレーション担当(パソコンを使ったアレンジ)の草間敬の芸当だと思いますが、このデジタル音を、「バンド感」を壊さない程度に織り込むセンスは絶妙。

くるりの「ワンダーフォーゲル」でも見られた、細やかなのに存在感の強い音使いスキルは本作でも健在です。


そうしたアレンジも良い曲ですが、単純にメロディもかっこいい。

キャッチーですが、転調時にまる1音も上に上がるため、まるでアクセルを思い切り踏み込んだようなインパクトがあります。

「Believe in fate」で聴けるような、畳み掛けるような連続系の転調も良いですが、こういう「ためてためて一気に爆発!」みたいな転調も粋。

ポップなGLAYも魅力的ですが、こういうパンチ力のある曲も作れる2面性がGLAYの真骨頂ですよね。

TAKURO(Gt)がシングルとしてリリースしようと提案したのも理解できる曲です。
(なぜかTERU(Vo)、JIRO(Ba)、HISASHI(Gt)が反対した為に実現しなかったそうですが笑)


刺すような緊張感のあるGLAYを聴いてみてください。



それでは。





ストラトヴァリウス『Eagleheart』

今日はStratovarius『Eagleheart』について。


アルバム「Elements, Pt. 1」収録。

この曲は、フィンランドHR/HMバンドStratovariusが2002年に発表したパワーメタルです。


非常に洗練された曲。

一般的にメタル曲と言えば、アップテンポに重いサウンドを合わせるというコンセプトのジャンルですが、テンポはミドル、音もむしろ軽快。

パワーメタル界隈の中でも、異色の世界観を醸し出しています。


特に印象的なのが、ティモ・トルキ(Gt)のギター。

音が本当に少ないんですよね。

イントロとソロでメロディは弾いてますけど、それ以外は合間に少しコードを弾くのと、合間で短くまたメロディを弾くのみ。

この曲がリリースされた同時期には、ドラゴン・フォースが、まるで洪水のよう音数のギターでパワメタ界に台頭していましたが、そうした流れに反するような素朴なプレイです。

おそらくはティモ・コティペルト(Vo) の歌う、美しい歌メロを映えさせる為の、あえて抑えた演奏。

日本なら歌謡曲の文化があった為か、HR/HMバンドが歌メロを引き立てる為に他のパートはセーブした演奏をする、というのはある程度珍しくはありません。

しかし北欧のバンドで、このレベルまでギターを抑えるタイプの曲は珍しいのではないでしょうか。

本作の作詞・作曲はティモ・トルキ(Gt)。

その気になればもう少しギターが目立つ曲を作る事も出来たのに、あえて自分が前に出まくるより、バンドとしてのグルーヴを優先するトルキの音楽に対する真摯さが伝わってきます。

「Stratosphere」で聴けるような高速スウィープのトルキも良いですが、あえて音を減らした、すらりと研ぎ澄まされたトルキのギターも男前。

「一番重要なのは曲。だからこそ、まずは何よりも曲が良くなければならない。ギターソロを弾いたりキーボードソロを弾いたりしても、すべての人がわかってくれるわけじゃないよね」

と彼自身が語っているように、トルキの音楽哲学が明快に表現された曲ではないでしょうか。


軽やかで厚みのある曲を聴いてみてください。




それでは。





ノクターナル・ブラッドラスト『Malice against』

今日はNOCTURNAL BLOODLUST『Malice against』を聴いた感想を。


アルバム「ZēTēS」収録。

この曲は、日本のHR/HMバンドNOCTURNAL BLOODLUSTが2016年に発表したメタルコアです。


もの凄い演奏力。

一時期ヴィジュアル系というと「外見先行で演奏が上手い人が少ない」という声もありましたが、このバンドのこの曲で使用されているテクニックは別格。

ブラストビート多用の高速ドラムに、多弦のギター、ペースがのって、鮮やかなド迫力サウンドを演出しています。


本作の芯は、なんと言っても多彩さ。

基本的にはメタルコアだと思いますが、リズムパターンの急激な変更。

そこにシンフォニックサウンドの導入など、同じバンドが演奏しているとは思えないほど、多くのアプローチが共存しています。


尋(Vo)の声のレパートリーも凄い。

デス声、超低音のグロウル、ややシャウト混じりのベルカントなど、畳み掛けるように変化を重ねていき、声だけで1つのストーリーを描写。

昔、一小節で様々な声色を使い分ける美空ひばり
歌声は「7色の声」と表現されましたが、さしずめこの尋の声は7色の叫び。

体つきも鍛えぬかれていて、どこのNBAのPGだと錯覚するほど、ガチムチの筋肉。

その体から発せられる声は海外デス・スラッシュVoに引けを取らない音圧を誇ります。

細身で中性的なプレイヤーが多い最近のヴィジュアル系の中では、かなり異彩を放っているのではないでしょうか。

激しい曲調なのですが、前述のメロディックなシンフォニックサウンドなど、どこかヴィジュアル系の耽美性を感じさせてくれる所が印象的です。

インタビューで本人達も

「それぞれまったく色の違うジャンルの技法を融合させているんです」

「自分が影響されてきたルーツを散りばめてます。単純に歌ってるわけではなくて、ラウド・ミュージックの、あらゆる年代の人が特定の部分で聴き覚えのあるパーツが存在するように工夫しました。」

と語っているように、多岐に渡るメタル、コアの要素を凝縮させた所から生まれるドラマ性こそが本作の個性。

個人的に、こういう一曲の中に多くのジャンルを取り入れたタイプのメタルはとても好きです。


日本シーン最高ランクの演奏力と、ヴィジュアル系特有の華やかさが混在した楽曲を聴いてみてください。



それでは。





ソナタ・アークティカ『Blank File』

今日はSonata Arctica『Blank File』を聴いた感想を。


アルバム「Ecliptica」(エクリプティカ)収録。

この曲はフィンランドHR/HMバンドSonata Arcticaが1999年に発表したパワーメタルです。


まるで何かと戦っているような曲。

SF大作映画のような重厚なメロディの塊が、パンキッシュな超速リフにのり進行していきます。

始まりがドラムから、というのがユニーク。

日本でもXjapanの「Sadistic Desire」など何曲か前例はあるのですが、 メロスピ界全体から見ると少し珍しい構成ではないでしょうか。

ソナタはライブでもXの「Silent Jealousy」をカバーしていて、トニー・カッコ(Vo.Key)は来日した時プライベートでカラオケで歌ったりしているんですよね。

上級メロスピバンド同士で何処かしらセンスが近い所があるのかもしれません。


この曲の聴きどころは間奏部での、トニーとヤニ・リーマタイネン(Gt)のバトル。

両者ともに狂ったようなレベルでの音数&スピードで、きらびやかな圧倒的エネルギーを放出していきます。

普通ここまで速いと、メロディというより勢いで押し切るようなスタンスの曲調になりがちですが、そこはさすがソナタ

あくまで「メロディック」スピードメタルバンドなんだという事を感じさせてくれくれる、流麗で猛火のようなハイクラスなソロになっています。

ソナタの曲全般に言える事でしょうが、リズムの速さには熱を感じるのに、旋律はひんやりとしているんですよね。

ひんやりと言っても冷めている、という意味ではなくて、目を瞑って聴くと広大な雪景色が浮かぶようなメロディで、壮大で清涼感がある作曲が彼ら特有の美しい個性。


このヤニはこの数年後、母国フィンランドで国民に義務付けられている懲役制度に参加する為、一時バンドを脱退してしまいます。

おそらく数年後にはソナタに戻ってくる予定だったと思われますが、しかしなんと懲役期限を終える前に、脱走。そして捕まってしまいます。

脱走という、一応は国の規則を犯す行為をしてしまったメンバーをバンドに戻す事はできず、結局ヤニはソナタとは物別れになってしまいました。

今では違うバンドでアルバムをリリースしたり、更に違うバンドにセッション・ギタリストとして参加したり、多様な活動を行っている模様。

いつの日かソナタに戻ってきて、現ギタリストのエリアス・ヴィルヤネンとツインギターバンドとして、更に壮大なプレイを聴かせてくれると良いなぁ、と思います。

惜しい人材を失くしたという事が実感できるプレイです。


激熱のリズムと冷たいメロディのギャップを楽しんでください。



それでは。





クイーン『Killer Queen』

今日はQueen『Killer Queen』について。


アルバム「Sheer Heart Attack」収録。

この曲は、イギリスのロックバンドQueenが1974年に発表したプログレッシブ・ロックです。


とても優美な曲。

ポップロックなのかバラードなのかプログレッシブなのか、あるいはその全てなのか。

全体的にイギリス的上品さを感じられて、ロックバンドが出した音とは思えないほどの癒しのフィーリングが漂っています。


本作の好きなところはコンパクト感。

3分そこそこの短い曲なのですが、軽快なピアノ。合間に入るコーラスが入り混じる、多彩な曲展開。

演奏時間が短いぶん、その中でリスナーがいかに何度も楽しめるかを試行錯誤した上で生み出したような構成です。

出だしの指パッチンの音はまるでシンフォニック・ダンスのようで、今から上質なダンスが始まりそうなムードを漂わせます。

その上質感と、歌詞が高級娼婦をテーマにしたものである事とのギャップも本作の味です。笑

フレディ・マーキュリー(Vo)のしとやかな、ファルセットを多用した歌声をリスナーに魅せた後は、Queen名物、ブライアン・メイ(Gt)のギターソロ。

キャッチーではあるのですが、やっている事はかなりテクニカルで、ふんわりした曲調の中にもブライアンの威厳を感じる事ができるプレイになっています。

「この曲は、完璧なポップソングであり、フレディが書いた偉大な曲の一つに数えられるだろう。そして僕も、あのようなギターソロを弾けたことを光栄に思いっているんだ。」
by ブライアン

自他ともに認める、美しいだけじゃない一種のスケールの大きささえ感じさせてくれるソロです。


ソロに限らず歌メロにも言える事ですが、全体的にメロディが緻密。

普段、音楽を聞き慣れているリスナーでも、少し聴いただけでは把握しきれないくらいに難解な旋律です。

一般的に音楽というものは、覚えやすくて馴染みやすいメロディの方が一般大衆には受け入れられやすいものですが、本作はそれと真逆を行くような内容。

もちろん無駄が無くストレートなメロディで聴かせてくれる作品の良さもありますが、こういう「覚えるのに時間がかかり、だからこそ飽きにくい」曲の凄さもあると思います。

クイーンの曲はこの曲に限らずメロディが複雑な曲は多いのですが、彼らの曲が長く愛されるのは、この良い意味での「覚えにくさ」も理由の1つかもしれません。

クイーンの同じく複雑な曲に「BOHEMIAN RHAPSODY」がありますが、それより演奏時間が短い為、気軽に「抑揚」感を味わえるのもこの曲の美点。

密度の濃さで勝負する作品です。


短時間でドラマ性を楽しめる曲を聴いてみてください。



それでは。