D'espairsRay『Lost Scene』
今日はD'espairsRay『Lost Scene』を聴いた感想を。
アルバム「MIRROR」収録。
この曲は、日本のロックバンドD'espairsRayが2007年に発表したロックチューンです。
ヘヴィさと叙情曲のような切なさが刺さる曲。
Aメロはミドルテンポなので、一見するとロック調にも聴こえますが、サビでは途端にバラードのようなメロディに豹変され、あくまで「歌で聴かせる」タイプの作品なのだという事を伝えてくれます。
HIZUMI(Vo)の声質もL'Arc~en~CielのHYDEやDir en greyの京のような「男らしくも艶がある」系の声なので、歌メロの持つ品が更に高まっている印象です。
メロディアス路線な歌メロに対して、バック演奏の方はかなりハード。
TSUKASA(Ds)のドラム音は、他パートを引き立たせる為か少し抑えめなプレイですが、Karyu(Gt)、ZERO(Ba)の弦楽器隊はかなり攻撃的なサウンドでHR/HM級のバワーを備えています。
日本バンドとしては数少ない、メタルバンドの晴れ舞台である「Wacken Open Air」に招待された事もあるグループなだけあって、音色のキレは折り紙つき。
デスボイスの導入などDir en grey的なエクペリメンタルメタル+ナイトメアのようなメロディアスロック。
そこに更にインダストリアルロック色を織り交ぜたような構造でしょうか。
アメリカ、イギリス的な電子ロックさと、日本ロックバンドらしい美旋律を巧みに融合させた作品です。
綺麗な歌メロに重低音にエレクトリックなアレンジと、作り込まれた楽曲を聴いてみてください。
それでは。
アングラ『Spread Your Fire』
今日はAngra『Spread Your Fire』について。
アルバム「Temple of Shadows」収録。
この曲は、ブラジルのHR/HMバンドAngraが2004年に発表したネオクラシカルメタルです。
「EDENBRIDGE」のサビーネ・エルデスバッカーがレコーディングに参加した事でも話題ななりました。
一般にネオクラに求められるものが全て詰まっている曲。
劇的な展開、美メロ、テクニックが器用に一曲にまとめられています。
特に目立つのは展開。
ゆったりしたオーケストラメインのイントロから一転、スピードメタル調の激速ビートに様変わり。
クラシカルな演奏から一気にメタル調、という流れは日本のネオクラシカルメタルバンドの代表格Xjapanの「紅」、「Silent Jealousy」を連想させます。
現代ではネオクラ系バンドの王道的な流れですが、アングラの場合凄まじいのは使用されている、その高すぎる技術。
特に中間部分での音速オルタネイトピッキングはそんじょそこらのバンドでは聴けないレベルで、その難易度はヤングギターにおいて最高ランク認定の「ライオンマーク」を授与されたほど。
昔の音楽評論誌では、よくミュージシャンを評する時に「ミュージシャンの~は技術はあるが、個性がない」という文言が使用されますが、その技術もここまで突き詰めれば、もはや「オリジナリティ」だと思います。
リズムが全くぶれずに噛み合うツインでのプレイパートも鳥肌もの。
そしてもう1つのアングラらしさとして、キャッチーなサビメロ。
そのメロディアスさは、彼ら自身が生み出したネオクラシカル界の教科書「Carry On」、「Nova Era」 」に勝るとも劣らないもの。
そしてただでさえ美しいのにそこでクワイアが絡まり、大きな「スケール」が加わると、本作の熱量はクライマックスに到達します。
アングラといえば世間では前述の「Carry On」、「Nova Era」ばかりが取り沙汰されがちですが、個人的にはこの曲の凄さにもっと目が向けられても良いと思ったり。
「 完成度 」という規格において間違いなくアングラ最高水準の曲です。
超絶技巧、メロディ、そして情熱が詰まったメタルを聴いてみてください。
それでは。
カーペンターズ『I Need to Be in Love』
今日は Carpenters『I Need to Be in Love』について。
この曲は、アメリカの兄妹ポップスデュオCarpentersが1976年にリリースしたポップバラードです。
邦題は「青春の輝き」。
いしだ壱成、香取慎吾(SMAP)、反町隆史、浜崎あゆみが出演した事でも知られるドラマ「未成年」のEDテーマだった事でも知られています。
ある種の「気のおけなさ」が魅力的な曲。
「朝の4時だというのに目は冴えるばかり」
「一人として友達の姿もなく 希望にすがりついてるだけの私 でも 私は大丈夫よ」
「そうね、私は恋をするべきね そうね、私は時間を無駄にしすぎた」
「そうよ、私は不完全な世界に完璧を求めてる
そして おばかさんなことに それが見つかると思っているの」
実際の世の中でそんな相手が見つけるのは難しいと知りながら、それでもそれを諦めきれない、という想いが表現されています。
ファンの間では、
「カーペンターズのメンバー、リチャード・カーペンター (Pi.Vo)、カレン・カーペンター (Ds.Vo)は、幼い頃から音楽の仕事漬けで、まともに恋愛を楽しんだ事が無かった。それを指して「私は時間を無駄にしすぎた」と語っているのではないか」
という推論がありますが、スターだからこそ一般的な幸せを楽しめない空しさが込められた作品なのかもしれません。
兄のリチャードいわく「生前のカレンの一番のお気に入りの曲だった」との事ですが、それは彼女たちが普段しまいこんでいる胸の内を素直に打ち明けた曲だからでしょうか。
ただ、「普通の恋愛が出来ない」、というのは売れっ子ミュージシャンならではの苦悩なのかもしれませんが、「なかなか出会えない、運命的な良きパートナー(恋人)を求める心」というのは、世間の大多数の人に通じるところがあるメッセージですよね。
一般社会の人達も、若い頃は白馬にのった王子様や大和撫子に憧れながら、大人になったら表向き「そんな相手にはそうそう出会えない」と達観的に振る舞います。
けれど、人知れず心の中では憧れが捨てきれず、どこかで奇跡的な出会いを待ちわびながら過ごしている人が居て、まるでそういう人達の胸の内を代弁したような内容にも読めるんですよね。
本作のヒットの理由は馴染みやすい曲調もあるでしょうが、世の中の多くの人が、内心でひっそりと抱えている理想と共感する部分があるからかもしれません。
メロディも「Top of the World」に通じる、ふんわりとした佇まい。
大げさな起伏もなく、自然体で歌っている感じのするバラードで、個人的には「女性ボーカルのビートルズ」というイメージ。
歌詞が痛切なのにメロディが鷹揚というギャップ感もまたこの曲の聴きどころ。
懐かしいメロディにのる、センチメンタルな身近のある歌詞の曲を聴いてみてください。
それでは。
LiSA『oath sign』
今日はLiSA『oath sign』を聴いた感想を。
この曲は、日本のLiSAが2011年にリリースしたロックチューンです。
小山力也 、大原さやか、川澄綾子が声優として出演している事でも知られるアニメ「Fate/Zero」のOPテーマだった事でも知られています。
ロックな曲調の中に混ざるクラシカルな佇まいが綺麗な曲。
作詞・作曲者はAKB48(片山陽加、小嶋陽菜、篠田麻里子、秋元才加、宮澤佐江、松井玲奈)
に「イイカゲンのススメ」、ClariSに「コネクト」の楽曲提供した事もある渡辺翔。
キュート&クールな曲を作る事が得意な彼ですが、本作にはそれにエレガントさが上乗せされたような世界観です。
ピアノ、コーラスからロック演奏になだれ込む展開など特徴的な要素が多い曲ですが、特に好きなのは中間部から後半の大サビにかけて。
ギターとストリングスがまるで沸騰するような熱量で絡んでいます。
ギターはかなり攻撃的なロック演奏なのですが、ストリングスは前奏と同じメロディをなぞった神秘的な演奏で、圧力と流麗さが見事なコントラストを構築。
激しい曲ですが、あくまでも音階、作り込みの繊細さで訴えてくる作風ではないでしょうか。
LiSA(Vo)のボーカルプレイも詩情あふれる歌声。
hotexpressの棚橋寛から
「拭いきれない不安に向かって突き進む運命を描いた世界観が、力強くも切ないLiSAのボーカルによって描かれている。」
と評価されたように声量豊かでパワーがありながらも、さりげなく愁いを帯びていて深みを感じます。
本作が一種の荘厳さを持つのは、ドラマチックな曲調もあるでしょうが、LiSAの一聴しただけでは聴き漏らしそうなほど微細な感情表現も大きい。
アグレッシブなバンド演奏と、ストリングスとLiSAのデリケートなプレイの融合が味わい深い作品です。
キャッチーで、それでいてどこか上品な曲を聴いてみてください。
それでは。
メガデス『Hangar 18』
今日はMegadeth『Hangar 18』について。
アルバム「Rust In Peace」収録。
この曲は、アメリカのHR/HMバンドMegadethが1990年に発表したメロディックメタルです。
非常に千差万別なギタープレイが楽しめる曲。
メロディックなパートから、スピードプレイが光るパートまで様々なニーズに応えられる構成は、まるでギターの森のよう。
まずリフの時点で特徴的で、メタル曲としては珍しく低音域があまり使用されていません。
シンプルなんだけどキャッチーで流麗な構造は、アイアン・メイデンの影響を感じます。
HR/HMの中にもややパンクの要素も混ざっているところが印象的。
またニック・メンザ(Ds) の変化的なドラムも良い味を出しています。
弦楽器隊の変幻自在ぶりをリードするような落差の激しいリズムが渋い。
彼の刻むビートがこの楽曲の根底を担っている事が伝わってくるプレイです。
そして極めつけは後半。
デイヴ・ムステイン(Vo.Gt) マーティ・フリードマン(Gt) のギターバトル。
お互い相当な速弾きなのですが、メロディが絢爛でそれが代わる代わる交互に繰り出され続ける様は、もはや1つの別世界。
今までの流れは全てこのソロの為にあったのではないか、と聴き手に思わせる程の音の饗宴が本作のトリを飾り、終わりに向かっていく。
音色自体な圧力、メロディの良さもさることながら、ファンから「頭の良いスラッシュメタル」と称されるように整然とした構成が本作の本質ではないでしょうか。
音だけで演劇が出来る事を示したような作品です。
「ギターでここまで多様な世界を表現できるんだ」と思わせてくれる曲を聴いてみてください。
それでは。
シンディ・ローパー『All Through the Night』
今日はCyndi Lauper『All Through the Night』について。
この曲は、アメリカのCyndi Lauperが1984年にリリースしたポップバラードです。
シンディの歌声とキーボードの音の調和が見事な曲。
センチメンタルなボーカルと、バックの眩しい電子音が極上の絡みを演出しています。
えてしてこういうエレクトロな音は、音色や旋律を選び間違えると楽曲の完成度が安っぽいものになりがち。
ですが本作のキーボードは、必要な時は主張しまくりますが、他パートが主役の時は文字どおり鳴りを潜める、緻密な色づかいのもとに成りたっていると思います。
間奏でのファンタジックなキーボード・ソロは、まるで歌詞のカップルの愛を、そのまま音で表したよう。
バラード曲だけあってメインはあくまでシンディ本人の歌声だと思いますが、逆にこれが無くてはこの曲のバランスの重要な部分が抜け落ちた感じがする、とても印象的なソロです。
もちろんシンディのボーカルも至高。
今より若く天真爛漫な歌声が、楽曲に込められた無邪気な愛情をストレートに表現しています。
基本ハイトーンでエネルギッシュなイメージがあるシンディの他の作品と比べるとおとなしい曲調ですが、バック演奏の音がメロディックな本作とはこの位な音程の方がマッチ。
当時の日本の歌謡曲自体が洋楽の影響が濃かったので当たり前かもしれませんが、歌メロが80年代の邦ポップバラードの名曲を連想させてくれる所も良いです。
どちらかが脇役なのではなく、ボーカルもバック演奏(特にキーボード)も両方が主役で、それでいてカラーバランスの取れた稀有な楽曲ではないでしょうか。
メインメロディが2つあるようなバラードを聴いてみてください。
それでは。
中野愛子『カメリアの瞳』
今日は中野愛子『カメリアの瞳』を聴いた感想を。
この曲は、日本のシンガー・ソングライター中野愛子が2011年にリリースしたロックチューンです。
間島淳司、釘宮理恵、高橋美佳子が声優とした出演した事でも知られるアニメ「緋弾のアリア」のEDテーマとしても有名。
重低音が効いたリフとメロウなボーカルメロディの対比が綺麗な曲。
作詞・曲ともに中野愛子本人で、プロデューサーは「機動戦士ガンダムSEED」、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」、「戦国BASARA」の音楽担当も務めた野崎 圭一。
従来の彼プロデュース作らしく、男性的なハードさと女性的なデリケートさが共存した作風になっています。
かっこいいのは、中野愛子の声。
使用されている声域が、現代女性ボーカリストとしては低く、ロック調の曲とスパッとハマったグルーヴを演出しています。
どことなく80年代の女性ロックボーカルを連想させる硬派系な歌声。
更にメロディラインが良い意味でアニメソング的で、ノリの良さの中にも、うっすらと切なさが漂う旋律が蠱惑的です。
個人的には、ドラムがタム回しで「トゥルルル」とタメを作ってから、一気にサビになだれ込むパートは本作最高の聴きどころ。
こういう「A~Bメロまでは静かめで、サビで爆発!」みたいな曲はこのドラムのタメパートがあるのが王道&強力だと思います。
サビでは中野愛子の声の圧力が増しますが、メロディは更に哀愁が強くなるため切なさはそのままに、そこに迫力が上乗せられるという、非常に高次元な配色。
また声の張り方も、強くはなっても過剰には強過ぎず、どことなく祈りを捧げているような凛とした佇まいを感じさせます。
間奏のキーボードソロもインダストリアル・メタル並の高速で、キレキレの鮮やかさを演出。
このへんはおそらく「機動戦士ガンダムSEED」でも聴けた野崎 圭一的な世界観ではないでしょうか。
女性のロック曲としてはかなり攻撃的な美しさを持つ曲です。
ズッシリとしたバック演奏にのる、胸懐の歌メロの曲を聴いてみてください。
それでは。