音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

福山雅治『桜坂』

今日は福山雅治『桜坂』について。


この曲は、日本のシンガー・ソングライター福山雅治が2000年にリリースしたポップバラードです。

第15回日本ゴールドディスク大賞 ソング・オブ・ザ・イヤー受賞曲。
また、歌詞部門で第1回山本健吉文学賞を授与された曲としても知られています。


いわずと知れた超大ヒット曲。

メロディの美しさと、当時人気だったバラエティ番組「ウンナンのホントコ!」内のコーナー「未来日記V」のテーマソングだった事もあり、初動売上枚数は「男性ソロ・アーティストのシングル初動売上枚数」で歴代1位を記録しています。


歌詞は福山雅治自身の体験を元に、別れた恋人への心情を綴ったもの。

「君がいた 恋をしていた」
「君じゃなきゃダメなのに ひとつになれず」

将来を約束した恋人と、久しぶりに再会したら、その女性は既に違う人に想いを寄せていた、という、とても切ない詞。

ですが、決して単なる失恋バラードでは無く

「君よずっと幸せに 風にそっと歌うよ」
「愛は今も 愛のままで」

別れは辛いけれど、その後の彼女は幸せでいてほしい。

もう自分を愛してはくれないであろう人でも、それは変わらない、という純粋な愛のメッセージが綴られています。

心の片隅では苦しみは残っているのでしょうが、それでも「君よずっと幸せに」と祈る。

寂しさを堪えつつも、あえて見返りは求めない、多くの人には持つのが難しいとされる、「無償の愛」の歌です。


福山自身の歌声も、非常に曲とマッチした、語りかけるような囁き声。

歌い出すと聴き手が自然と黙りこんで歌声に聞き入ってしまうような声です。

特別広い声域で歌っているわけでも、複雑なリズムで歌っているわけでも無いのに、声質、微妙な発声の濃淡などで、彼だけの『桜坂』を歌っているイメージ。

よくオリジナリティのあるプレイを指す表現に「コピーはできても、自分のものにする事はできない」という言葉がありますが、この曲での福山の歌声も、聴き手に「他の誰にも真似できない」と思わせる説得力のある声になっていると思います。

曲自体の良さ、福山雅治自身の個性、多くの魅力が詰め込まれた曲です。


ちなみに業界内での評価も高い曲で、

森進一(アルバム『Love Music』収録)

平原綾香(アルバム『From To』収録)

河村隆一(アルバム『evergreen anniversary edition』収録)

など、国内でも20組近いプロアーティストにカバーされています。

福山雅治のそれとはまた違う『桜坂』を描いたアレンジになっているので、興味のある人は是非聴いてみてください。



それでは。





Dir en Grey『DIFFERENT SENSE』

今日はDir en Grey『DIFFERENT SENSE』を聴いた感想を。


この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2011年にリリースしたオルタナティヴ・メタルです。


「誰もが平等の空さえ鎖した」
「光と共に」

ファンの一部の間では「原発批判の歌詞ではないか?」と囁かれている曲。(原発の爆発が「空さえ鎖した光」。)

実際にこの曲のPVをの中では、日本列島の太平洋側から不気味な触手がウネウネと蠢く映像が。

いずれにせよ作詞者の京は明言していない事ですが、鋭利な社会批判は彼の詞のコンセプトの1つ。

聴き手の胸にも鋭く突き刺さるメッセージだと思います。


曲展開はハードコア的なA~Bメロから一気に流麗なサビメロ、というDir en Greyの楽曲の伝統的な流れを組んでますが、今回、その魅力を更に引き立てているのが音質。

くっきりとはしているのですが、あまり大袈裟には歪んではいない、王道HR/HM的なかっこよさがあり、完成度も高い音色。

というのもミックスにチュー・マッドセン、マスタリングにチュー・マッドセンという名手を起用しているんですよね。

海外から優秀な技術者を招いた、という意味では「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」の時のイェンスやテッドもそうですが、彼らが荒々しいコアなサウンドを作ったのに対して、本作の音色はヘヴィながらもよく通る、オーソドックスなサウンドに仕上がっていると思います。

オーソドックスと言うとDir en Greyの音楽性とは真逆に近いと思われるかもしれませんが、彼らの曲は元々が「濃い味」。

味が濃い食材に調味料をかけるなら薄味が基本ですよね。

彼らの独創的な音楽にはこういう音色の方がある意味バランスはとれている、という見方もできます。

Dir en Greyの楽曲には珍しい「均整」を感じさせてくれる楽曲です。


どろりとした美しさを持つ曲を聴いてみてください。



それでは。






パンテラ『Fucking Hostile』

Pantera『Fucking Hostile』について。


アルバム「Vulgar Display of Power (邦題:俗悪)」収録。

この曲は、アメリカのHR/HMバンドPanteraが1992年に発表したヘヴィメタルです。


ダイムバッグ・ダレル(Gt)のギターリフが大活躍する曲。

非常に疾走感がありながらも随所に変化的なフレーズがあり、中間部では正確無比な速弾きが楽しめる、まるでギタープレイのテーマパークのような構成になっています。

多彩なプレイをしているのに、実はコード自体は3種類ぐらいしか使っていない、という「名HR/HMあるある」を踏襲した部分も。

少ないコードの楽曲は、ごまかしが利きにくい分アーティストの創作力を浮き彫りにし、だからこそそういう音楽でリスナーを納得させるアーティストは畏敬の念を集めます。

Panteraが演奏力、作曲力ともに並のHR/HMバンドの追随を許さないバンドだという事が伝わってくる曲です。

ヴィニー・ポール (Ds)が叩くフィルもかっこいい。

疾走パート、変化パートごとに的確に曲にあったフレーズを叩いてくれています。

ギターの変化感を思い切り強調してくれているプレイです。

ボーカルメロディ、特にサビメロがさりげにキャッチーなのも隠し(?)味。

一般にこういうスラッシュ成分が強いHR/HMは、リフには気を使っても歌メロは淡白、というパターンが多いものですが、この曲はボーカルメロディだけでも聴き応えがある内容になっています。

ラストのフィル・アンセルモ (Vo)の「フ○ッキーン!」のシャウトは、激しいを通り越して「渋い」。

ディストーションで、重厚な歪みがかかっているのが粋だと思います。


激流のように荒々しくも、隅々までバランスが計算されているメタルを聴いてみてください。



それでは。





コブクロ『桜』

今日はコブクロ『桜』について。


この曲は日本の音楽デュオ、コブクロが2005年にリリースしたポップバラードです。

第47回日本レコード大賞 金賞、2006年度 JASRAC賞銀賞受賞曲。

また、石原さとみ柳葉敏郎小山慶一郎(NEWS)が出演した事でも知られるドラマ「Ns’あおい」の主題歌としても有名です。


コブクロの原点ともいえる曲。

黒田俊介(Vo)と小渕健太郎(Vo.Gt)が出会い「コブクロ」を結成した後初めて歌った曲で、下積み時代にストリートライブで必ずと言っていいほど演奏された歌。

当時はアコースティックギターのみで演奏された「ストリート」らしい曲でしたが、このCD磐ではストリングスも導入され、繊細な曲調に壮大さが加えられた内容になっています。

特徴的なのは、コブクロの曲としては少し低いキー。

現在のコブクロの音楽はボーカルのキーが高い曲が多く、ファンの中にも「カラオケで歌えない」という人も多いのですが、この曲はA~サビメロにかけて、中音域主体。

品のある「落ち着き」が楽しめる楽曲だと思います。


「桜の花びら散るたびに 届かぬ思いがまた一つ涙と笑顔に消されてく」
「そしてまた大人になった」

初めてこの歌詞を読んだ時は、「届かぬ思い、は何を指しているんだろう」と思いましたが、読み返すとしっくりきた解釈は、別れか失恋。

おそらくは過去の春に、離別か失恋を経験した主人公は、毎年の春に桜を見るとその寂しさを思い出してしまう。

けれどその間、沢山の涙(他の悲しみ)、笑顔(喜び)を体験して、少しずつその寂しさを癒していき、大人になっていく(広い心を手に入れる)、という、登場人物の精神的な成長を描いた作品のようですね。

一般に「桜ソング」というと、前述の通り「別れ」をテーマにした曲が多いと思います。

しかしこのように、それを描いて終わりでは無く、その後主人公がどう生きたか、それを経験してどんな人間になったか、にスポットを当てた曲は珍しいのではないでしょうか。

コブクロの他のアーティストとは違う感性を持っている部分が表れた、彼らの個性を象徴したような作品です。


ちなみにその個性が他アーティストからも評価されたのか、

布施明(アルバム「Ballade」収録)
杏里(アルバム「tears of anri 2」収録)

など複数の歌手にカバーされています。

興味のある人は是非聴いてみてください。




それでは。






Dir en Grey『砂上の唄』

今日はDir en Grey『砂上の唄』を聴いた感想を。


アルバム「VULGAR」収録。

この曲は、日本のロックバンドDir en Greyが2003年に発表したロックチューンです。


聴きやすくも、どろどろした曲。

時期的にメンバー、特にShinya(Ds)のドラムサウンドがかなりヘヴィになってきた期間に発表された曲の為、音自体はHR寄りでしょうか。

面白いのはギターソロの存在。

元々Dir en Greyの楽曲はギターソロがある曲が少なく、活動初期~中期に発表された曲には特に少ないんですが、この曲も中期に発表された曲にも関わらず、珍しく導入されているんですよね。

ピッキングハーモニクスを含んだ音色が幻想的です。

京のハイトーンも、他の曲とは違う意味で凄い。

瞬間的なキーの高さは、後の「Lotus」や「我、闇とて…」には及びませんが、Aメロ~サビに至るまで、終始hiCからそれに近い高さを出していて、平均的なキーは、Dir en Grey全楽曲の中でもかなり高い方です。

デスボイスやスクリームを使用していませんが、それでも京の能力を感じさせてくれる歌声ではないでしょうか。


悲痛なのは歌詞。

「空の涙に射たれた 全ての人達幸せに見えて」
「俺の左側にもう君は居ない 滲む去年の風」

ファンなら周知の事実でしょうが、本作の発表前、京は左耳の聴力を突発性難聴により失ってしまったんですよね。

人は自分が不幸のどん底にいる時は、周囲の普通の人達が、とても恵まれているように見えがち。

その人間の暗いところ、綺麗ではないところを、包み隠さずズバッと言ってしまう、清少納言の「枕草子」のような容赦の無さが彼の詞の味。

どちらかと言うと京の詞は、まず哀しいストーリーを創作し、それになぞらえて綴られていく、というパターンが多いと思うのですが、この詞は実体験から生み出された、文字通り「リアル」な詞だと思います。

臨場感のあるメッセージが、美しいメロディにのせられて聴き手の胸に迫ってくる歌です。


ハードで、それでいて脆い世界観の曲を聴いてみてください。



それでは。















AC/DC『Highway to Hell』

今日はAC/DC『Highway to Hell』について。


アルバム「Highway to Hell(邦題:地獄のハイウェイ)」収録。

この曲は、オーストラリアのHR/HMバンドAC/DCが1979年に発表したハードロックです。


非常に素朴でエネルギッシュなロック。

リズムも8ビートで、複雑な展開でも無い、とてもシンプルな曲調になっています。

「気楽な暮らし、自由な暮らし 片道乗車のシーズンチケット」
「望みは持たず、ありのまま その辺にあるもので事は足りる」

歌詞はおそらく、27歳までホームレスだったボン・スコット(Vo)本人の事を綴ったもの。

「なあサタン、ツケは払ったよ ロックバンドで演奏してる」
「なぁママ、見てくれよ 天国に行く途中なんだ」

路上生活者から、一躍スターになるまでの自身の半生が表現されています。

貧困生活から一気に成功者に、という映画のような人生。

ある意味ボンが真の「ロックスター」である証明のような歌詞ですよね。


この曲で好きなのは、バンド全体でのグループ感。

マルコム・ヤング(Gt)の奏でるリフはかっちりしてるのに、どこか気だるげなボン・スコットの歌い方か絶妙なミスマッチ。

まるで硬派な職人と自由な風来坊が共演しているかのよう。

アンガス・ヤング (Gt)ギターソロも70年代ロックの古き良きところが前面に出ていてとても渋いです。

そしてサビに入ると、太くパワフルなコーラスが。

コーラスで歌メロのエネルギー量を増幅する、というのは手法としてはありふれたものですが、この曲ではその降り幅が半端じゃない。

聴き手に「一緒に歌おう」と語りかけてくるような熱量を感じます。

ある意味ではロックでやる讚美歌のよう。

本人達も熱いし、その熱を周囲に伝達してくれる「頼もしさ」のような魅力がある曲です。

曲自体のパワーもあるのはもちろんの事、それを超波乱万丈な人生を歩んだボンが歌う事によって更に説得力を増しているのかもしれませんね。


ロック表現の原点のような曲を聴いてみてください。



それでは。





荒井由実『卒業写真』

今日は荒井由実『卒業写真』について。


アルバム「COBALT HOUR」収録。


この曲は、日本のシンガー・ソングライター荒井由実が1975年に発表したポップバラードです。

日本のノスタルジー系バラードの代表曲。

特に大袈裟な展開や高いキーで歌う事も無く、冷静でフラットな曲調なのに、不思議とメロディから豊富な感情量を感じさせてくれる内容になっています。

ユーミンの、遠くに向かって語りかけるような歌い方が感慨深い。

「人ごみに流されて 変わってゆく私を」
「あなたはときどき 遠くでしかって」
「あなたは私の青春そのもの」

世間では「過去の別れた恋人に向けられた詞」と受け取られがちですが、実際はユーミンが高校時代に通っていた美術教室の女性教師の事を綴ったものであるとのこと。

とても厳しい先生で、当初はユーミン側からすればあまり好きになれなかった先生だったそうです。

しかし当時ユーミンが抱いていた「東京芸大に入学」の夢を真剣に応援してくれた先生で、ユーミンが受験に落ちてしまった時も一切責めずに「また受ければ良いじゃない。一緒に頑張りましょう。」と優しく励ましてくれ、いつしかユーミンが彼女に抱く感情は敬愛に変わっていったそう。

ただ、その後ユーミンは親から猛反対にあってしまい、結局芸大を受ける事は出来なかったようです。

その後、道を歩いていたら偶然遠巻きにその先生を見かけ、一瞬声をかけようとは思ったようですが、すでに違う大学に通い、しかも美術とは関係の無い音楽にハマりはじめていたユーミンは、後ろめたさを感じ、先生に話しかける事はできなかったとのこと。

その時の心情を表現した詞がこの作品のようですね。

一見すると切ない詞ですが、高校時代にその先生からかけてもらった厳しくも優しい言葉は、本人いわく今でも作曲の際の創作意欲に結び付いているそう。

「遠くでしかって」というのはおそらく、心の中でその先生が未だに自分を励まし続けてくれる姿をイメージし、自分自身を鼓舞するということ。

芸大は諦めても、ユーミンの中でその先生と過ごした時間はいつまでも生き続けている。
そんな想いが伝わってくる歌でもあるのかもしれませんね。

若い時に自分の目標を応援してくれた恩師、先輩がいる人には響くものがある曲ではないでしょうか。


追慕と感謝の気持ちが込められた曲を聴いてみてください。



それでは。