音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

エアロスミス『Dream On』

今日はAerosmith『Dream On』について。


アルバム「Aerosmith(邦題.野獣生誕)」収録。

この曲は、アメリカのロックバンドAerosmithが1973年に発表したロックバラードです。

作詞、作曲ともにスティーヴン・タイラー(Vo)。

タイトルの意味は「夢を見続けてくれ」。

「人生の半分は筋書きが決まってる でも残りは愚者からも賢者からも自ら学ぶんだ」

「俺と歌ってくれ、今日限りでもいい」
「だって明日になれば大いなる主に召されるかも知れないんだ」

苦しみながらも進み続ける事の意味が表現されています。

この曲が発表されたのは彼らの記念すべきメジャー1stアルバムですから、つまりこの曲が生み出されたのはまだデビュー前。

花開く前の彼らも、辛い時はこうして自分で自分に
「夢を見続けてくれ」
と言い聞かせて前に進んできたんでしょうね。


音楽的にはシンプルでありながらもクラシカル。

レッド・ツェッペリンの「天国への階段」が好きな人ならきっとハマると思います。

全体的にジョー・ペリー(Gt)とブラッド・ウィットフォード(Gt)のアルペジオ、バッキングが非常に良い仕事をしてくれています。

入りの時点ではまるで葬式のBGMのような、ダークでとぼとぼ歩くようなギターが奏でられます。

しかし曲が進むにつれてどんどんと音圧が増していき、後半ではタイラーの警報のような超高音での連続シャウトが。

良い意味でまるで人の声じゃないみたいです。

当時のタイラーは現在のシャウトがかった歌唱とは違っていて、HR/HM界隈のボーカルとしては歌い方かソフト。

今とは質の違う味があるのではないでしょうか。

タイラーが凄いのはこのキーでの連続シャウトを、50歳過ぎても変わらずにキープしていた事。

むしろ日によっては声量を増す事すらあったんですよね。

派手なステージ衣装、破天荒なプライベートで知られる彼ですが、裏ではストイックな調整をいるんでしょうね。


ちなみにAerosmithのトリビュートアルバムには、あのロニー・ジェイムズ・ディオイングヴェイ・マルムスティーンのゴールデンタッグがこの曲をカバーしていますが、そちらもオススメです。



それでは。






AI『Story』

今日はAI『Story』について。


この曲は、日本の女性歌手AIが2005年にリリースしたポップバラードです。

本作の英語verはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品、映画「ベイマックス」のEDテーマとしても有名です。


とてもしっとりとしたバラード曲。

一見すればオーソドックスなJ-POPですが、実はAIは、この曲のリリース以前は、どちらかというとHipHopが主体のファンキーなミュージシャン。

ある意味この曲の発表は、冒険だったわけですね。

しかしその目論みは当たり、各種メディアに取り沙汰される程の大ヒット。

日本レコード協会から「着うた部門」で3ミリオンまで授与される事になります。


曲が良いだけじゃなく彼女自身も非常に歌唱力のある歌手ですが、特に低音域が美しい。

女性歌手でありながら、高音だけじゃなく低い声まで使いこなす様は、日本屈指の実力派シンガーMISIA小柳ゆきを彷彿とさせます。

その歌唱力、表現力は数々の女性曲をカバーしたあの徳永英明から
「(Storyに)挑戦したが、この曲を歌いこなせなかった」、「メッセージ性の強いこの曲を完璧に歌いこなせるのはAIだけである」
と評される程。

AIが、名実揃った重厚なシンガーであることを感じさせるエピソードです。


力強い歌声とは裏腹に、歌詞の世界観はセンチメンタル。

「今 私が笑えるのは 一緒に泣いてくれた君がいたから」

「孤独じゃ重い扉も 共に立ち上がればまた動き始める」

AI本人いわく
「今日という日、この瞬間を大事にしないと、いつでも話ができると思ってもできなくなるかもしれない。」
という想いを綴った詞。

“君”が自分を励ましたわけでも慰めたわけでもなく「一緒に泣いてくれた」というのが温かいですよね。

精神的に遠い距離から応援するのではなく、ただ隣りで同じ気持ちになって寄り添ってくれる。

「そんな人と一緒にいられる、この時を大切にしよう」という想いが込められた歌声は、聴き手を登場人物と同じ温かさで包み込んでくれます。

AI自身の技術、曲に内包される愛の両方があって成り立つ曲ではないでしょうか。


過去や未来では無く「今」の大切さを唄ったバラードを聴いてみてください。



それでは。





サスケ『青いベンチ』

今日はサスケ『青いベンチ』を聴いた感想を。


この曲は、日本の男性デュオサスケが2004年にリリースしたポップバラードです。


ピュアでありながら、少し黄昏の香りが漂う曲。

2011年に手越祐也、増田貴久によるボーカルデュオ「テゴマス」よってカバーされたことでも話題になりました。

サスケはこの曲で成功する以前は、往来で弾き語り活動をするいわゆる「ストリートミュージシャン」。

当時の日本はHip Hopが本格的に台頭してきていた時期で、その手の路上ミュージシャンは隅に追いやられていたような時代です。

しかし彼らはそんな空気をものともせず、路上から本作によってどんどんと人気、知名度を獲得し、2005年にはインディーズ年間ランキング1位にまで登りつめました。

パッと出してパッと売れた曲では無く、いわゆる「叩き上げ」的なエピソードを持つ楽曲です。


曲調はアコースティックギター主体のポップス。

割りとアップテンポで軽やかなリズムですが、明るくは無いのが特徴的。

「青春」の楽しい部分では無く、あえてほろ苦い部分を表現したようなメロディです。

ふんわり響く北清水雄太のハーモニカが優しく切ない。


歌詞は、後悔が綴られたもの。

「この声が枯れるくらいに 君に好きと言えばよかった」

額縁通りに読めば恋愛の詞。

しかし実際は、「どうして自分はやって後悔するのでは無く、やらずに後悔してしまうのだろう」と悩みを持つ人全員に響く詞だと思います。

究極的には恋をしていない人が聴いても良い、というか。

多くの人はやりたい事があっても、不安や恐怖に阻まれて悶々とした日々を過ごしていて、「どうせ苦しいなら、思い切って踏み出せば良かった」と感じながら過ごしているんですよね。

サスケのファンが『青いベンチ』の詞を評価する理由は、この曲を聴くと、数多くの人が持つ普遍的な悩みを自分の代わりに代弁してくれた気持ちになれるからかも知れません。


「ハッピーエンド」では無いのに人の心を癒してくれる歌を聴いてみてください。



それでは。






ミスター・ビッグ『Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)』

今日はMr.Big『Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)』について。


アルバム「Lean Into lt」収録。

この曲は、アメリカのHR/HMバンドMr.Bigが1991年に発表したハードロックです。


「君が探しているものすべて 君が望むもの いやもっとそれ以上のものを与えてあげるよ」

「例えるなら 君の親父や兄弟、恋人、小さな子供 どんな存在にだって朝飯前でなれるってことさ」

堂々としたラブソングの歌詞。

一般的に日本のラブソングは、もうちょっと草食系というか、「偲ぶ恋」のような愛の詞も多いイメージ。

ですが、こういう自信に満ち溢れた愛の詞を嫌味なく書けるのは、良い意味でアメリカのロックバンドらしさですよね。


曲は、Mr.Bigとしては珍しい疾走曲。

基本的にはミディアムテンポの曲が多い彼らの楽曲の中では、ある意味異彩を放っています。

しかしメロディ自体は爽快感のカタマリというか、非常に陽気なもの。

世間一般の「ヘヴィメタルはダークで激しい曲で、ハードロックは陽気で激しい曲。」のイメージを(実際にそう決まっているわけではありませんが)地でいくような旋律です。

この部分もまた「アメリカらしさ」ですよね。

とはいえ楽曲自体がノリまかせという意味では決してありません。

曲に使用されているテクニック、工夫は「さすが世界的HR/HMバンド」と呼ぶべきもの。

ポール・ギルバート(Gt)の、イントロ部分の「電動ドリルの先端に、ギターピックを取り付けての高速プレイ」はあまりにも有名。

当時のギター・キッズの間で大変話題になりました。

ちなみにポールいわく
「ドリルは、マキタの充電式電気ドリルじゃないとだめなんだ。」
とのこと。笑

日本の技術がこんな所でも役立っているんですね。笑

個人的に最大の見せ場は、ギターソロ前のポールとビリー・シーン(Ba)の高速のユニゾン

「指が何本あるんだろう」と思ってしまう程の超絶技巧です。

ファンから「ギターソロでもあり、ベースソロでもある」と呼ばれる名場面ですが、初めて聴くアマチュアギタリスト&ベーシストの人は驚くのではないでしょうか。

もちろんポールのギターソロも凄い。

嵐のようなオルタネイト・ピッキングの音が、聴き手を音の渦に呑み込んでしまいます。

フレーズを聴くと、日本の名メタルバンドLOUDNESS高崎晃からの影響が色濃く伝わってきます。

ポールの高崎晃への畏敬の念が感じられるソロです。

これもまた「日本の技術」ですよね。


軽快で重厚なハードロックを聴いてみてください。



それでは。





アンジェラ・アキ『手紙~拝見 十五の君へ~』

今日はアンジェラ・アキ『手紙~拝見 十五の君へ~』について。


この曲は日本のシンガー・ソングライターアンジェラ・アキが2008年にリリースしたポップバラードです。

日本郵政グループのCMソングとしても知られています。

元々はアンジェラ・アキが、NHKの全国学校音楽コンクールの合唱課題曲として書き下ろした曲。

それを自身が歌う為に新たなアレンジを加えたものが本作とのこと。

楽曲自体はピアノ主体のバラード曲で、あまり大げさな音はなく、素朴な演奏です。

その分アンジェラ自身の滑らかな歌唱が際立ち、歌声の抑揚をはっきりと聴きとる事ができます。

中音域から高音域まで、とてもスムーズな発声。

上品でありながら、グンッと迫ってくる力強さがあるところが、彼女の歌声の持ち味ではないでしょうか。


歌詞は「自分自身が15歳の時に自分宛に書いた手紙が、30歳の誕生日に母親から届いたこと」をきっかけに作られたもの。

「十五の僕には誰にも話せない 悩みの種があるのです」

序盤では学生時代の目線で、ひとりで抱えている胸の内の苦しみを正直に綴られています。

そして後半に進むと

「いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど
笑顔を見せて 今を生きていこう」

「今を生きていこう」

と大人になった後の自分の目線で、在りし日の自分の悩みにアドバイスを送っています。

ここでのポイントは、思春期の自分が、何に悩んでいるのか具体的には描かれていないこと。

ただひたすらに「負けそう」という、折れかかった心で葛藤している様子が表現されています。

一見すると抽象的で、読み手がイメージしづらいかもしれない詞。

しかし抽象的だからこそ、読み手によって様々な受け取り方ができ、それぞれが自分の状況に照らし合わせた読み方ができる詞、という事が言えるのではないでしょうか。

世代も暮らす場所も問わず、沢山の人の心に届くメッセージソングだと思います。


ちなみにスコット・マーフィーが2010年にアルバム『Guilty Pleasures 4』にて、

May J.が、2014年にアルバム『Heartful Song Covers』にてカバーしているので、そちらもオススメです。



それでは。





K『Over…』

今日はK『Over…』を聴いた感想を。

この曲は、韓国出身のシンガー・ソングライターKが2005年にリリースしたポップバラードです。

山田孝之石原さとみ市川由衣が出演したことでも知られるドラマ「H2~君といた日々」の主題歌としても有名。

ちなみにK自身は、約4年前にタレントの関根麻里と結婚した事でも話題になりましたよね。


世界観は、儚げで未練を感じさせるもの。

「“変わること”を恐れながら 変わってゆく僕ら」

「君をいつでも想ってる 誰かのものでも…ずっと」

「変わらない「両思い」を信じたいけれど、時が経ち環境が変われば、人の心は変わりがちなものだよね」という、諦めに近い心境が綴られています。

作詞者はw-inds.の「Because of you」 、玉置成実「Reason」(アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第1期EDテーマ)の詞を担当した事でも知られるshungo。

「終わらない愛」という今も昔も多くの人が憧れて、それでいてそれを手にできずに終わっていく、その哀しみを美しい言葉で表現しています。


曲は、類いまれな透明感を感じさせるもの。

ボーカルのK自身、透き通るような声質である事と、元々教会の歌い手であった事をふまえて「天使の歌声」と称される歌手ですが、その声が遺憾なく発揮されたバラード曲になっています。

曲調としては、邦楽で古くから親しまれてきた、いわゆる「泣き」コードを駆使したポップス。

曲の要所でハイトーンを盛り込む事で、豊かな感情表現を生み出す事に成功しています。

海外生まれの歌手ながら、日本的な歌をここまで歌いこなすのは凄いと思います。

韓流歌手というと、どうしても「韓流のブランドアイネームで売れた歌手」と思われがちですが、Kの場合は「たとえ日本生まれの歌手だとしても売れた」と、聴き手に思わせるだけの実力を持っているのではないでしょうか。


無力感が漂うようで魅力のある内容の曲を聴いてみてください。



それでは。






アングラ『Carry On』

今日はAngra『Carry On』について。


アルバム「Angels Cry」収録。

この曲、ブラジルのヘヴィメタルバンドAngraが1993年に発表したパワーメタルです。

タイトルの意味は「進め」。

「過ちに満ちているこの世界は 「ずっと今のおまえのままでいろ」と語る」

「歩みを進めろ」

「そこに辿り着くために おまえ自身の誇り以外は何も必要ない」

人生観を問うような、メッセージ性の強い歌詞。

スケールの大きな楽曲によく合っていると思います。


曲調的には、ラテンの明るさを持ったパワーメタル。

また、全体的に並のパワーメタル曲よりもシンフォニックの要素が強かったりと、彼らの個性が前面に押し出された曲でもあります。

そもそもこの手の曲で、イントロでベースのソロパートがあるという事自体が珍しいケースではないでしょうか。

本作では、イントロ以外でもベースが大活躍。

ルイス・マリウッティ(Ba)のスラップが非常に鋭く冴え渡っています。


またキコ・ルーレイロ(Gt)とラファエル・ビッテンコート(Gt)のプレイには驚嘆。

テクニカル&メロディアスの教科書のような演奏です。

本作のリリース後、明らかに彼らのフォロワーとみられるメタルギタリストが続出した事からも、この2人のプレイの衝撃度が伝わってきます。

とどめはアンドレ・マトス(Vo)の歌声。

この曲の壮大さは、そのクラシカルな曲調もそうでしょうが、彼の高音域でのボーカルプレイも重要な要素ではないでしょうか。

元々平均的にキーが高い曲ですが、ラストの転調部分ではさらに勢いを増します。

そしてそのペースのまま超ハイトーンを連発。

ミドルからヘッドボイスまで駆使。

ここまでいくと聴き手に「非日常感」さえ感じさせてくれます。


ファンの間では、「Nova Era」と対をなすAngraの代表曲と呼ばれている曲ですが、その呼び名に相応しい曲ではないでしょうか。


ハイクオリティな演奏にのる潤いのメロディを感じてみてください。



それでは。