音の日

好きな音楽、その他趣味のこと

GLAY『Missing You』

今日はGLAY『Missing You』を聴いた感想を。


この曲は、日本のロックバンドGLAYが2000年にリリースしたロックバラードです。

日本レコード協会からダブルプラチナを授与されています。

作詞・作曲共にTAKURO(Gt)。


ストリングスの動きが際立ったバラードナンバー。

メロディがとてもシビアで激しいです。

TERUの歌いか方も、まるで苦しみ足掻くような声の出し方で、聴き手の胸に悲痛に迫ってきます。

旋律自体もなんというか独創的で、GLAYの曲の中だけじゃなく他のどのバンド、あるいは作曲家の曲でも似たようなメロディを聴いた事がありません。

GLAYの全楽曲の中でも特殊な位置にある楽曲だと思います。


歌詞のテーマは人間が誰しも持つ“業”とのこと。

「世間はいつも したたかだから 正直者が馬鹿を見る」
「気のあるふりの女 嘘つきな男 怖がりな老いた犬のようだ」

基本的にTAKUROが書く歌詞はハートフルで暖か愛を綴ったものが多い印象。

だからこそ初めて読んだときは「こんな鋭い風刺の詞も書くんだ」と思いました。

「どこまでも白い雪のような あなたに降る夢の礫」

と雪を比喩に持ってきているのでウィンターソングと言っていいと思いますが、「Winter again」とは真逆に近い世界観ではないでしょうか。


歌詞もサウンドもダークな、他のGLAYとは別種の魅力があるバラードを聴いてみてください。



それでは。





メタリカ『Master of Puppets』

今日はMetallica『Master of Puppets』について。


アルバム「Master of Puppets(邦題:メタル・マスター)」収録。

この曲はアメリカのHR/HMバンドMetallicaが1986年に発表したスラッシュメタルです。


HR/HM界のアンセム

Batteryと並ぶMetallicaの代表曲としても有名な曲です。

普段ヘヴィメタルを聴かない人でももし聴けば「専門的なことはわからないけど、なんか凄いぞ」と思うのではないでしょうか。

「俺こそがお前の自滅を導くものだ」
「血管の中を恐怖が駆け巡り」
「真っ黒な闇を体へと吸い上げる」

内容的には「薬物依存の恐怖」が描かれており、「Master(支配者)」である薬物が「Puppets(操り人形)」である薬物使用者を操る、という意味で『Master of Puppets』と名付けられたようです。


曲展開がこれでもか、と言うほど抑揚が激しくもはや映画的。

リフが複雑な上にリズムが変拍子な為、聴き手を翻弄するような構成になっています。

ヘヴィメタルバンドというと世間では凶暴なイメージを持たれがちですが、高い思考力が無いとこういう曲は作れ無いと思います。

これらを全てダウンピッキングだけで演奏している、というのが驚き。

しかしただ複雑なだけではありません。

中盤に入るとバラード曲のように叙情的で情緒豊かなギターソロを聴くことができます。

目を閉じて聴くと、薬物を使用して人生がめちゃくちゃになった人が思い悩む姿が目に浮かんできます。

激しいだけでなくこういうデリケートなメロディセンスを持っているところが、Metallicaが並のメタルバンドと一線を隠すところですよね。

影響力、という観点においてHR/HM界の最高峰の楽曲です。


アグレッシヴながら理知的な曲を聴いてみてください。




それでは。





B'z『いつかのメリークリスマス』

今日はB'z『いつかのメリークリスマス』について。


この曲は、日本の音楽ユニットB'zが1992年にリリースしたポップバラードです。


山下達郎の「クリスマス・イブ」と対をなす日本のクリスマスソングの代表曲。

第一興商調べによれば「クリスマスソングの歴代カラオケリクエスト数ランキング」(調査期間:1994年1月〜2012年12月15日)において1位を獲得しています。


基本的にはロックバラードが多いB'zのメジャー曲の中でも、やや珍しいアコースティックギター主体のバラード。

中盤では松本孝弘(Gt)の叙情的なアコギのソロを聴くことができます。

稲葉浩志(Vo)の歌声もハイトーンシャウトは抑えられ、中音域メイン。

彼がロック歌唱以外でも豊かな感情表現がこなせることが伝わってくる歌声です。

あのGacktは自伝「自白」にて、「感銘を受けた曲」としてこの曲の名前を出しています。


ただ、各種のイベントで流れている曲ですが決して明るい曲では無く、むしろ寂しげな曲。

おそらく

「いつまでも 手をつないで いられるような気がしていた」

の部分だけが強調されて流されているので「恋人との終わらない愛の歌」というイメージがあるのかもしれませんが、ラストで

「立ち止まってる僕のそばを 誰かが足早に」
「通り過ぎる 荷物を抱え 幸せそうな顔で」

と、恋人と別れて途方に暮れる主人公の描写が。

実は「過去、幸せだった頃の恋愛模様」を描いた歌なんですよね。

なのでこの曲をおめでたい席で流すには注意が必要です。笑

バックでは暖かいメロディが流れているのに稲葉浩志が悲しげな声で歌っている事が、「周囲が賑やかなクリスマスの日に、一人立ち尽くす男」を表現している気がして切ないですよね。

普通クリスマスソングというと、パーティーソングのようなハイテンションな楽曲を作るアーティストが多い印象ですが、その中であえてこういう悲劇的な曲を作曲するところに、B'zのこだわりを感じます。


20年以上に愛され続けるクリスマスソングを聴いてみてください。



それでは。





石川智晶『アンインストール』

今日は石川智晶『アンインストール』を聴いた感想を。


この曲は、日本の女性シンガー・ソングライター石川智晶が2007年にリリースしたポップロックです。

声優の阪口大助保志総一朗杉田智和が出演したことでも知られるネットアニメ「ぼくらの」OPテーマとしても有名です。


「ぼくらの」のために書き下ろされた楽曲。

タイトルの「アンインストール」とは、基本的には「(ソフトウェアなどのプログラミングシステムを)削除する」という意味。

ですが、この場合は作中に登場するパイロット達が次々と命を失っていく様子を比喩表現したものだそうです。


とても鋭い曲。

出だしの石川智晶の合唱のようなフェイクから、すで「この曲がどういう曲か」が表現されています。

歌パートに入っても歌い方が機械的なまでに無機質で、そのことで意図的に楽曲の悲愴感を引き立たせているいるような印象です。

サビ前にかなり大きなキメが入るところがポイント。


個人的には石川智晶は作曲家としても好きですが、それ以上に作詞家として好き。

「この星の無数の塵のひとつだと 今の僕には理解できない」

世間では、目の前で悩んでいる人がいると「世の中にはもっと苦しんでる人がいるんだから」と、比較で励まそうとする人もいます。

けれど多くの人は本気で悩んでる時に、会ったこともない他人の苦しみをイメージする、というのは難しかったりするもの。

そのリアルをズバッと突きつけるような詞です。

その上で、

「恐れを知らない戦士のように 振る舞うしかない」

という結論を下す。

形だけでも前を向いて進むしかない、という後ろ向きなボジティブさを見事に表現していると思います。

アニメの展開に的確に沿って流れる歌詞は、原作者の鬼頭莫宏のお気に入りでもあるもよう。

ちなみに石川智晶自身はこの歌詞を、公式ブログ上で

「子供は親を選べない。生まれた時から親の見るもの、聞いたもの、クセ、信じてるものをこちらは選択の余地もなく、一方的に「インストール」される訳で。

成長するにつれ、あれ?違うじゃん!って思うことが出てきたとしても、長い間クセつけられたものは、すぐには変えられない。

それから抜け出す。取り出す。

だから「アンインストール」ってことで」

と語っています。

本人にとっても特別な曲なのか

「自分が心底、こういう曲作りたかったんだよと、思えた曲でした。」

とまで綴っていました。


この曲のファンの中には「アニメはまだ見てないけど、この曲は好き」というコメントが寄せられていて、自他共に認める魅力を持つ歌です。


悲しい決心が込められた曲を聴いてみてください。



それでは。





クイーンズライク『Speak』

今日はQueensryche『Speak』について。


アルバム「Operation:Mindcrime」収録。

この曲は、アメリカのプログレッシブメタルバンドQeensrycheが1988年に発表したヘヴィメタルです。

非常に濃度の高い曲。

テンポはそう速くはないですが、そのぶん音の動かし方に小回りが効いている印象です。

スコット・ロッケンフィールド(Dr)のハイハットの使い方が良い。

アクティブで、ハイハットがメロディを奏でています。

こういうトリッキーな曲の支え方はプログレの流れを組むバンドの強みですよね。


しかしただテクニカルなわけではありません。

ギターソロは、覚えてしまえば口ずさめる程シンプルなもの。

もちろんテクニック的に低次なわけでは無く、「必要なぶん必要なだけ音を詰め込んだ」というイメージのプレイです。

比較的動き回っているリフと好対称を成していると思います。


そしてサビがドラマティック。

さっきまでハイトーン気味に歌っていたジェフ・テイトのキーが、ガクッと急降下します。

決め所であるサビであえて叫ばず、むしろ「語る」表現を選ぶところに渋みを感じます。

低いキーでも感情が伝わってくるところがジェフの感情表現力を強調してくれているのではないでしょうか。

展開的にも、ヴァースから前触れ無くいきなりこの歌メロに突入するという演出がニクい。

ロングトーン部分もあってジェフの歌唱技術が楽しめる要素も。

メタル曲としては演奏時間が短いですが、それを感じさせない起伏のある楽曲です。


流しながら聴くよりは、ジッと集中しながら聴いた方が楽しめる曲だと思います。



それでは。





渡辺美里『My Revolution』

今日は渡辺美里My Revolution』について。


この曲は、日本政府歌手渡辺美里が1986年にリリースしたポップバラードです。

石野陽子藤原理恵が出演したことでも知られるドラマ「セーラー服通り」の主題歌としても有名。


作曲者は小室哲哉
作詞者は、中山美穂などと共演したことでも知られる川村真澄

と、当時まだ歌手としてはマイナーだった渡辺美里の共演者としては豪華な顔ぶれ。


一見キュートなようで、とてもクールな曲です。

リズムがとても力強い。

ですがサウンドは透き通っていてそれが曲の登場人物の、女性らしくも誇り高い人間像を表しているようです。

特にユニークなのはこの転調。

1曲の途中で三度も上がるという、当時の日本のポップスには珍しいもの。

むしろこの曲から「曲の途中からキーが大幅な上がる」流れがメジャーになったのではないでしょうか。

この曲を初めて聴いた時の事を振り替えって渡辺美里は「体中に電気が走るほど『凄い!』と思った」と回想しています。


この曲で好きなのは詞。

「きっと本当の悲しみなんて」
「自分ひとりで癒すものさ」

一般的な邦ポップスの女性アーティストが歌う歌詞は「心の痛みを誰かに癒してほしい、癒してあげたい」のような歌詞が多いと思います。

もちろんそういう詞も情味があって温かくて良いのですが、こういう「自分の意思ひとつで前に進む」、な独立心が強い歌を歌うかっこいい系の女性アーティストがいても良いのではないでしょうか。

元々作詞者の川村真澄が、初めて渡辺美里と会って話した時の彼女に

「夜の街の中でひとりで走り抜けていくような、少し寂しさを背負った感じがした」

という印象を抱き、そのイメージで作詞したとのこと。

その熱さと憂いが混じるメッセージ性と、渡辺美里自身のクリアボイスが融け合ったときの化学反応が、この曲のスケールの大きさの根底にあるものなのかもしれませんね。


ちなみにこの曲が販売される当時、販売促進の一環として「買ってジャケットを番組に送ってくれたら全てサインをして送り返す」という企画が開催されました。

しかしこの曲が思わぬ大ヒットとなったため、想定を遥かに越えた応募が殺到してしまったというエピソードが。笑

結局全員分サインできたのでしょうか。笑


「自分ひとり」で頑張っている人に聴いてほしい曲です。



それでは。





Dir en Grey『艷かしき安息、躊躇いに微笑み』

今日はDir en Grey『艷かしき安息、躊躇いに微笑み』を聴いた感想を。


アルバム「THE MARROW OF A BONE」収録。

この曲は日本のロックバンドDir en Greyが2007年に発表したロックバラードです。


イントロからアウトロまで、終始ネガティブな曲。

何かを呟くようなギターは美しくも、どこか不安感を煽るような音色です。

一見アコースティックギターのようなサウンドですが、実はエレキギター

「ギターマガジン」でのインタビューにおいて

「クリーンでアンプを鳴らした音と、右手にマイクを近づけてピッキングした生音を拾ったものに、ディレィをかけた音を混ぜて作った音」

とメンバー自身からコメントが。

常に新しいものへの挑戦を続ける、彼らの音楽へのプライドを感じることができます。


詞の面でもメロディ面のでも、とにかく展開が壮絶な曲です。

イントロからずっと神秘的ながら哀愁のある旋律が流れ続け、そのまま終わった…と思いきや、一瞬の間を空け

「もう誰も…全て消えろ」

と凄まじいシャウト。

京(Vo)の「慟哭」とも言える歌声が大音量で迫ってきます。

以前インタビューで「余裕の無い人間の叫びこそリアル」と答えていた彼ですが、それをストレートに体現したような声。

そして叫んでいるのに、それがむしろ登場人物の無力感を思いきり引き立てているのが見事だと思います。

「自分は歌い手では無く表現者」という京の音楽的思想がダイレクトに伝わってくる曲ではないでしょうか。


失望感と寂しさが入り交じる歌を聴いてみてください。



それでは。